だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

純喫茶『一服堂』の四季/東川篤哉

◆読んだ本◆
・書名:純喫茶『一服堂』の四季
・著者:東川篤哉
・定価:1,450円
・出版社:講談社
・発行日:2014/10/8

◆おすすめ度◆
・ユーモアミステリー小説度:★★
・びっくり仰天のうっちゃり度:★★★★
・「珈琲店タレーランの事件簿」のパロディ度:★★★

◆感想◆
純喫茶『一服堂』の店主・ヨリ子は、超恥ずかしがり屋の人見知り。所見の客にはまともな挨拶もできない彼女が、何故か事件を解決する能力は名探偵そこのけで…

安楽椅子探偵もののユーモア連作ミステリー小説。
「珈琲店タレーランの事件簿」のパロディなんだけれど、「珈琲店タレーランの事件簿」を読んでいないのにおおよそ内容が分かっちゃうからびっくり。

ユーモアもミステリーも、たくさんある著者のシリーズ物と似た雰囲気で、やや物足りない感じ、なんて思って読んでいたらラストの「バラバラ死体と密室の冬」はびっくり仰天のうっちゃりを決められた感じ。
表紙のかわいらしいヨリ子さんのイメージとはほど遠い密室の解決は、「ええい、これでどうだ。文句があるなら自分でユーモアミステリー書いてみろ」的な破れかぶれ?ぶり。

文句ありません。

っていうか、もっと破天荒な解決のユーモアミステリが読んでみたいです、はい。

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フォルトゥナの瞳/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:フォルトゥナの瞳
・著者:百田尚樹
・定価:1,600円
・出版社:新潮社
・発行日:2014/9/25

◆おすすめ度◆
・不思議な能力を持った男の半生度:★★★★
・究極の選択度:★★★
・どうなる!どうなる?度:★★★★
・こうなる?そうなるの↓度:★★

◆感想◆
電車に乗っていた慎一郎は、ふと目にしたサラリーマンの手が透けているように見えた。目の錯覚かと思ったが…

不幸な生い立ちで友人もおらず、趣味もなければ彼女もいない。そんないつもうつむいて歩いているような主人公の慎一郎だったが、あるとき自分に不思議な能力が備わっていることに気づいてから、人生が大きく変化する。
その能力をどう使うべきなのか、あるいは使わないほうがよいのか。
あまりに人に与える影響力が大きく、次第にその力を持て余し、さらにそれに振り回されるようになるが…

読みやすさは抜群の本書。
読み始めは「どうなる!どうなる?」という先を知りたい気持ちでぐんぐん読み進むが、次第に「こうなる?そうなっちゃうの」というミステリーファンならずとも結末が予想される展開に。

ウブな恋愛模様はそれなりにドキドキするけれど、思いもよらないびっくりなラストでドキッとしたかったと思うのは贅沢?

「カルネアデスの舟板」とか「トロッコ問題」とか「冷たい方程式」とか、究極の選択を迫られるケースが物語のテーマになるこもしばしば。
結局は自分に身近な人を助けるということになるんだろうなあ。
でもそうしないところにドラマが生まれるんだろうなあ。

鹿の王/上橋菜穂子

◆読んだ本◆
・書名:鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐
・著者:上橋菜穂子
・定価:上1,600円 下1,600円
・出版社:角川書店
・発行日:2014/9/25

◆おすすめ度◆
・一気読みの異世界ファンタジー小説度:★★★★★
・巨大帝国の思惑と弱小部族の生き残り戦略度:★★★★
・人体∽社会 とちらも生きるために必死度:★★★★
・やんちゃで元気なユナが可愛すぎる度:★★★★★

◆感想◆
帝国に囚われ岩塩鉱で強制労働を強いられる戦士団<独角>のヴァン。ある夜、岩塩鉱の労働者たちが犬の群れに襲われ、そのかみ傷が原因と思われる奇病が発生するが…

「守り人」シリーズや「獣の奏者」シリーズがめちゃ面白い上橋菜穂子の長編。
期待に違わず面白い。
巨大帝国の思惑や、帝国に吸収され虐げられている弱小部族の反乱や、特異な医療技術を武器に帝国と一定の距離をとりながらも活路を見出そうとしている民族など。
様々な人々の想いを背景に、岩塩鉱で強制労働させられていた戦士のヴァンが、いかにして生き残るかという一種のサバイバル小説でもある。

物語の発端となるのは犬のかみ傷が原因と思われる奇病。
罹患した人や、それを治そうとする医師、さらにその病を戦略的に使おうとする人たち。
そして自らの生き残りをかけた行動さえ、人々の思惑に捕われ翻弄される主人公のヴァン。
いったい彼の前にはどんな道があるのか…

物語は、なにもここまで複雑にしなくても、と感じるような多面的な展開である一方、人体はミクロコスモスというテーマを社会にも敷衍する構成とすれば納得も。
医学に関する考え方や、人が生きるという意味を自らに問う登場人物たち。子供向けのファンタジーと侮ってはいけない。

もう一つの読みどころが、ヴァンが助ける幼い「ユナ」と名付けられる少女。
やんちゃで元気なユナが、それはもう可愛すぎ。
戦士じゃなくても、この子を助けるためには何でもしようという気になっちゃうこと必至のお茶目さ。
ラストも爽やかで暖かい。

著者の「精霊の守り人」が、綾瀬はるか主演で2016年にNHK大河ファンタジーとして実写化。 個人的には、女用心棒のバルサは天海祐希が一押しだったのですが。

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『鹿の王』上橋菜穂子 著者インタビュー

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土漠の花/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:土漠の花
・著者:月村了衛
・定価:1,600円
・出版社:幻冬舎
・発行日:2014/9/20

◆おすすめ度◆
・単純明快なストーリーに手に汗握る展開度:★★★★
・登場人物の想いに冒険小説の魂を見る描写度:★★★★
・今、月村了衛が熱いぜ度:★★★★★

◆感想◆
ソマリアの国境付近に墜落したヘリの捜索活動にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。そこに突然助けを求めてやってきた女性は、氏族間抗争で命を狙われている女性だった…

月村了衛、面白い!

武器はおろか食料や通信手段もないなかで、いかに敵から逃げるかという、単純明快なストリーがいいぞ。
迫る敵、土漠の暑さ、仲間内での確執。いろんな問題を抱えながら、様々な工夫とスキルを駆使して戦う様子がスリルとサスペンス。

登場人物達の人物像も熱い。
まるで昔の冒険小説を読んでいるような「魂」を感じる。

機龍警察シリーズをはじめ、時代小説をも手がける月村了衛。
もう書きたいことが山のようにあって、筆が追いつかないようだし、またどれも熱い「魂」を感じる筆致。

今、月村了衛が熱いぜ。

撤退の途中に遭遇する「ハムシン」
こんなかんじなのだろうか。こりゃタマラン!

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『土漠の花』(月村了衛)/馬場秀和ブログ

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猫が足りない/沢村凜

◆読んだ本◆
・書名:猫が足りない
・著者:沢村凜
・定価:1,500円
・出版社:双葉社
・発行日:2014/9/21

◆おすすめ度◆
・猫にまつわる連作ミステリー小説度:★★★
・猫が足りない「ミセス不機嫌」が破天荒キャラ度:★★★
・主人公の知章は悪女に振り回されるタイプ度:★★★

◆感想◆
就職浪人の知章は、「ミセス不機嫌」こと四元さんとスポーツクラブで知り合う。「猫が足りない」と嘆く彼女の周りで、なぜか猫がらみの事件が起きるのだが…

骨太のファンタジックなストーリーが特徴の沢村凜だが、本書はちょっと趣きがかわった、猫がらみの連作ミステリー小説。
読みどころは「ミセス不機嫌」こと四元さんの破天荒なキャラクター。

猫に関する思い入れや行動や人生観が独特な四元さん。
彼女になぜかつきあい振り回される主人公の知章が、かわいそうになるくらい。(彼は悪女に振り回されるつきまとわれるタイプかも)

読み進むうち、次第に事件の規模が大きくなっていくけれど、ラストはなんだかほんわりした雰囲気に。
「ミセス不機嫌」こと四元さんは、猫の性格がオーバーラップしていて、猫好きの男性には魅力的?
この物語の後、主人公の知章は猫を飼いはじめると予想させる「猫が足りない」短編集。

「沢村凛」と「沢村凜」どっちが正解?
それとも別人? (ってことはないよな)

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荒神/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:荒神
・著者:宮部みゆき
・定価:1,800円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2014/8/30

◆おすすめ度◆
・元禄時代に暴れ出す化け物との戦い度:★★★★
・今までにない破天荒度:★★★★
・宮部版「エイリアン」小説度:★★★★

◆感想◆
村から必死に逃げる蓑吉は、不気味な地響きとものの壊れる重たい音を思い出していた。あれはいったい、何だったのか。夜の闇のなか、突然襲ってきたあれはいったい何物なのか…

得体の知れない未知の化け物との戦いといえば、たいていはそら恐ろしい地球外生命体が登場するバトルSFが定番だが、それを元禄時代の山村を舞台にするという設定が意表をついている。

化け物の産まれてきた因縁を物語の背景にし、それと戦ういわくありげな藩主側近、純朴な村人、正体がいまいちわからない用心棒や絵師などの登場人物の姿がファンタスティック。
しだいに明らかになる化け物の正体がぶっ飛んでいて、エイリアンを凌ぐ暴れん坊ぶりも壮観。

シガニー・ウィーバーみたいな豪腕の女性は登場しないけれど、時代背景を取り込んだ純和風な結末が用意されていて、なんだか今までの著者にない冒険活劇小説のよう。

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プロジェクトぴあの/山本弘

◆読んだ本◆
・書名:プロジェクトぴあの
・著者:山本弘
・定価:1,900円
・出版社:PHP研究所
・発行日:2014/9/1

◆おすすめ度◆
・アイドル系ハードSF小説度:★★★★
・ヒロインのぴあのがユニーク過ぎる度:★★★★★
・著者らしいガジェット満載度:★★★★

◆感想◆
人気アイドルグループのメンバーにして、物理学と天文学に天才的な才能を持つ結城ぴあの。彼女の「宇宙への想い」をつづったアイドル系ハードSF小説。

サブカルチャーやアキバ文化、近未来のオタク文化などに加え、ハードSFな仕掛けや記述も満載な著者らしいSF小説。

なんといってもこの物語のキモは、主人公結城ぴあののキャラクター。
アイドルになったのは自分の夢を実現するための手段といってはばからない彼女は、人を愛するという情緒が理解できないばかりか、ヒトとモノに明確な境界線はないと考えるスーパークールな設定。
さらに物理学や天文学に天才的な才能をもち、コンクリートブロックと魚を焼く網のようなものと針金などで核融合実験装置を自分で作って検証しちゃうというマッドサイエンティストぶり。

秋葉原電気街で出会った「男の娘」の貴尾根すばるの視線で描かれる結城ぴあのがとってもユニーク。

様々な困難を乗り越え、結城ぴあのは夢を叶えることができるのか!?
カタルシスのある展開なにのどこかセンチメンタルな雰囲気が漂うのも彼女のキャラクターのせい?

自宅で核融合実験をする人を「フュージョニア」といい、実際に装置を作って成功したティーンエイジャーもいるそうで、マニアの世界は超ディープ。

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地球移動作戦/山本弘/サイト内

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明日の子供たち/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:明日の子供たち
・著者:有川浩
・定価:1,600円
・出版社:幻冬舎
・発行日:2014/8/10

◆おすすめ度◆
・児童養護施設を舞台にしたドラマチック小説度:★★★★
・「かわいそう」なんて言われたくない!度:★★★★
・笹谷実咲さんに拍手度:★★★★★

◆感想◆
児童養護施設に転職した三田村慎平は、着任初日から先輩職員からキツい指導を受けてしまう。やや憮然としながらも理想にもえて子供たちに接しようとするが…

児童養護施設で暮らす少年少女や、彼らの世話や指導をする職員たちの想いや葛藤、現実の厳しさや強く優しく生きていこうとする姿を描いたドラマチックな小説。

登場人物たちのキャラクターや児童養護施設の風景など、とっても生き生きとしていてリアル。著者のファンなら納得の描写。
色んなトラブルが起きて、それを物語として感動的に構成する展開も見事。
読者サービスや読みやすさはもちろん、物語に込められた想いを読者に過不足なく届けられる有川浩って、天性の作家のような気がする。

そんな作家にアクションを起こした(と想像させる)笹谷実咲さんに拍手。
そうゆう風に思わせるように書いているだけなんだろうか?

自分が精神的に自立を強いられたのは、就職してからだったような気がする。
児童養護施設で暮らす子供たちに比べ、なんと遅いことやら。
未だに自立していないような気もするが、気がするだけだと思うようにしている。

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