だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

僕たちの戦争/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:僕たちの戦争
・著者:荻原浩
・出版社:双葉社
・定価:1,900円
・発行日:2004/8/15

◆評価◆
・タイムスリップ体験&交錯する青春記度:★★★★
・ファッショ的日本/軽薄短小の日本度:★★★★
・やっぱり愛だよね愛度:★★★★★

◆ひとこと◆
上司とケンカし、居酒屋のアルバイトも止めてしまった健太。その短慮さを彼女のミナミからも、子供のケンカとなじられるしまつ。むしゃくしゃする気持ちをサーフィンで紛らそうと沖に向かってパドリングしていたが、突如コンクリートの壁に激突したような衝撃がかかり、健太は気絶してしまう…
一方1944年、吾一は93式陸上中間練習機の操縦席での単独飛行訓練を行っている最中に、機体が激しく振動。機は落下しはじめ、大きなGに襲われた吾一は気絶してしまう…

はじめはよくあるタイムスリップものの青春小説か、と思っていたが、これが面白い。
物語は、1944年にスリップした健太と、現在にスリップした吾一のことが交互に書かれる。
健太と吾一はそっくり。それぞれタイムスリップした先では、周囲の人に頭がおかしくなったんじゃないかと思われたりするほど、似ている。
本人達は、自分とそっくりな他人になりすまし、なんとかそれぞれの世界で生き抜き、自分達のいた元の世界に戻る方法を考える。

読みどころは、自分が生活していた環境とタイムスリップした先の違いに戸惑い、考え、行動する様。
今の若者が終戦まぎわの軍隊でする体験と思い。そして、戦中の若者が、現在の日本を見て感ずること。

軍隊でのシゴキや、同年代の若者が国のために文字どおり命がけである姿が、下手な戦記物を読むよりリアルに迫ってくる。不条理な軍隊の世界が、健太の今風の眼を通して語られると、より鮮明に見えてくる。明るい健太の性格もあって、悲惨で深刻な描写にならず、陽気に見せるところも、若い読者にうける。
一方吾一は、アメリカの植民地となったかのような日本に、びっくり。
戦死した若者達が命を賭けて守ろうとした日本が、自堕落で無秩序な能天気日本となってしまったことに、疑問も湧いてくる。また、古風な若者の姿が滑稽だったり感心したり。
深刻なテーマをも笑いのオブラートにくるんで見せるところに、作者の余裕を感じる。

また、タイムスリップしてとまどう主人公達を助けてくれる、近しい人達の描写もうまい。
手が触れあうだけで頬を赤く染めてしまう文子さんの姿もいいし、吾一とミナミ(眞鍋かをりを連想させる描写)の関係も、新鮮でいい。
記憶が飛んだと思っている吾一を、心配したり気づかったり励ましたりする姿が、鮮やかでかわいい。
コミカルでユーモラスな語り口に、思わず笑いながらも、戦争や平和ぼけした現在を考えさせたり、愛する人を気づかうシーンににほろりとさせられたり。
ありふれた手法でありながら、新しい切り口で物語を完成させるという作者の得意技が、本書では一段と冴えている。

やっぱりすべての基本は愛なのね。



僕たちの戦争/荻原浩の表紙とAmazonでのレビュー
僕たちの戦争
僕たちの戦争荻原 浩

おすすめ平均
stars戦時の日本へ。
stars君がため
stars戦争について考えさせられる作品
stars健太と吾一、どちらが本当に幸せなんだろう
stars一気に読みました!ちょっとネタばれかもなので読む方は気をつけてください。

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テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

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