だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

天冥の標VII 新世界ハーブC/小川一水

◆読んだ本◆
・書名:天冥の標VII 新世界ハーブC
・著者:小川一水
・定価:760円
・出版社:ハヤカワ文庫
・発行日:2013/12/25

◆おすすめ度◆
・サバイバルSF小説度:★★★★
・ダイナミックで身震いする展開度:★★★★
・どうなる?どうなる!度:★★★★★

◆感想◆
小惑星セレスに墜落した恒星船ジニ号。アイネイア・セアキとミゲラ・マーガス、およびその他の乗員たちはどうなるのか…

という前作「天冥の標 VI 宿怨 PART3」のどうなる?どうなる!な結末を引き継ぐ形で物語は展開。

「天冥の標 VI 宿怨 PART1」でも登場した少年少女たちを主人公にして、《救世群》の侵攻はどこまで進んでいるのか、太陽系艦隊をはじめとした人類の行く末は、といった背景のなか、小惑星セレスという閉ざされた空間でのサバイバルが描写される。

「新世界ハーブC」や「メニー・メニー・シープ」のいわれはそうゆうことだったのか!といった細かなジグソーパズルのピースがピタピタとはまり込んでいくような面白さ。
本書を途中まで読んで「8、9巻はいらないんじゃないか?」という安易な予断を許さないダイナミックな興奮する展開。
収束するであろう「天冥の標 I メニー・メニー・シープ」を第1巻に配置した身震いするような構成。

早く次が読みたいという気持ちと、10巻で終わりなんて許せないという気持ちで揺れる男心。
自分が死ぬ間際に完結するよう100巻ぐらいの大長編にしてほしいところです。

絶体絶命の危機の中、雲の糸のように垂らされた生命線はいったいどこから来たのかは次巻に続くです。

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天冥の標VII 新世界ハーブC (ハヤカワ文庫 JA オ 6-21) by 小川一水/基本読書
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天冥の標2 救世群/小川一水/サイト内
天冥の標3 アウレーリア一統/小川一水/サイト内
天冥の標4 機械じかけの子息たち/小川一水/サイト内
天冥の標5 羊と猿と百掬の銀河/小川一水/サイト内
天冥の標6 宿怨 PART1,2,3/小川一水/サイト内

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自分では気づかない、ココロの盲点/池谷裕二

◆読んだ本◆
・書名:自分では気づかない、ココロの盲点
・著者:池谷裕二
・定価:880円
・出版社:朝日出版社
・発行日:2013/12/20

◆おすすめ度◆
・簡単な認知バイアスに関する問題と解説集度:★★★
・お手軽な目鱗心理学本度:★★★
・もっとたくさん&深く解説して欲しい度:★★★★

◆感想◆
認知バイアスに関する簡単な問題と解説で構成された心理学入門書。
池谷裕二のファン、あるいは心理学に詳しい方には、やや物足りない内容か。そうでない方には目から鱗がぼろぼろと落ちるような、びっくり本。
簡単な暗示で記憶力の低下を防げる「プライミング効果」、ジンクピリチオン配合のシャンプーは効果があると思っちゃう「ジンクピリチオン効果」、相手にウソをつけなくさせる「人格同一性効果」…
人間のすることやることは、こうやってみせられるととっても単純で、かわいそうなくらいに間抜けです。

その他にも「みんな」は3人以上とか、物知りはおしゃべりとか、脳は理由を問われると作話するとかの小ネタも。

全部で30問の問題と解説がありますが、もっとたくさん、そして深く解説して欲しくなる一冊です。
巻末にある、認知バイアスに関する183の用語全部について解説して欲しいほどです。

心理学に詳しくなり過ぎて、友人の心理を分析して問い質したりすると、嫌われ者になるから気をつけましょう。

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書楼弔堂 破暁/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:書楼弔堂 破暁
・著者:京極夏彦
・定価:1,900円
・出版社:集英社
・発行日:2013/11/30

◆おすすめ度◆
・著名人を通して現れる明治時代度:★★★
・人々の迷いを「本」で解決度:★★★
・偉人の迷い/凡人の悩み度:★★★★

◆感想◆
明治時代、毎日のらりくらりと過ごしていた高遠は、膨大な本を所蔵する書楼弔堂という本屋に巡り会う。いつしか書楼弔堂の常連となった高遠は、不思議な縁で当時の著名人たちと邂逅するが…

「本は一冊あればいい、その一冊に巡り合うために何冊も読むのだ」という書楼弔堂の主人は、訪ねてくる顧客(泉鏡花、井上圓了、ジョン万次郎、勝海舟などの有名な偉人たちだ)に、京極堂ばりの鋭い読みで彼らの抱えている苦悩や迷いを読み取り、一冊の本を薦める。

京極堂が妖怪をモチーフに「憑き物落とし」をするのに対し、書楼弔堂の主人は「本」で迷いを断ち切るというのがユニークで対比的。

「手段こそが目的」とか「皆が進んでいる方向に目的があるとは限らない」とか「信ずることが即ち正しきこととは限らない」とか、理解しやすい言葉で苦悩・迷いのもとをえぐり出して「迷いを断つのはこの本だ」みたいな。

泉鏡花、井上圓了、ジョン万次郎、勝海舟などの有名人の人となりや当時の情勢がが浮かび上がってくる描写も秀逸だし、さもありなんと思わせる彼らの迷いも、現代にてらし合わせても色あせることのない迷いで、共感する人も多いのでは。

とかいっときながら一番自分が共感したのは、難しい本を読んで頭が良くなったような気になってるのが分かってる凡人・高遠だったりします。

個人的に共感する部分も多くあるけれど、全体的に歴史物に疎い自分にはエピソードがもったいなさ過ぎ。

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コルトM1851残月/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:コルトM1851残月
・著者:月村了衛
・定価:1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2013/11/21

◆おすすめ度◆
・ハードボイルド時代小説度:★★★★
・コルトM1851に魅せられた男度:★★★★
・アクション、信義、そして愛度:★★★

◆感想◆
秘匿している拳銃により邪魔者を排除し、江戸の裏社会で頭角を現してきた郎次。一家の跡目をとろうとするが…

曰く付きな過去を持つ郎次が主人公の時代小説。
少しずつ明らかになる生い立ちや過去の出来事が、アウトローな郎次の人物像をくっきりと浮かび上がらせる。
現代版で描けば普通のハードボイルドなアクション小説になっただろうそれを、江戸時代を舞台にしたことで、残月が似合う奥行きのある時代小説になったような気がする。

コルトM1851のメカニカルな描写やアクションシーンも読みどころ。
コルトに魅せられた人の気持ちが伝わる妖しさをかもし出している。

はじめは嫌な奴に思えた郎次、物語が進むうちに微妙に印象が変化して。
やっぱりキモは「愛」なんだなあ。

一刀流無想剣 斬」や「黒警」より重厚で、「機龍警察」より静謐なハードボイルド。
シチュエーションは色々ですが、著者のスタンスはぶれてません。

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