だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

丕緒の鳥 十二国記/小野不由美

◆読んだ本◆
・書名:丕緒の鳥 十二国記
・著者:小野不由美
・定価:590円
・出版社:新潮文庫
・発行日:2013/7/1

◆おすすめ度◆
・待ちに待った十二国記の新作短編集度:★★★★★
・世界と対峙する生き方とは度:★★★★
・それは自分にできることを懸命に行うということ度:★★★★

◆感想◆
雑誌に掲載された「丕緒の鳥」「落照の獄」に、書き下ろしの「青条の蘭」「風信」をくわえた短編集。
王が登場する長編とは趣が異なり、市井の人々が厳しい環境や境遇の中、必死に生きようとする姿を描く異世界ファンタジー。

十二国記のシリーズは、ファンタジックで奥の深い舞台設定や、現在の様々な社会問題をも取り込んだ物語としての面白さもさることながら、主人公たちの苦労し、悩み、考え、決断し行動する気概に、いたく心を動かされる。

本書には王こそほとんど登場しない短編のため、長編にあるようなダイナミックな展開は用意されていない。
しかし、荒れた世界で暮らす市井の人々が、堅実に懸命に生きる姿を静謐に描写。
静かに、そして力強い物語となっている。

特に「青条の蘭」と「風信」は、自然の描写がすばらしい。
「里木」や「熊蜂」「燕」を描き出したのシーンで、何故か目頭が熱くなるのは、著者が年齢を重ねて作風が変化したせいなのか、それとも自分が年を取ったせいなのか。

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落照の獄 十二国記/小野不由美/サイト内

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聖痕/筒井康隆

◆読んだ本◆
・書名:聖痕
・著者:筒井康隆
・定価:1,400円
・出版社:新潮社
・発行日:2013/5/30

◆おすすめ度◆
・性器を切り取られた美少年の数奇な半生度:★★★★★
・現代小説にして古典の味わい度:★★★★
・著者の「毒気」はどこにある?度:★★★

◆感想◆
紅顔の美少年葉月貴夫は、その美しさが仇となり、性器を切り取られるというむごい事件を招いてしまうが…

性器を失った主人公はどのように成長するのかという「本来の意味でのゾラ的実験」(実際に性器を切り取られたらどんな性格になるのかは知らないけれど、本書で描かれる人格の形成には納得できる)や、「言葉による触発に古語を用いる」(舞台は昭和から平成なのに、忘れ去られた雅やかな言葉を多用し、文章は古典の味わいにして今風の味付け)といった実験的な小説。

カギ括弧がないのにスラスラ読めちゃう文章や、古典に疎い自分でも脚注を参照しながら読むと何故か雅やかな気分にもなれ楽しめるから不思議だ。

さらに主人公のリビドーがどこに向かうのか、その先には何があるのかといった「本来の意味でのゾラ的実験」も、いかにも著者らしく刺激的。

美しすぎる男女が多く登場し一種性の饗宴めいたくだりと、美食家たちを満足させる数々の美味なる料理の対比。 暴力的で死をイメージさせるような弟や、幼い頃から生気に満ち、妖艶ともいえる艶やかさを持った妹の描き方。

帯にあるように「聖と俗」、「性と美食」を対比させながら、そのすべてを包括してしまう主人公の存在。

著者の小説にある「毒気」を、主人公の弟にありそうと当たりをつけていたのだがハズレ。
他の登場人物たちがもつ毒気も、この世の人が持つ罪障も、すべてまとめて「スケープゴート」に収斂してしまったよう。
恐ろしや、男性の「スケープゴート」
それでいて妹が煌めくように美しいのは、一種の神だから?

実際に性器をとっちゃうとどんな性格になるのか。
宦官がとつに有名だが、どうやら女っぽくなるよう。
あたりまえのような気もするが、違うような気もする。
男らしい性格がなくなる、ってことではないのだろうか。

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文体の実験、伴走に感謝 筒井康隆さん「聖痕」を終えて/朝日新聞デジタル
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MM9-destruction-/山本弘

◆読んだ本◆
・書名:MM9-destruction-
・著者:山本弘
・定価:1,900円
・出版社:東京創元社
・発行日:2013/5/30

◆おすすめ度◆
・怪獣アクションSF小説度:★★★★
・正しい怪獣マニアの少年向け度:★★★★
・少年の淡い恋度:★★★

◆感想◆
MM9シリーズ第三部。最終決戦の巻!
スカイツリーを襲った宇宙怪獣を辛くも撃破してから二日。一騎と亜紀子、そしてヒメは茨城県内のとある神社に護送された。そこで出会った美少女巫女ひかるは、ヒメとの意外な関係を明かす…

という出だしのシリーズ三作目は、巨大怪獣のアクションシーン満載。
異星人の地球侵略、美少女の巫女・ひかるの登場による少年一騎を取り巻く美少女たちの四角関係、古代神話にまつわる蘊蓄などを盛り込んで、ウルトラマンばりの怪獣小説に。
良いもん、悪いもんがはっきり分かれて、勧善懲悪なスートーリも王道。
円谷プロがつくる怪獣映画の原作にして欲しいと思う出来映え。

読者ターゲットは怪獣マニアな少年向けに思えるけど、怪獣マニアな少年の心を持つお父さんでも大丈夫。
未読の怪獣マニアなかたは、MM9シリーズの第一部から読むと喜びもひとしお。
気持ちだけ少年時代に戻れること、請け合いです。

テレビドラマ化されたMM9の放送告知CMがYouTubeで見られます。
なんで怪獣が出てこない?

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家族写真/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:家族写真
・著者:荻原浩
・定価:1,400円
・出版社:講談社
・発行日:2013/5/29

◆おすすめ度◆
・ほんわか家族小説度:★★★
・笑いとペーソス度:★★★
・「結婚しようよ」は定年間近のお父さんには号泣もの度:★★★★

◆感想◆
いつの間にか年を取ったお父さんたちの、笑いと悲哀に包まれた家族短編小説。

こうゆう小説を書かせたら、荻原浩は絶品です。
特に「結婚しようよ」は秀逸。
何のために一生懸命働いて、何のために子供を育ててきたのか。
自分の半生を顧みると、なんだか原稿用紙1枚にもならないような平凡なもの。
そんなお父さんの悲喜こもごもが、ほんわかしたタッチで描写される。

「人生の意味」とか「生きるとはどうゆうことなのか」なんていう難しいことは哲学者にお任せして、日々平凡に暮らすのがいいんじゃないか。
無駄にあがいても苦しいばっかりだし。

なんてことを思わせる本書は、アラフィフティからアラシックスティのお父さんにおすすめ。
肥満気味のお父さんや、マイホームの購入を考えているお父さん、無職のお父さんなどにも対応してます。

サザエさんに登場する磯野波平は54歳なんだと!
うーむ、昔は平均的な54歳はあんな感じだったのか?
子供から見る54歳はあんな感じという設定なのか?

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