だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

天冥の標6 宿怨 PART1,2,3/小川一水

◆読んだ本◆
・書名:天冥の標6 宿怨 PART1,2,3
・著者:小川一水
・定価:PART1.720円 PART2.760円 PART3.880円
・出版社:ハヤカワ文庫JA
・発行日:PART1.2012/5/15 PART2.2012/8/25 PART3.2013/1/25

◆おすすめ度◆
・完結までは死ねない超絶面白SF小説度:★★★★★
・ミクロでドラマチック、マクロで希有壮大度:★★★★★
・嗚呼、こんなことに!/これからどうなる?度:★★★★★
・ラリー車の助手席に乗ってる気分度:★★★★★

◆感想◆
人工宇宙島スカイシー3で遭難した《救世群》の少女イリサは、《非染者》のアイネイアに助けられるが…

待ちに待った天冥の標6 宿怨のPART1〜3。
待ったかいがあったの怒濤の展開。

《救世群》の少女イリサと、《非染者》の少年アイネイアのちょっとスリリングでほんわかしたボーイ・ミーツ・ガールな物語だと思いきや、そこに今まで登場してきた《恋人たち》《咀嚼者》《酸素いらず》などの役者をそろえ、 《MHD社》《ロイズ非分極保険社団》《ドロテア・ワット》《シェパード号》などの大道具を配置し、《カルミアン》《ノルルスカイン》《ミスチフ》といった壮大な舞台背景を設定した、完結までは死ねない超絶面白SF小説に。

もう読み出したら止まりません。
ミクロ(ローカルな人間ドラマ)な展開と、マクロ(壮大な知性の戦い)な展開があいまって、そりゃもう大騒ぎ。
必至にしがみついていないとはじき飛ばされる勢いです。

それにしても「嗚呼、こんなことに!」な《救世群》
ある意味必然な展開なんだろうなあ。

役者がほぼ出そろった感のある天冥の標6 宿怨。
シリーズの全体像が見えてきた感じもしますが、それにもまして「これからどうなる」感でいっぱいです。

ちょっとでもSFに興味のある方には強力おすすめ。
続刊を待ちこがれる思いで、身もだえること必至。

壮大な長編小説を大河小説といったりするが、宇宙規模の歴史や時空間をあつかった長編小説は何と呼ぶんだろうか。

大海小説?
大宇小説?

やっぱりSF小説?

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天冥の標1 メニー・メニー・シープ/小川一水/サイト内
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天冥の標5 羊と猿と百掬の銀河/小川一水/サイト内

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夜の底は柔らかな幻/恩田陸

◆読んだ本◆
・書名:夜の底は柔らかな幻
・著者:恩田陸
・定価:上1,600円 下1,600円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2013/1/15

◆おすすめ度◆
・サイキックホラー小説度:★★★★
・出だしからバトル全開度:★★★★
・結末は「むにゃむにゃ」した感じ度:★★★

◆感想◆
無法地帯の〈途鎖国〉。特殊能力を持つ〈在色者〉たちがこの地に集まるときなにかが起こる…

のっけからサイキックなバトルが全開のホラー小説。
「この小説はのんびりした超能力者ものじゃないからね!」という著者のメッセージがこめられているようで、その後の展開もサイキックバトルロワイヤルを予想させる流れに。

〈途鎖国〉という治外法権な山奥の無法地帯。
しだいに明らかになる登場人物たちの関係。
飛んだり丸めたり持ち上げたりの特殊能力。
想念を実体化させたり、人智を超えた異形の存在?を伺わせる〈フチ〉。

常野シリーズの延長線上にある物語に見えるけど、内容は対極にあるような。
ラストは著者らしい?「むにゃむにゃ」したというか「あいまいな」というか「含みを持たせる」というか、著者の過去の小説でもあったような結末。
恩田陸はこれでいいんです、たぶん。
描写される超自然的な出来事や事件などの過程を楽しむ小説だと思います。
ミステリー小説じゃないし。

久しぶりにスティーブン・キング風なサイキックホラー小説を堪能しました。

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恩田 陸

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昨年末に出版された「私と踊って 」は、不思議な恩田陸テイスト満載のホラーやSFやミステリーの短編集。
著者のファンはお見逃しなく。

◆関連記事◆
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解錠師/スティーヴ・ハミルトン

◆読んだ本◆
・書名:解錠師
・著者:スティーヴ・ハミルトン
・定価:940円
・出版社:ハヤカワ文庫
・発行日:2012/12/15
 (2011/11にハヤカワ・ポケット・ミステリより発行されたものを文庫化)

◆おすすめ度◆
・ミステリー小説度:★★★★
・ミステリーの名を借りた青春小説度:★★★★★
・金庫は女だと思え度:★★★★

◆感想◆
子供のときの不幸な事件により話すことができなくなったマイク。運命のいたずらで解錠師となった彼がたどる道は…

数々の文学賞を受賞し、このミステリーがすごい!2013年版海外編2012年週刊文春ミステリーベスト10 で堂々の1位に輝いた本書、読み始めると止められない面白さ。

服役中の解錠師・マイクが、刑務所の中で過去を振り返るという形式の展開。
解錠師となるまでの、そしてアメリアとの出会いのパートと、解錠師となってからのパートで構成されるんだが、これが絶妙にうまい。
二つの時間軸がしだいに融合するようで、それでいてこれからどうなる?、彼の過去に何があったのか?という興味が読者を飽きさせない。

主人公が一人前の解錠師となるまでの成長?ぶりや、メカニカルでセンシティブな金庫破りの緊迫したシーンも読みどころだが、さらに読者の心をつかむのは、マイクとアメリアの恋の始まりと行方。

これはミステリー小説の名を借りた青春小説ですね。

スポーツものの青春小説だと、自分の能力を磨いたり、仲間や対戦相手との戦いや葛藤の中で成長していく姿を描き、そこに好きな女性が絡むという展開になると思うが、本書はそのスポーツが「解錠」という技能に置き換わったよう。

金庫破りの才能や自己犠牲、青年らしい一途な姿や仲間の裏切り。
うまくいったりいかなかったり、悩んだり行動に出たり。
「解錠師」と「愛するアメリア」の二つをキーにしたマイクの青春物語。

金庫は女だそうです。

主人公のマイクは声が出せないけれど、かわりにというか幸いにもというか絵も天才的に上手で、絵を描いて自分の気持ちを表しアメリアを落としちゃうんである。
おまけに二枚目で鍵開けの才能もあるマイク、ちょっとずるい。

◆関連記事◆
解錠師 スティーヴ・ハミルトン著 過去の闇破る若き芸術家/日本経済新聞
スティーヴ・ハミルトン『解錠師』(ハヤカワミステリ)/探偵小説三昧

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脳はこんなに悩ましい/池谷裕二,中村うさぎ

◆読んだ本◆
・書名:脳はこんなに悩ましい
・著者:池谷裕二,中村うさぎ
・定価:1,300円
・出版社:新潮社
・発行日:2012/12/20

◆おすすめ度◆
・脳科学対談度:★★★★
・遺伝子診断であんなことやこんなことまで分かっちゃう度:★★★★
・中村うさぎもかなりのモノ度:★★★★

◆感想◆
脳研究者の池谷裕二と人気エッセイストの中村うさぎの、脳科学に関する対談集。

赤ワイン好きの女性は性欲が強いとか、アダルトビデオを見た男の汗は匂うとか、精子の頭部には味覚センサーがあるとかの興味津々な下ネタにくわえ、人は何をしているときに幸せを感じるかとか、無人島に自分一人だったら心は生まれないだろうとか、ディープな心に関する脳科学的な考察が満載。

池谷裕二の著書に馴染んでいる方にもけっこう新鮮に読めるのは、対談者の中村うさぎの、かなり斬新で的確な突っ込みのおかげ。
今までの池谷裕二の著書にない大胆な発言が面白い。

特に目を引いたのは最新の遺伝子診断。
どんなガンになりやすいか、高血圧になりやすいかといった病気に関することばかりでなく、記憶力や知能、運動能力や芸術性まで分かっちゃう。
それもエピソード記憶に強いとか、短距離走の能力が高いとか。
それが今なら99ドルでできちゃうんですと。
うーむ、すごいことになってる。

自分がどんな秘めた才能を持っているかがつまびらかに!
(あるいは何も才能が無いことがつまびらかに!)
恐いもの見たさで遺伝子診断をしてみたい人が続出するんじゃないだろうか。

本書でふれられている「ラバーハンド・イリュージョン」
飲み屋のお姉さんにやって「すごーい、どうして!どうして?」と言わせたい。

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Rubber hand illusion/youtube


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