だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ビアンカ・オーバースタディ/筒井康隆

◆読んだ本◆
・書名:ビアンカ・オーバースタディ
・著者:筒井康隆
・定価:950円
・出版社:星海社FICTIONS
・発行日:2012/8/16

◆おすすめ度◆
・刺激的ライトノベル度:★★★★
・ライトノベルを超えたエロ&SF&アクション&文明批評度:★★★★
・「ウブメ効果」と「太田が悪い」に大笑い度:★★★★★

◆感想◆
自他ともに認める超絶美少女のビアンカが主人公の、刺激的ライトノベル。
各章のタイトルが「哀しみのスペルマ」「喜びのスペルマ」「怒りのスペルマ」「愉しきスペルマ」「戦闘のスペルマ」と、これだけ見ても普通のライトノベルじゃないことがすぐわかる。

内容は、生物研究部員のビアンカがウニの受精の様子を見るだけでは飽き足らず、人間の精子を採取して受精の実験をしてしまおうという、パンチラだけで終わりっぽいライトノベルを軽く超えちゃう過激な展開。

さらに美少女にそこまでやらすか!なエロな展開ありの、いきなりのSF的展開ありの、取って付けたような文明批評ありの内容。
設定はライトノベルだけれど「ライトノベルじゃないだろう」なトンガリよう。過激です。

ライトノベルのエロは甘い!
ライトノベルのSFは普通すぎる!
ライトノベルのアクションは想定内すぎる!
ライトノベルの文明批評はまともすぎる!
みたいな感じでしょうか。

なんだか昔の著者の小説を読んでいるようで、懐かし楽しく読めた。
「ウブメ効果」と「太田が悪い」が笑いの壷にはまって、思わず「ブハッ」でした。

筒井康隆がライトノベル?と思たけれど、元々ライトノベルな小説も数多くあって、別に驚くことではなかったですね。

◆関連記事◆
21世紀版「時をかける少女」!? 筒井康隆がラノベデビュー/ダ・ヴィンチ電子ナビ
筒井康隆『ビアンカ・オーバースタディ』/小説☆ワンダーランド

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

天空の犬/樋口明雄

◆読んだ本◆
・書名:天空の犬
・著者:樋口明雄
・定価:1,800円
・出版社:徳間書店
・発行日:2012/8/31

◆おすすめ度◆
・山岳(救助隊)小説度:★★★★★
・ハラハラドキドキの冒険小説度:★★★★
・山好きで犬好きの方に超おすすめ度:★★★★★

◆感想◆
南アルプスの山岳救助隊に、相棒の救助犬メイと一緒に赴任した星野夏実。様々な過去を抱える救助隊員たちと、過酷な訓練や遭難者の救助にあたるが…

南アルプスの北岳を舞台に、若き女性救助隊員のや救助隊のメンバー、さらに山岳救助犬の活躍と心のつながりを描いた山岳小説。

山岳救助隊、救助犬、遭難事故、といったキーワードを見るだけで、なんとなく内容はわかっちゃうんだけれど、それでも読み始めると止められない面白さ。
日々の訓練や救助隊のルーチンの描写、北岳の様子やそこで過ごす人々の日常が、なんのてらいもなく活き活きとしている。
それがとっても爽やかだ。

遭難者の救助シーンやラストに用意された事件も、山岳小説らしくスリルとサスペンスと遭難者救助にあたる厚い思いが伝わってくる。

そして何よりグッとくるのは、主人公の星野夏実と相棒の救助犬メイとの信頼関係。
犬好きにはたまらないぞ。
もう泣いちゃうもんね。

家族や愛犬とともに南アルプスの麓に住むという、著者ならではの山岳小説。
「約束の地」も超面白いから、そっちもどうぞ。

階段を上るだけで息切れがする自分は、とてもじゃないけど救助隊になんかなれないが、本書を読むと北岳を登ったような気分になれるから不思議だ。
北岳付近の地図や写真を見たりすると、臨場感倍増。
鉄道の時刻表を見ながら旅行した気分になったりするのと同じ?

◆関連記事◆
約束の地/樋口明雄/サイト内

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

虚像の道化師 ガリレオ 7/東野圭吾

◆読んだ本◆
・書名:虚像の道化師 ガリレオ 7
・著者:東野圭吾
・定価:1,350円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2012/8/10

◆おすすめ度◆
・科学的解明なミステリー短編小説度:★★★
・物理学者の湯川がとってもクール度:★★★
・物理学者の湯川がちょっとあたたかい度:★★★

◆感想◆
物理学者の湯川が事件を解決する、ガリレオシリーズの短編集。

「幻惑す」
 指一本触れずに男を殺したという教祖。果たして教祖の「念」の力は本当にあるのか。

「心聴る」
 幻聴のため凶行に及ぶ男。人を操るような「幻聴」とは、どのようなものなのか。

「偽装う」
 山中のリゾートホテル近くの別荘で起きた殺人事件。いったい誰が、何を目的に事件を起こしたのか。

「演技る」
 劇団の演出家が殺害される。様々な工作をした人物の真意とは。

の4つの短編がおさめられた本書、いずれも物理学者の湯川が事件解決の糸口を見つけ科学的に解決していくという、ガリレオシリーズ特有のミステリー小説。

1本目の「幻惑す」が自分好み。謎の解明はややインパクトが弱いけど、全編超能力や超常現象をテーマにして「インチキを科学的に解明していく」みたいな展開でもいいかと思うくらい。
一瞬「ガダラの豚/中島らも」や「仮想儀礼/篠田節子」、「砂の王国/荻原浩」を思い出したが、著者はそこまで突っ込む気持ちはないみたいで、なんか残念。

どの短編も大胆で超びっくりな展開じゃないけれど、ささっと読める割にディープな内容だったりもして、やっぱり東野圭吾なんである。

本書につづき「禁断の魔術 ガリレオ8」が10月発売。
タイトルは「猛射つ」「念波る」「曲球る」「透視す」の4つで、読み方を当てると懐中時計が抽選でもらえるらしい。

読み方はわからないけど、タイトルからすると超能力のインチキを科学的に解明するっぽくて楽しみだ。

◆関連記事◆
東野圭吾『虚像の道化師』/文藝春秋 特設サイト
 「虚像の道化師」の創作秘話や「禁断の魔術 ガリレオ8」タイトル読み方当てクイズも
「虚像の道化師 ガリレオ7」東野圭吾/雨降りだからミステリでも読もう・・・
ガダラの豚 1 /中島らも/アマゾン
仮想儀礼/篠田節子/サイト内
砂の王国/荻原浩/サイト内

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

脳には妙なクセがある/池谷裕二

◆読んだ本◆
・書名:脳には妙なクセがある
・著者:池谷裕二
・定価:1,600円
・出版社:扶桑社
・発行日:2012/8/2

◆おすすめ度◆
・脳科学最前線度:★★★★
・そんなバカなな脳の振る舞い度:★★★★
・無意識の自分はかなり大胆度:★★★★

◆感想◆
行動を起こそうとする意志が発生する数秒前に脳の中では準備が始まっているという。そんな超びっくりな脳の機能について書かれている「単純な脳、複雑な「私」」は、とっても衝撃的だった。
本書は「単純な脳、複雑な「私」」の著者による、脳科学の最前線にして脳の奇妙な(でも読めば納得の)振る舞いについて書かれたエッセイ集。

ポイントとなるのは無意識。

知ったかぶりをしがちで(後知恵バイアス)、左視野を重視し(シュードネグレクト)、もっともらしい映像的説明にころっと説得され(ニューロレアリズム)、楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいと感じる脳。

いったい自分の意志はどこにいっちゃったのだ。

著者はこう言う。
「自由意志とは本人の錯覚にすぎず、実際の行動の大部分は環境や刺激によって、あるいは普段の習慣によって決まっているということです」
「意識と無意識はしばしば乖離しています。そして、無意識の自分こそが真の姿です」

「ひぇ~」なお言葉。
無意識にしちゃってることに自分は責任を負えないんじゃない?


さらに脳は何のためにあるのかという哲学的な問題にも言及。
「身体感覚(入力)と身体運動(出力)の処理に特化した組織」だった脳だが、人のような脳の機能が高度になり自律性が高くなると、脳内だけで情報をループさせられる。
身体感覚(入力)と身体運動(出力)なんて関係なしに、脳の中だけでグルングルン情報が駆け巡っちゃうんである。
これが「考える」ということなのだ。
「ヒトの心の実態は、脳回路を身体性から解放した産物です」なのだ。
なんだかSFのテーマにもなりそう。

しかし、だからこそ「身体性を軽視しがちな脳だけに、あえて身体性を大切にしなければならない」という著者。 手足を動かし、見て感じて味わってから、的確に行動た経験が、反射/考え/無意識の行動に現れるということなんだなあ。
何事も日頃の心がけ次第だ。

くわばらくわばら。

「はじめに」に書かれている、どんな人でも少なくとも一回は競争で一番になった経験があるという小話?は、なんだか勇気づけられる。
その割に水泳は得意じゃないんだけど。

◆関連記事◆
池谷裕二のホームページ
単純な脳、複雑な「私」/池谷裕二/サイト内

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

空飛ぶ広報室/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:空飛ぶ広報室
・著者:有川浩
・定価:1,600円
・出版社:幻冬社
・発行日:2012/7/25

◆おすすめ度◆
・航空自衛隊広報室のお仕事小説度:★★★
・すばらしきかな、自衛隊度:★★
・奮闘し、頑張り、落ち込み、恋する自衛隊員度:★★★★

◆感想◆
戦闘機パイロットの空井大祐が、不慮の事故で広報室へと転勤となる。不慣れな職場で、先輩たちやマスコミの取材などでもまれながら、次第に仕事への愛着と意義を見いだしていく…

航空自衛隊の広報部を舞台にしたお仕事小説。
あまり知られない広報室の仕事をつまびらかにし、さらに著者らしいユニークで魅力的なキャラクターを生き生きと描いていく小説。

さすがに有川浩、上手です。
悔しかったり悲しかったり、忸怩たる思いだったりほのかな恋心だったりの登場人物たちの気持ちを、さらっと爽やかに描いている。

さらに一種の自衛隊プロパガンダ小説にもなっているところがユニーク。
あまり知られてない仕事の内容をモデルにするというのは、「県庁おもてなし課」と似ているが、舞台が自衛隊ということで著者も相当気持ちを入れてるよう。
自衛隊アレルギーの人が読んで、どれだけ自衛隊に親近感を持つようになるかがテーマともとれる。

テレビ番組の取材スタッフにして自衛隊大嫌いな女性から「戦闘機って人殺しのための機械でしょう?」なんていわれて、主人公が怒り心頭なシーンがある。
そう思っている読者だっていっぱいいると思うが、本書を読み終わったときどれだけ自衛隊(自衛隊員)への見方が変わるかどうがが注目点。

沢村凜の「リフレイン」を読んだ直後ということもあって、なかなか安易に頷けないというか。
いくら専守防衛といったって、敵が攻めてくれば戦闘機で迎撃することもあるだろうし、そうすれば当然戦闘機は「人殺しのための機械」に成り下がってしまう、ということを忘れてはいけないのだろう。
自衛隊員がすばらしい人だからといって、自衛隊がすばらしいということにはならないよなあ。

要は使い方の問題?
そんなことまで考える必要ない?

「空飛ぶ広報室」というそのまんまのタイトルの航空自衛隊のサイトがあって、本書のタイトルをサイト名にしちゃったことが軽いノリで書かれたりしてて。
いろいろ苦労しているのねって感じです。

◆関連記事◆
有川浩 『空飛ぶ広報室』/AKASHIC NOTE
【空飛ぶ広報室】航空自衛隊の中の人/学ぶために何を読む?
空飛ぶ広報室/[JASDF] 航空自衛隊
県庁おもてなし課/有川浩/サイト内
リフレイン/沢村凜/サイト内

テーマ:読書感想文,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:小説・文学,本,感想,ミステリー

FC2Ad