だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

リフレイン/沢村凜

◆読んだ本◆
・書名:リフレイン
・著者:沢村凜
・定価:705円
・出版社:角川文庫
・発行日:2012/7/25(1992年2月発行を加筆・修正して文庫化)

◆おすすめ度◆
・SF設定のサバイバル小説度:★★★★
・罪とは? 正義とは? 何が正しいことなのかの法廷劇度:★★★★
・マイケル・サンデル教授に教えてほしい度:★★★★★

◆感想◆
様々な星の乗客を乗せた宇宙船が遭難。宇宙船が航行不能に陥る前に、なんとか地球型の無人の惑星に漂着する。生き残った人々は、力を合わせて食料を確保し、家を建て、自治的な社会組織をつくって困難に立ち向かおうとするが…

これは深い、深すぎる。

漂着した惑星で、リーダーシップをとる弁護士のラビル。
説得力のある言動や、皆を統率する力と意志の強さを持ったラビルは、皆からリーダーにふさわしい存在として認められる。
しかし、彼に逆らう数人の男たちと反目し、次第にそれが大きな事件へと発展してしまう。

果たして彼らは母星に帰ることができるのか。
そして、リーダーのラビルと、彼に反目する男たちとの間に起きた事件はどのように決着するのか。

無人の惑星でのサバイバル生活の描写は、まるで冒険小説のよう。
それだけでひとつのSF小説としても成立する内容だけれど、それは後半の舞台設定にすぎないという重厚な構成。

肝となるテーマは「殺人」

非暴力主義を貫く主人公のラビルと、自分たちや仲間を守るためには「殺人」もやむなしとする人たちとのせめぎ合い。
自分の生命を守るためにも、暴力的な力を使ってはならないのか。
非暴力はただの理想なのか。
殺し合うのは人間の本能なのか。
正義はいったいどこにあるのか。

著者の「黄金の王 白銀の王」や「瞳の中の大河」に共通する重たいテーマだ。
簡単に答えが出ない問題だけれど、主人公のラビルのとった行動には強いメッセージ性を感じる。
マイケル・サンデル教授にどうすればよかったのか訊いてみたいぞ。

本書を読んで思い起こすのは「ミニョネット号事件」
難破した船から4人が救命艇で脱出するが、食料が無くなる中、海水を飲んで衰弱した若者を殺害し、その死体を残った3人の食料として生き延びる。
24日後に3人は救助されるが、裁判にかけられ、その罪を問われるという事件だ。

全員が餓死するのを覚悟するのが正しいのか、誰かを犠牲にしてでも生き残る道を選択するのが正しいのか。

死ぬのも苦しいが、生き残るのも苦しい。
こんな状況に陥らないよう祈るばかりだけど、そんな風に考える人間は弱肉強食の社会では生き残れないのかもしれない。

◆関連記事◆
リフレイン 沢村凛著/読書日記~防忘録~
「リフレイン」 沢村凜/乱読にもほどがあるッ!
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ミニョネット号事件/ウィキペディア

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アラミタマ奇譚/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:アラミタマ奇譚
・著者:梶尾真治
・定価:1,600円
・出版社:祥伝社
・発行日:2012/7/30

◆おすすめ度◆
・ファンタジックSF小説度:★★★
・阿蘇山にはそんな不思議な歴史があったのか度:★★
・小学校の図書室にはもれなく置いてほしい度:★★★★

◆感想◆
恋人の千穂と一緒に、彼女の実家のある阿蘇行きの飛行機に乗った知彦だったが、突然の衝撃に気を失ってしまう。そして知彦が意識を取り戻したのは病院。ニュースで飛行機が墜落したこと、さらに知彦以外の全員が行方不明となっていることを知るが…

カジシンらしい愛と勇気の物語。
テーマとなる謎・不思議が阿蘇山由来、というのが日本昔話風でもある。

前半は、恋人を捜す知彦と不思議な使命をもった人たちとの出会いに、阿蘇山の不思議を絡めて展開。
後半は、あらぶるモノとの戦いを全面にだしたアクションファンタジー。
どちらかというと少年向けの展開で、小学校の図書室にはもれなく置いてほしいと思わせる内容だ。

ちょっと「サラマンダー殲滅 」を思い出させる設定もあったりして、カジシンファンは思わず「うんうん」とうなずきそう。
阿蘇山というパワースポットに詳しい方なら、より本書を楽しめるかも。

ウィキペディアの「阿蘇山の伝説」から抜粋。

大昔の阿蘇は外輪山に切れ目が無く、その中には水がたまって広大なカルデラ湖になっていた。健磐龍命はこの水を無くして田畑を造ろうと考えた。
外輪山の一部を蹴破るが、そのはずみで健磐龍は尻餅をついてしまって「立てぬ!」と叫んだ。以後その場所は「立野(たての)」と呼ばれるようになった。

オヤジギャク愛好家、激しく納得の地名だ。

◆関連記事◆
阿蘇山/ウィクペディア
みんなが知っている阿蘇は不思議がいっぱいの山です超阿蘇!

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残穢/小野不由美

◆読んだ本◆
・書名:残穢
・著者:小野不由美
・定価:1,600円
・出版社:新潮社
・発行日:2012/7/20

◆おすすめ度◆
・背筋ゾクゾクなホラー小説度:★★★★★
・鳥肌もののドキュメンタリー度:★★★★
・私はこれを読んで下痢になりました度:★★★★★

◆感想◆
ホラー作家である主人公の女性に、ファンの女性から一通の手紙が来る。その手紙は、女性のマンションの部屋で、畳をほうきで掃くような怪音がするというものだった…

誰が読んでも主人公の女性は著者本人で、特定の人名や場所をのぞいては、実名で物語が進行するというドキュメンタリータッチ(あえて)のホラー小説。
これがもう背筋ゾクゾク、鳥肌立ちまくりの怖さだ。

女性の部屋でする怪音を調べるうち、同じマンション内で怪異な出来事が起きていることがわかり、さらに調べを進めると、それは時代をどんどん遡って拡大連鎖し、そして収斂していく。

怪異な出来事の原因を調べる様子は、事件の謎を解明しようとするミステリー小説を読んでいるようで、ぐいぐい引き込まれる。
現実主義を自認する主人公が怪異な出来事を考察する様は、「ゴーストハント」のロジカルでアカデミックな語りの部分と似て(ハイテクマシンや霊能者は出てきませんが)とってもリアル。

「ドキュメンタリー」と銘打つのも納得なんだけれども、本当にドキュメンタリーだったら怖すぎるっ。
ドキュメンタリータッチのホラー小説ということにしてください。

最後の方は背筋がゾクゾクして鳥肌立ちまくり。
おまけに下痢までしちゃいました。
恐るべし、「残穢」の伝染力(?)

同時期に刊行された「鬼談百景」の都市伝説っぽい怪談話のいくつかが、本書の中で実話?として関連づけられていたりして。
でもなんだか「鬼談百景」の怪談話の全部が、本書のメインとなる怪異に繋がっているようで。
改めて「鬼談百景」を再読しようかと思ったけど、すぐ読むにはヘビーすぎるからやめとこうと思います。

◆関連記事◆
小野不由美 『残穢』/AKASHIC NOTE
鬼談百景/小野不由美/サイト内
ゴーストハントシリーズ/小野不由美/サイト内

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鬼談百景/小野不由美

◆読んだ本◆
・書名:鬼談百景
・著者:小野不由美
・定価:1,600円
・出版社:メディアファクトリー
・発行日:2012/7/24

◆おすすめ度◆
・ホラー短編小説度:★★★
・99話も読むと金縛りにあいそう度:★★★
・中でも「お気に入り」が超怖い度:★★★★

◆感想◆
現代版百物語。

一話一話は、どっかで聴いたことがあるような怪談話だけれど、さすがにこれだけの数を読まされると、なんだか金縛りに合いそうで怖くなる。
妙に力まない淡々とした文章も効果的。

それにしてもよく99話も書いたものだ。
どうやってネタを集めたんだろう?
読んでいる方より掻いている方がよっぽど怖かったに違いない。

なかでも怖かったのは帯にもチラッと紹介されている「お気に入り」
お化けも幽霊も出てこないし、スプラッターなシーンも驚かすような描写もないのにこの怖さ。
あるいはそんなシーンがないから怖いのか。
子供が空中を見つめたら,そっちは見ないようにしようと思う。

本書は同時に刊行された「残穢」と関連があるらしいのだが、どう繋がるのか期待大だ。

怪談話を100話語り終えると、本物の怪異が起こるらしい。
だから本書におさめられている短編も99話ということなのだろう。

勉強や仕事ができるようになる話しを100話語ったり、彼女ができる話しや楽して生きて行く方法なんかを100話語ったら、どうにかうまいことになならないだろうか。

◆関連記事◆
残穢/小野不由美/サイト内

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カラット探偵事務所の事件簿 2/乾くるみ

◆読んだ本◆
・書名:カラット探偵事務所の事件簿 2
・著者:乾くるみ
・定価:648円
・出版社:PHP文芸文庫
・発行日:2012/8/1

◆おすすめ度◆
・本格ミステリー小説度:★★★
・オヤジギャグが笑えないところが凄い度:★★★
・コミカルでやるせない度:★★★

◆感想◆
「カラット探偵事務所の事件簿」シリーズの第二弾。
謎解き専門の探偵事務所「カラット探偵事務所」に、たまーに舞い込む事件を、「名探偵」を自認する所長・古谷と助手にして高校時代の同級生・井上が解決するという連作短編集。

腕にハート型の日焼け後ができた高校生の、「ひょっとして女性からの愛のメッセージ?」な謎とか、エレベーター点検のため密室状態になったビルで発生した不可解な事件とか、車の軽い衝突事故に隠されていた第二の犯罪とか。
日常に潜む(あんまり潜んではいないか?)事件を、2人が次々カラット解決していく顛末記。

読みやすくってひねりも効いている。
コミカルなタッチながら、ちょっと切なかったりやるせなかったり、逆にほんわかした気分にさせたりと、人の想いもうまく描いている。

オヤジギャグが笑えないしあんまり面白くないんだが、それが堂々としていて寒いオヤジギャグ愛好家の心をくすぐるところもいいぞ。

蒸し暑い日でもささっと読める軽快なミステリー小説だ。
寒いオヤジギャグで涼しくなれるかも。

「ちなみに、こういうクイズ、知ってます? 十台の車が停められる駐車場があって、それぞれ一番から十番まで数字が振られていました…」

本編にこんなクイズがあって、答えは「九番」なんだけど、なんで九番なのかさっぱりわからないっ!

うーむ、おれのアタマは小学生並みなのか。

◆関連記事◆
カラット探偵事務所の事件簿1/乾くるみ/サイト内

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海賊とよばれた男/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:海賊とよばれた男
・著者:百田尚樹
・定価:上1,600円 下1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2012/7/11

◆おすすめ度◆
・石油に命をかけた男たちの物語度:★★★★
・石油エネルギーから見た戦前,戦後の動乱期度:★★★★
・力強く初心貫徹な男の生き様度:★★★★
・出光興産の社員教育用にもうってつけ度:★★★

◆感想◆
明治の終わりから昭和にかけて、消費者と日本国のために石油の輸入・販売に力を注いだ出光興産の創業者・出光佐三。彼をモデルにした波乱と驚愕のノンフィクション・ノベル。

それにしてもやることなすことが命懸けな主人公・国岡鐵造。
単身満州に乗り込み、国岡商店という無名の個人企業の油を売り込んだり、禁輸措置中のイランから原油を買い込むという暴挙/英雄的行為をしたり、石油メジャーと互角の戦いをしたり、起死回生の策として巨大タンカーを建造したりと、それはもう大胆にして緻密、目先しかみていないようで遠い先まで見越した戦略的商活動が、 ハラハラドキドキもの。

そんな岡鐵造の回りには、彼の考えや人となりに心酔した社員や支援者があつまる。
私財をなげうってポンと大金を渡すパトロンがいたり、多くの人や会社が国岡商店を潰そうと画策する中、逆に国岡鐵造に共感して救いの手を差し伸べるGHQや石油メジャーや銀行の幹部がいたり,苦役もいとわぬ社員がいたり。

戦前から戦後の動乱期を、ブルトーザーのように走り抜けた国岡鐵造の生涯が、力強く描かれている。
いささか格好良過ぎで、脇役も国岡鐵造に心酔し過ぎなきらいはあるが、これがノンフィクション・ノベルだというからビックリ。
明治の男はやることが破天荒で頑固だなあ。

出光興産の社員教育用に使うと、社員の意気も上がるんじゃないかと。

CIAに手を回し、クーデターまで起こそうかという石油メジャー。
すごいですね。
やることが国岡鐵造の比じゃありません。

◆関連記事◆
出光佐三/ウィキペディア
『海賊とよばれた男』百田尚樹著《READING LIFE》/天狼院書店

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羽月莉音の帝国 1~10/至道流星

◆読んだ本◆
・書名:羽月莉音の帝国 1~10
・著者:至道流星
・定価:全10巻合計6,432円
・出版社:小学館 ガガガ文庫
・発行日:2010/2/23~2012/2/22

◆おすすめ度◆
・ライトノベル風味の経済小説度:★★★★
・空前絶後の大風呂敷度:★★★★★
・スピード感/説得力/予断を許さぬ展開度:★★★★★
・若きサラリーマン,OLよ、大志を抱け度:★★★★

◆感想◆
女子高生の羽月莉音が立ち上げた「革命部」。「世界革命を起こし目標は建国!」というとんでもない目標をかかげ、彼女と幼なじみたちの5人の高校生が奮闘する革命的建国の経済小説。

ライトノベルなのに経済小説?と、ちょっと毛色の変わった本書だけれど、これがとっても面白い。

ゴミあさりやコスプレ写真で資金集めをはじめるが、あれよあれよと言う間に「革命部」を法人化。
さらに事業を手広く拡大させ、売上高も億から兆、さらに京とう単位の金額に。
革命部に対するのも、日本の会社経営者やヤクザにはじまり、中国の裏社会や世界的財閥などなど。
果てはロシアやアメリカ大統領までをも巻き込んでしまうという大風呂敷。

「高校生がそんな大胆な事業展開できるわけがない」と言ってしまえばそれまでだけど、読み進むうちそのライトノベルな設定とユニークなキャラクターさえご愛嬌に思えるほどの迫真で大胆な経済小説に。
著者も相当力入れてるのが伺えるし、癖のない文章も読みやすいし、スピート感もあるし、先の展開も予断を許さずワクワクするしの面白小説だ。

児玉誉士夫やロスチャイルド家など、実在の有名な人物をモデルにしたり、実在する秘密結社や組織をそのまんま使ったりする設定にちょっと首を傾げたくなるが、逆に「世の中は小説より奇なのだ」という若者へのメッセージとしてみれば、納得の舞台設定。

史実とフィクションを巧妙に織り交ぜて書いている所が、ライトノベルらしくないリアリティを感じさせる力にもなっている。
会社経営者である著者の経験や社会の見方も、それを補強しているなあ。

なんてことは別にしても、読みはじめたら止まらない宇宙まで飛んでいきそうなジェットコースター小説。
ちゃーんと地べたに着地する手腕もたいしたものだ。
世の中の道理が分りはじめた若きサラリーマンやOLにも超オススメ。

魔法とか出てこないしラブコメ要素も低いから、おじさんでも大丈夫。
本屋で買う時は恥ずかしいけどね。

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