だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ナミヤ雑貨店の奇蹟/東野圭吾

◆読んだ本◆
・書名:ナミヤ雑貨店の奇蹟
・著者:東野圭吾
・定価:1,600円
・出版社:角川書店
・発行日:2012/3/30

◆おすすめ度◆
・ファッタジックな設定度:★★★★
・ノスタルジックな背景度:★★★★
・センチメンタルな展開度:★★★★
・ハートフルな繋がり度:★★★★

◆感想◆
悩み相談の手紙をシャッターのポストに投函すると、牛乳箱に返事の手紙が入っているという不思議な雑貨店。様々な悩みが時空を超えて取り交わされた時、そこに信じられない繋がりが浮かび上がってくる…

客にお題を出してもらい、それを即興で語る「三題噺」という落語がある。
ひねりが効いていて、「うまいっ」と思うような落ちの落語を即興で語るのは神業だろうけど、東野圭吾は小説で「三題噺」をやって、なおかつ神業な展開や落ちをつけられる作家のように見える。


編集者:東野先生、今回は「生協の白石さん」「手紙」「児童養護施設」の三題でファンタジックな物語を書いて頂けませんか?
東野:「生協の白石さん」っていうと、大学の生協職員と学生のユニークなメッセージ交換で話題になった?
編集者:そうそう。それを悩み相談みたいな形式にして、さらに相談者のその後の人生が相談したことでどう変化したかも描いちゃうなんていうのはどうでしょう?
東野:う~む。
編集者:時代は現在と過去の両方。過去は先生が若かりし頃の時代が書きやすいんじゃないですか?
東野:「児童養護施設」ってのは?
編集者:そこはそれ、先生の巧みな構成力とひらめきでひとつ。


なんて会話はまったくの空想だけれど、思いついたアイデアを見事な展開と落ちで物語にし、なおかつ著者と同世代の読者をしみじみとさせ、さらにミラクルな繋がりを演出する著者は、もう人知を超えた作家だ。

大昔に友人からもらった手紙をひもといてみると、当時の思いが蘇ったりしてタイムスリップ感がある。
精神的タイムトラベルみたいな。

今も同じようなことを考えてるのを知って、精神的な時間は止まっていたんだなあ、なんて凹んだりして。
自分に一人時間差攻撃しているような。

◆関連記事◆
東野圭吾『ナミヤ雑貨店』特設サイト/角川書店

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日本全国津々うりゃうりゃ/宮田珠己

◆読んだ本◆
・書名:日本全国津々うりゃうりゃ
・著者:宮田珠己
・定価:1,500円
・出版社:廣済堂出版
・発行日:2012/4/10

◆おすすめ度◆
・脱力ずっこけお笑い旅エッセイ度:★★★★★
・凹んでいても気分はうりゃうりゃに度:★★★★★
・前代未聞の自宅の庭旅度:★★★★

◆感想◆
宮田珠己が日本全国のあちこちを旅して回るという脱力ずっこけなお笑い旅エッセイ。

日本全国とかいっときながら、日光東照宮にクラゲを探しに行ったり、神津島に砂漠を探しに行ったり、あげくの果てはパチンコ屋で大当たりした顛末や自宅の庭を「旅」したりするうりゃうりゃぶり。

素敵だ。
珍妙で素晴らしすぎるぞ宮田珠己。

いたるところで大笑いなのは無論のこと、読者の気分が凹んでいようと落ち込んでいようと、読みはじめたら著者のペースに飲み込まれ、気分はうりゃうりゃに。

この脱力系文章の持つパワーは凄い。
宮部みゆきとかのベストセラーな作家がワンセンテンスで心の機微を表現するのに感心するけど、宮田珠己もそれに比肩する脱力ぶり。
いったいどうやったらこんな文章を書けるのか感心する。

ジェットコースターや海の変な生き物やそこらの石に対しての偏愛ぶりも申し分なく発揮してるし、あとがきの最後まで気が抜けない、電車の中では読んではいけない爆笑本だ。

本屋で女性作家の棚に本書を発見した時から、もうすでに笑いそうに。
「廣済堂よみものWeb」で『日本全国もっと津々うりゃうりゃ』掲載中!

◆関連記事◆
宮田珠己『日本全国もっと津々うりゃうりゃ/廣済堂よみものWeb

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定本 百鬼夜行 陽/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:定本 百鬼夜行 陽
・著者:京極夏彦
・定価:1,750円
・出版社:文芸春秋
・発行日:20112/3/20

◆おすすめ度◆
・ホラー小説(怪談話)度:★★★
・取り憑かれた人達(共感すると恐い夢をみそう)度:★★★
・脇役を主役に(本編を読みたくなる)度:★★★★

◆感想◆
百鬼夜行シリーズの最新作。
長編に登場した脇役たちを主人公に据え、題名とする妖怪になぞらえた怪談話にするという趣向は「百鬼夜行 陰」と同じ。
とかいいながらも、「百鬼夜行 陰」は1999年の発行だし、一番最近の長編「邪魅の雫」が発行されてからだいぶ時間が経つこともあって、本書に登場する人物たちが、長編の方でどんなふうに描かれていたか思い出すのはムヅカシイ。(長編の方を読みたくなるけど、本の厚さにタジタジ…)

でもそんな予備知識(記憶)がなくても、面白く読める。

苦しかったり、辛かったり、惨かったりした体験により、精神が不安定になって、まるで妖怪に取り憑かれてしまたような登場人物。
登場人物とどこかで共振するととっても恐い夢を見そうなくらい、不気味でおどろおどろしく悲しい。
「人間って、こんなにも衝動的で矛盾していて不可解な生き物なんだ」ということを感じさせるし、それはそのままそっとしておいた方が幸せに暮らせるんだろうなあ、と思わせる。

どうしても見えてしまう「榎津礼二郎」は、だから探偵になったのか?

本作に登場する登場人物と、百鬼夜行シリーズの関係
(本作の題名:登場人物名:百鬼夜行シリーズ書名)
・青行燈:平田謙三 :陰摩羅鬼の瑕
・大首 :大鷹篤志 :邪魅の雫
・屏風闚:多田マキ :絡新婦の理
・鬼童 :江藤徹也 :邪魅の雫
・青鷺火:宇田川崇 :狂骨の夢
・墓の火:寒川秀巳 :次作「鵺の碑」
・青女房:寺田兵衛 :魍魎の匣
・雨女 :赤木大輔 :邪魅の雫
・蛇帯 :桜田登和子:次作「鵺の碑」
・目競 :榎木津礼二郎

京極夏彦作品人名事典で探すと、ちょっとは記憶が戻るかも。
人名は京極夏彦作品人名事典に、書名はウィキペディアにリンクしています。

定本 百鬼夜行 陽

京極 夏彦 文藝春秋 2012-03
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定本 百鬼夜行 陰

京極 夏彦 文藝春秋 2012-03
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子供も頃、一人で寝られない夜を過ごしているとき、手足がジンジンと太くなって行き、それはもう自分の手足じゃないみたいな感覚に陥り、それでいて肌に鋭敏な感覚がるような…
自分の身体が膨らんで行くような、身体の界面があやふやになるような感覚を覚えたことが。

本書を読んで、そんな子供の頃の記憶が蘇りました。
だから何?ってこともないんですが。

◆関連記事◆
『定本 百鬼夜行 陽』(京極夏彦著)著者インタビュー 人の世の哀しみを妖怪に托して/本の話WEB
百鬼夜行 陽 京極夏彦 文藝春秋/この世の全てはこともなし

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機龍警察 自爆条項/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:機龍警察 自爆条項
・著者:月村了衛
・定価:1,900円
・出版社:早川書房
・発行日:2011/9/25

◆おすすめ度◆
・心が震える冒険小説度:★★★★★
・謀略と組織抗争が渦巻く近未来警察小説度:★★★★★
・スリルとアクションのパワードスーツ型ロボットSF度:★★★★
・あえて裏切り者の汚名を着て度:★★★★★

◆感想◆
横浜港に入港したコンテナ船に武器密輸の疑いがあるとの情報を得た税関は、鶴見署の刑事と合同で捜査に当る。現場の荷役責任者に職務質問をしたところいきなり短機関銃による銃撃を受け、さらに発砲を繰り返しながら荷役責任者は船内に逃走するが・・・

「機甲兵装」というパワードスーツ型ロボットが軍や警察で活用されるようになった近未来。
警視庁特捜部に配備された「龍機兵」という機甲兵装と、それを操作する傭兵たちを主役にした近未来警察小説。
なんだかライトノベル風のロボットものな感じだけれど、これがもうメチャクチャ面白い。

省庁間の利権争いや暴力、警察組織内の抗争なんかが骨太のタッチで描かれる一級の警察小説でありながら、パワードスーツ型ロボットのバトルシーンもありのアクションSF小説にもなっている贅沢さ。
さらに、アイルランドのテロ組織や中国企業(中国裏社会)などを交えた、国際謀略ものな展開も。

読みごたえのある警察小説に、ロボットSFの豪華なおまけがついたような小説だ。

しかし本当に素晴らしいのは、元テロリストにして「龍機兵」に搭乗する傭兵のライザを描いたくだり。

北アイルランドの都市に生まれたライザは、貧しい生活と差別の中で育つ。自分や家族に対しての有形/無形の暴力。無差別テロにより声を失った妹。いつしかテロ組織に身を投じるようになってしまったライザ。

そんなライザの過去が描かれるパートは、まるで良質の英国冒険小説を読んでいるよう。
月村了衛はジャック・ヒギンズの弟子か?と思うほどに、心が震える描写だ。

さらに現在のパートへよどみなくきれいに受け継がれる展開。
ラストシーンも見事。

警察小説やロボットSFが好きな方はもちろん、冒険小説好きな方は是非ご一読を。
続編も出版されるようなので、とっても楽しみだ。

機龍警察 自爆条項  (ハヤカワ・ミステリワールド)

月村 了衛 早川書房 2011-09-22
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「機龍警察 自爆条項」は、前作「機龍警察」の続編。
「機龍警察」は著者のデビュー作でもあってか★★★な感じだったけど、本書でライザの過去を知ると「おお、なるほど!」な面白さを味わえる。
魅力的な登場人物が多い本書だけれど、次作では姿俊之の過去を描いて欲しくなる。

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

月村 了衛 早川書房 2010-03-19
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◆関連記事◆
『機龍警察 自爆条項』 月村了衛/朴念仁と居候
機龍警察 自爆条項/ヘリコニア談話室
『機龍警察 自爆条項』(月村了衛)/馬場秀和ブログ
月村了衛の月録/著者のブログ

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柚木春臣の推理 瞑る花嫁/五代ゆう

◆読んだ本◆
・書名:柚木春臣の推理 瞑る花嫁
・著者:五代ゆう
・定価:1,400円
・出版社:双葉社
・発行日:2012/2/25

◆おすすめ度◆
・ゴシックミステリー小説度:★★★
・「驚異の部屋」が変!度:★★★
・金茶色に光る眸の青年はアートマ変身する? しない!度:★★★

◆感想◆
資産家の旧家で起きる殺人事件。「驚異の部屋」と呼ばれる様々な珍品が並べられた部屋。遺産を巡る親族間の確執。ひょんなきっかけで事件に巻き込まれた柚木は、事件を解決できるのか・・・

「クォンタムデビルサーガ アバタールチューナー」ですっかり五代ゆうのファンになってしまい、本書もいそいそと購入。

物語は資産家の旧家を中心に、亡くなった当主のヘンテコな趣味の部屋やコレクションを題材にしたゴシックミステリーな雰囲気と、親族や使用人を巻き込んでのおどろおどろしい横溝正史っぽい人間関係を描きながら進行。

ライトノベルなアクションやSFっぽい展開を期待したりもしたけれど(なんせ探偵役の柚木春臣の眸が金茶色に光ったり、その性格を"冷酷な獣"なんて表現されたら期待しちゃう)、いたって真っ当な?ミステリー小説。

特徴はゴシック風な舞台設定。
「アルチンボルドの四大元素」とか「ボルジア家の指輪」とか「リガード様式の宝飾品」とか。また、それらが陳列されている「驚異の部屋」とか。
幻想的で偏執的な雰囲気をかもし出して、さらにミステリー的なトリックと事件背景の両方に作用する効果が。

頭脳明晰な青年・柚木春臣もいわくありげ。
本書の中で過去の柚木が描かれるんだけど、それ以外にも「これはシリーズ物なのか」と思わせる描写があったり。

立科徹17歳の事件についても読んで見たい気がする。

驚異の部屋
驚異の部屋/ウィキペディア

よくよく調べると、柚木春臣や立科徹が登場する「Aの旋律」というWEBマガジンがある。これは青春小説のよう。
本書は「Aの旋律」に続く物語なのだろうか?

ライトノベルも書けばSFもミステリーも書く五代ゆう。
文章も読みやすく巧みな作家だ。

◆関連記事◆
五代ゆうのなんとなく生存報告/著者のブログ
アルチンボルド/仮想美術館
ボルジア家の毒薬/中世の血塗られた史実
リガード・アンティークジュエリーに秘められたメッセージ/ギャラリーオリオン
驚異の部屋/ウィキペディア
クォンタムデビルサーガ アバタールチューナー 1~5/五代ゆう/サイト内

柚木春臣の推理 瞑る花嫁

五代 ゆう 双葉社 2012-02-21
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