だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

おまえさん/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:おまえさん
・著者:宮部みゆき
・定価:文庫 上838円 下838円
・出版社:講談社文庫
・発行日:2011/9/22

◆おすすめ度◆
・江戸時代ミステリー小説度:★★★★
・ユーニークな登場人物たちがアニメチック度:★★★★
・宮部みゆきにかかれば極悪人もいい人に度:★★★★

◆感想◆
「ぼんくら」「日暮らし」に続くシリーズ第3弾。
単行本と文庫本を同時に発行するというびっくり戦略な新刊だ。

物語は、本所深川のぼんくら同心・平四郎や超美形の弓之助、何でも記憶できちゃう三太郎などのシリーズおなじみの登場人物を引き継いで、貧相な男が辻斬りで殺された事件を発端に展開。
出だしは話があっちゃこっちゃして雑然とした感じだったけど、そこは宮部みゆき、あっちゃこっちゃの話がきちんと一つになっていくからさすが。

多くの登場人物の半生をも面白おかしく切なく優しく描ききってしまう丁寧な筆致で、さらにミステリーとしての結末もきっちり。
ちょっと「若い(青い)」感じもする内容だけれど、若い登場人物が多いからしょうがないのか。

それにしても、宮部みゆきにかかればどんな極悪非道な犯罪者もいい人に思えてくるから困っちゃう。
特に男は単純明快なバカだねえ。
もうちょっと後先を考えろって感じ。

逆に女は恐いぞ。
心の奥底にチロチロと嫉妬や妬み、悋気の暗い炎が、いつも燃えているような。
そしてそれを自覚も他覚もしているようで。

著者も女だからねえ。

おまえさん(上) (講談社文庫)

宮部 みゆき 講談社 2011-09-22
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おまえさん(下) (講談社文庫)

宮部 みゆき 講談社 2011-09-22
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同じ中身の小説を、単行本と文庫本を同時に発行するというビックリな戦略。どうやら

予定より3年遅れの刊行で、宮部さんは「本来なら、もう文庫が出ている頃。文庫の読者をさらに3年お待たせするのは申し訳ない」と同時刊行を決めた

そうで、単行本と文庫本、それぞれどのくらい売れるのか興味のある所。

おんなじ大沢オフィースに所属する京極夏彦の「ルー=ガルー2」は、単行本、ノベルス、文庫、電子書籍の4形態で同時に発売するというからビックリくりくり。
形態によって内容とかを変えるってのもありそう?(さなそう)

◆関連記事◆
宮部みゆき 『おまえさん』――井筒平四郎シリーズ第三弾/quiet colors
読書日記64 「おまえさん」/お電話番の日々雑感
大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき公式ホームページ『大極宮』

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ゴーストハント6 海からくるもの/小野不由美

◆読んだ本◆
・書名:ゴーストハント6 海からくるもの
・著者:小野不由美
・定価:1,400円
・出版社:メディアファクトリー
・発行日:2011/9/22

◆おすすめ度◆
・ホラー小説度:★★★
・呪われた一族に襲いかかる不幸度:★★★
・麻衣小活躍/綾子大活躍/かめはめ波でナル超活躍度:★★★

◆感想◆
渋谷サイキックリサーチを尋ねて来た男性は「ただの病気だとは思えないので」といいながら、つれて来た女の子の首の包帯を解きはじめた・・・

のっけからホラーなコーストハントシリーズ第6弾は、日本海を臨む能登半島で料亭を営む旧家が舞台。
昔から代替わりする時に多くの人死にが出たという呪われた一家で、また悲惨な事件が起きようとしている・・・!

過去の出来事や家系、土地柄を調査しつつ、様々な現実の不思な議事件や神仏に関する蘊蓄を絡めて物語は展開。いつものパターンですね。
そして呪いの原因なんかが分かりかけたところで、霊的存在とのゴーストハントな対決が始まる。

今回はシリーズの主役でもあるお茶目な麻衣ちゃんも活躍。
九字を切ったりして、オバケをやっつけたり。
それにも増して大活躍なのが、巫女の綾子。
榊の枝を振るだけで、ひょいひょいと霊を祓う本領発揮。
それでも最後はナルが登場し、かめはめ波な大団円。

ナルの持つ能力が明かされたところで、次はいよいよゴーストハントシリーズの最終巻だ。

ゴーストハント6 海からくるもの (幽ブックス)

小野不由美 メディアファクトリー 2011-09-22
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お茶目な麻衣が使った九字は、神仏の加護によって病魔や災厄を祓い遠ざけるという護身法だそう。
これをマスターすれば、アブナイ人とかも退治できる?
目の前でやれば、アブナイ人も寄ってこなくなるかもしれないが。

◆関連記事◆
「ゴーストハント (6) 海からくるもの」小野 不由美/藍麦のああなんだかなぁ
ゴーストハント6 海からくるもの/気分次第。
ゴーストハント 海からくるもの/読書日記
ゴーストハント5 鮮血の迷宮/小野不由美/サイト内
ゴーストハント4 死霊遊戯/小野不由美/サイト内
ゴーストハント2 人形の檻/小野不由美/サイト内
ゴーストハント1 旧校舎怪談/小野不由美/サイト内

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はやく名探偵になりたい/東川篤哉

◆読んだ本◆
・書名:はやく名探偵になりたい
・著者:東川篤哉
・定価:1,500円
・出版社:光文社
・発行日:2011/9/20

◆おすすめ度◆
・ユーモアミステリー小説度:★★★
・本格っぽい度:★★
・ミステリーな仕掛けより軽妙洒脱な文章で読ませる度:★★★★

◆感想◆
発行から1年が経つのにいまだに売れてる「謎解きはディナーのあとで」。
ビックリですね。
ここぞとばかりに「放課後はミステリーとともに」を発行し、さらに本書で三匹目のドジョウを狙おうという商魂のたくましさ。
著者が振り回されて、へたらないことを祈るばかりです。

そんな本書は前2作と雰囲気が似ている(当然か)本格っぽいユーモアミステリー連作短編小説。
烏賊川市といういわくありげな町を舞台に、自称名探偵の鵜飼と探偵見習いの戸村のへっぽこコンビが、あれよあれよと難事件を解決する!

巧妙に仕掛けられた密室殺人を解き明かし、時速40キロで走行するのトラックで起きた不可能殺人事件を解明し、無くなった7個のビールケースの行方をつまびらかにしたかと思えば、盗まれた宝石を探し出す。

著者はトリックと同じくらい軽妙な会話やユーモラスな描写に力を注いでいるようで。
自分も元々「密室トリック」とかにあんまり興味がないタチだから、トリックの種明かしに「ははあ、なるほど(膝ポン!)」みたいな感動はあんまり覚えないし。
だから東川篤哉が面白く感じるんだなあ。

謎や事件を解明していくへっぽこ探偵コンビの会話や行動がユーモラスでいい。
「これは使える!」なオヤジギャグめいた描写も楽しいぞ。

ミリオンセラーなプレッシャーにへこたれず、この路線のミステリー小説を書いて欲しいぞな。

はやく名探偵になりたい

東川 篤哉 光文社 2011-09-17
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今年の11月には、そのものズバリな「謎解きはディナーのあとで 2」が出版されるようで。

「七つのビールケースの問題」で、突如探偵が「リアリティなんぞクソ食らえってんだぁぁぁーーッ!」と絶叫するシーンがあったりして。

著者がこわれないよう祈るばかりです。

◆関連記事◆
放課後はミステリーとともに/東川篤哉/サイト内
謎解きはディナーのあとで/東川篤哉/サイト内
謎解きはディナーのあとで 2/アマゾン

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約束の方舟/瀬尾つかさ

◆読んだ本◆
・書名:約束の方舟
・著者:瀬尾つかさ
・定価:上720円 下720円
・出版社:ハヤカワ文庫
・発行日:2011/7/25

◆おすすめ度◆
・ジュブナイルSF小説/大人が読んでも面白い度:★★★★
・多世代恒星間航宙船内での冒険/若者たちの活躍度:★★★★
・天真爛漫なヒロインがいいそ!度:★★★★★

◆感想◆
多世代恒星間航宙船の内部に突如出現したゲル状の知性体「ベガー」に、多くの人間が捕食されるという「ベガー戦争」から15年。人間とベガーが和睦したとはいえ、多くの大人がベガーに敵対心を持つのに対し、若い子供たちはベ ガーに友情を感じながら共棲するようになっていた・・・

12歳の少年少女たちが18歳になるまでの、恒星間航宙船内を舞台にしたSF。
ベガーを忌み嫌う大人たちと、ベガーを友人のように感じる子供たちという世代間の対立を軸に、ベガーと人間の共棲社会を目指す子供たちの物語。

ジュブナイルなSFだけど、大人が読んでも十分楽しめる。
爽やかで甘酸っぱい系の成長物語で、カジシンファンには強力におすすめなSFだ。

 ベガーの正体は?
 辛い経験をした少年たちはどう生きるのか?
 誰が味方で誰が敵?

といった謎をはらみながら、友情や冒険、対立や煩悶を経験して成長して行く子供たち。
なんか、いいなあ青春って!みたいな。

さらに物語を強烈に印象づけているのが少女テル。
ベガーをこよなく愛し、天衣無縫でやんちゃだけど身体能力は抜群なお間抜けキャラ。
彼女の魅力が本書の魅力といってもいいくらい。
元気や勇気が湧いて出て、ちょっともの悲しく淋しげだけど、心温まり微笑ましい少女テル。

輝いてるねえ。
読後の余韻が「初恋の味、カルピスの味」みたいなテイストなのは、テルの印象がいいからだろうな。

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

瀬尾 つかさ 早川書房 2011-07-22
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約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)

瀬尾 つかさ 早川書房 2011-07-22
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宇宙服の絶対量が少なくなってしまい、真空の宇宙船内を冒険するにはベガーとシンク(人間が、ゲル状のベガーの中に入り込む)しなければならない。
もう究極の遭遇。第六種接近遭遇みたいな。(第五種接近遭遇は?)
だからこそ言葉が通じなくても分り合えちゃうベガーと人間。
ちょっとエロチックでさえある。

◆関連記事◆
約束の方舟・本日発売/瀬尾つかさのブログ
約束の方舟 上下 / 瀬尾つかさ/FULL MOON PRAYER
適切な舞台を用意すると言う事/瀬尾つかさ『約束の方舟』感想/北へ。の国から

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マスカレード・ホテル/東野圭吾

◆読んだ本◆
・書名:マスカレード・ホテル
・著者:東野圭吾
・定価:1,600円
・出版社:集英社
・発行日:2011/9/10

◆おすすめ度◆
・グランドホテル形式なミステリー小説度:★★★★
・一つひとつのドラマが短編小説のよう度:★★★★
・トレンディドラマを見ているみたいな度:★★★

◆感想◆
暗号めいた数字が残された3件の連続殺人事件。都内の一流ホテルが次の殺人事件の場所と推定した警視庁は、捜査員をホテルの従業員として潜り込ませて事件の解決を図ろうとするが・・・

都内の一流ホテルを舞台にした、グランドホテル形式(正確には事件が同時進行ではなく、連続的に発生)のミステリー小説。
ホテルを利用する様々な客と、それに対応するホテルマンが織りなすドラマが、まるで短編小説のような落ちまで用意されて展開。

 盲目を装ってるぽい老婦人は何を目的に?
 写真の男性を追い払うよう指示する高飛車女の真意は?
 やたらと難癖をつける男性客の動機は?

ホテルには色んな客が来るんだねえ。
さらにこれらの事件が、連続殺人事件に微妙につながっていくという構成だ。


物語の主役は、何事にも誠心誠意真心をこめて対応するベテランホテルマン(女性だからホテルウーマン?)と、フロント役に化けた刑事の2人。
彼らがヘンテコな客たちに対応しつつ、ホテルマンとしての、刑事としてのプロ意識なんかも絡めながら物語は進行していく。

オシャレでハイソな雰囲気が、トレンディドラマを見ているような感じも。
ややステロタイプな登場人物たちも、「TVドラマ化を見据えているから?」なんて勘ぐりたくなる。

それでもちゃーんと、ミステリーな人間ドラマに仕上げちゃってるところが、東野圭吾のすんごいところだ。

3件の殺人事件現場に残された、暗号めいた数字。

45.761871 143.803944
45.648055 149.850829
45.678738 157.788585

これが何を意味するのか、分かっちゃう人は分かっちゃうんだろうね。

◆関連記事◆
「マスカレード・ホテル」東野圭吾/集英社(著者のコメントあり)
『マスカレード・ホテル』 東野圭吾/朴念仁と居候

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サイレント・ブラッド/北林一光

◆読んだ本◆
・書名:サイレント・ブラッド
・著者:北林一光
・定価:743円
・出版社:角川文庫
・発行日:2011/8/25

◆おすすめ度◆
・ホラーなサスペンス小説度:★★★★
・ミステリーな山岳冒険小説度:★★
・不思議な存在感のオババ度:★★★

◆感想◆
失踪した父親の車が長野県大町市で見つかったとの情報を得て、行方を探す手掛りはないかと現地に向かった息子・一成は、深雪という女性と知り合う。彼女の助けを借りながら父親の行方を調べるが・・・

「父親はなぜ失踪したのか? そしてどこへ?」というミステリー小説な展開と、不思議な力を持つ「オババ」や「トンチ」といった登場人物がかもし出すホラーな味わいの小説。

ミステリー小説としてはやや弱いけれども、ホラー小説としてはいい感じ。
物語の舞台が山深い長野県というのもいい雰囲気を出してるし、不思議な力を持っているオババやトンチといった脇役が、存在感ありまくり。
そっちを主役にした方が良かったと思うほどだ。

おまけに手に汗な沢登りのシーンもあったりして、山岳小説なテイストも。
謎が「カクネ里」という聖域っぽい場所に収斂していく設定もいいぞ。
ホラーでサスペンスでミステリーで山岳冒険小説小説という、贅沢な一冊だ。

サイレント・ブラッド (角川文庫)

北林 一光 角川書店 2011-08-25
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著者の北林一光には「ファントム・ピークス」という著書があり、帯には「宮部みゆき氏絶賛」のコピーが。
「どれどれ」と、読みはじめたら止められない。
山と、そこに生きる人間や動物の過酷で壮絶な物語は、昔でいえば西村寿行の動物モノや、最近でいえば熊谷達也の銀狼王、樋口明雄の約束の地に感動した人にはうってつけの小説。

著者には他にどんなのがあるのかと調べたら、なんともうすでに亡くなっているとのこと。
ウーム、無念なり。

と、思っていたら「サイレント・ブラッド」が出版されてちょっとビックリ!

ファントム・ピークス (角川文庫)

北林 一光 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-12-25
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『サイレント・ブラッド』 北林一光/新刊☆文庫小説レビュー
北林一光『サイレント・ブラッド』/Marice in Woderland
ファントム・ピークス(北林一光)/川映本音の和
ファントム・ピークス 北林一光著/きまま仙人の心のスパイス
銀狼王/熊谷達也/サイト内
約束の地/樋口明雄/サイト内

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