だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

デーモン/ダニエル・スアレース

◆読んだ本◆
・書名:デーモン
・著者:ダニエル・スアレース
・定価:上819円 下819円
・出版社:講談社文庫
・発行日:2011/8/12

◆おすすめ度◆
・拡張現実なITサスペンス小説度:★★★★★
・戦闘タイプのMMORPGぐらいバタバタ死んでく度:★★★
・「なんだよ、もう」/あとがきで「もうったら!」度:★★

◆感想◆
天才的なコンピューターゲームの開発者が夭折する。それに合わせたかのように起きる殺人事件。地元警察、さらにFBIまでもが捜査に乗り出す中、とんでもない事件が勃発する・・・

コンピューターゲームが現実世界に侵出したかのような、サスペンスでアクションでITな小説。
天才的ゲーム開発者が作った「デーモン」と呼ばれるソフトが、目的実行のためにあらゆる資源(ネットワークで接続されているあらゆるモノ、人間)を使って、暴力的に、狡猾に、無感情に動き出す。
デーモンというソフトが、まるでネットワークを自分の身体のように自由自在に使いながら、人間相手に戦闘的なアクションを起こす。
それはもう、コンピューターゲームの世界が現実の世界に拡張されたようなイメージ。

デーモンの意図は?
どうやって自動殺戮マシーンは作られ、操作されている?
CIAやDIA、DARPAの情報研究機関をも手玉に取るデーモンの仕組みは?
個人情報を易々とハッキングし、有益な人材をオルグる方法とは?

ITやネットワークやゲーム用語が満載で、マニアは泣いて喜びそう。
デーモンがネットワークを使って世界を支配していく展開も臨場感がある。
アクションゲームさながらの過激な戦闘シーンもハラハラドキドキ。
ラストのアクションシーンは、まるで映画を見ているような盛り上がりだ。


残りページもがわずかになって、どうやって大風呂敷をたたむんだ? デーモンの目的とかがハッキリしてハッピーエンドになるのか? なんてことを心配しながら読んでたら「なんだよ、もう」な残念な結末に。
ちっとも大団円を迎えないじゃん、チェッ! とかいいながら訳者あとがきを読むと「本書の続編「Freedom」で、予想外の展開が読者を待っている」だって。
続編があるならそう言ってくれよ、もうったら!

もうすでに始まっている拡張現実のテクニックや、ネットワークを利用したハッキング技術、あまりにもリアルなMMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)なんかを目にすると、本書の世界がリアルに思えてくる。
ITコンサルタントやシステム開発者として活躍している、著者ならではの迫真の描写だ。

ヘッドアップディスプレイを装着した人がオレのことを見ると、年齢や性別、社会的地位や趣味なんかがポップアップされて、さらに「ちょっとのんびりした人かも」なんていう人物評価な口コミ?まで分っちゃう時代が目前?

◆関連記事◆
「デーモン」/SILENCE SPEAKS
デーモン (ソフトウェア)/ウィキペディア

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11 eleven/津原泰水

◆読んだ本◆
・書名:11 eleven
・著者:津原泰水
・定価:1,700円
・出版社:河出書房新社
・発行日:2011/6/30

◆おすすめ度◆
・不思議テイスト満載小説度:★★★
・ミステリアスでホラー度:★★
・エキセントリックで不条理でデモーニッシュ度:★★

◆感想◆
不思議テイスト満載の、ミステリアスでエキセントリックでデモーニッシュ(カタカナ多いぞ)な短編集。

本の雑誌で二人の書評者がベタ褒めしてたから、どんなものかと久しぶりに著者の本を読んでみることに。
単純明快な小説が好みの自分には、やや面倒くさい短編小説といった印象。
それでもトップを引く「五色の舟」と「延長コード」が★★★★でとっても異次元。

「五色の舟」は、未来を予言するという「くだん」にまつわるSFチックな小説。
フリークスがふんだんに登場するあたり、もう著者の覚悟も見えようという入魂の作だけど、それは「くだん」を登場させる前振りに過ぎない所が破天荒。
「くだん」と戦争は切っても切れない関係なんだね。

「延長コード」は、コードをドンドン繋ぎたしていくラストのシーンが、もうジンジンするくらい秀逸。
たこ足配線用ではないシンプルな延長コード、それを繋ぐところに父と娘の狂気的な人生が垣間見えるよう。

他の短編はいまいちピンとこなかったけど、この本を読んだ人は11の短編小説の少なくとも1編には、ゾゾゾッとする恐怖を味わうこと必須。
眠れぬ真夏の夜にどうぞ。

「くだん」といえは小松左京の「くだんのはは」。
「五色の舟」とちょっとかぶってるけど、恐い小説だったなぁ。
それにもまして恐いのが小松左京の「保護鳥」。
何回読んでも背筋が寒くなる、真夏の夜にぴったりなホラーだ。

◆関連記事◆
『11 eleven』(津原泰水)/馬場秀和ブログ
11 eleven 津原泰水/夜思比売の栞
津原泰水『11』「五色の舟」 夢の岸辺/クーロンパンダ
件(くだん)/ウィキペディア
件(くだん)

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鍵のかかった部屋/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書名:鍵のかかった部屋
・著者:貴志祐介
・定価:1,600円
・出版社:角川書店
・発行日:2011/7/30

◆おすすめ度◆
・密室殺人短編ミステリー小説度:★★
・防犯コンサルタントと女弁護士のコンビ復活度:★★
・納得の展開と解決度:

◆感想◆
「佇む男」「鍵のかかった部屋」「歪んだ箱」「密室劇場」の4編を集録した、「硝子のハンマー」、「狐火の家」に次ぐ密室殺人ミステリー小説。

主人公は美人弁護士の青砥純子と、防犯ショップ店長にして元ドロボーの榎本径という、前作と同じ体裁。
密室で殺人事件が起きて、事件の状況説明があって、青砥純子と榎本径が解決していくというスタイルも前作を踏襲。
ただ部屋の見取り図があったりして、かなり「読者への挑戦状」的だ。
さあ、トリックを見抜いてみろ!みたいな。

でも、読んだ感想は前作と同じかな。

強気で自称美人の青砥純子のジョークは空回りっぽいし、冷静沈着な榎本径にももう少し強い個性が欲しい感じ。
トリックも、死体の×××を利用して密室を作り出したり、部屋の穴から×××で×××したり、×××を×××して×××したりと、密室マニア向け。

そもそもドラマや物語性よりも、密室に代表されるようなトリックを重視する本格推理小説がよく分からない自分には、ちょっと不向きな本格推理小説。

じゃあ、なんで買って読むんだろう?(自問)
著者の新刊は無条件で購入だからな。(自答)

鍵のかかった部屋

貴志 祐介 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-07-26
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「鍵のかかった部屋」ではサムターン回しという開錠テクニックがポイントになるんだけど、最近はバンピングとか溶解破錠という、素人でも簡単に開錠できちゃう方法があるから恐ろしい。

こんなことでは鍵のかかった「密室」が、作れなくなるんじゃないか?
鍵を開けるテクだから、締めるのとは無関係なのか?

◆関連記事◆
貴志祐介『鍵のかかった部屋』特設サイト/角川書店(著者へのインタビュー記事あり)
「鍵のかかった部屋」貴志祐介/雨降りだからミステリでも読もう・・・
硝子のハンマー/貴志祐介/サイト内
狐火の家/貴志祐介/サイト内

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MM9―invasion―/山本弘

◆読んだ本◆
・書名:MM9―invasion―
・著者:山本弘
・定価:1,700円
・出版社:東京創元社
・発行日:2011/7/25

◆おすすめ度◆
・ライトノベルな怪獣SF小説度:★★★★
・正しいSF少年とすれたSFオヤジ向け度:★★★★
・多重人間原理でSFマニアの攻撃回避度:★★★

◆感想◆
宇宙怪獣が地球に襲来!気特対に危機がっ。ヒメはっ! な展開の、「MM9」の続編登場。

前作は連作短編集な構成だったけれど、本書は長編な構え。それも「MM9」の「第二話 危険! 少女逃亡中」に登場した美少女な怪獣「ヒメ」が大活躍の盛り上がりぶり。
早速東京スカイツリーは怪獣バトルの舞台になるし、冷え冷えな先進波メーザーとかMLRS-M31GPS誘導ロケット弾とか、それはもうリアルに大真面目に荒唐無稽な怪獣SFなんである。

おまけにヒメと案野一騎少年のマンガチックでエロチックな接近(小学生男子向き)もあったりして、巨大怪獣大暴れなアクションSFは無垢な小学生とすれたオヤジが楽しめる作風に?

一気に読み終わったあとは、続編「MM9―destruction―」を首を長くして待て!
待てない人は東京創元社の「Webミステリーズ!」で無料先読みだっ。

MM9―invasion―

山本 弘 東京創元社 2011-07-21
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美少女な怪獣「ヒメ」は、日本神話の奇稲田姫なのだそうで、同様に登場する怪獣たちは多重人間原理による「神話宇宙」に属するから、まったくもって物理法則の埒外なんである。
電卓を片手にSFを読む、ハードでマニア、デープでコアな読者を煙に巻く著者の必殺技炸裂。

◆関連記事◆
『MM9―invasion―』/山本弘のSF秘密基地BLOG
『MM9 - invasion -』(山本弘)/馬場秀和ブログ
MM9 -invasion- 山本弘 東京創元社/この世の全てはこともなし
【特別掲載】山本弘『MM9―destruction―』第1回/東京創元社「Webミステリーズ!」
MM9/山本弘/サイト内

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