だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

虚言少年/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:虚言少年
・著者:京極夏彦
・定価:1,700円
・出版社:集英社
・発行日:2011/7/30

◆おすすめ度◆
・小学生の日常度:★★
・起きる事件のくだらなさに笑える度:★★★
・何かの比喩のようだか回りくどくて分らない度:★★★

◆感想◆
小学生3人を主人公にした、ばかばかしい小学生の日常連作短編小説。

なんだか「オジいサン」の小学生版みたいな小説で、お約束とはいえ「こんなにうまく詭弁や虚言を弄する小学生はいないだろう」な小学生3人が、学校で起きる事件をいかに面白おかしく笑い飛ばそうかとする?小説。

著者の小説はそのくどさやねちっこさが持ち味だけど(京極堂シリーズはそれが醍醐味だったな!)、本書や「オジいサン」はやや空回り気味。
それでも「お楽しみ会」とか「運動会」とか「コックリさん」とかを題材に、超くだらない日常的笑いを巧みに醸成して落とす構成は見事。

上手だけれどマニアック過ぎる?
何かの比喩のようにも読めるが、回りくどくてよく分らない?


小学生が大人の言葉を知っていたら、きっとこんな風なんだろうなあ。
ということは、歳をとればそれなりに語彙は豊富になるけれど、思考内容は小学生のソレと変わらないのかもなあ。
なんてゆう風な感想も。

虚言少年

京極 夏彦 集英社 2011-07-26
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「ストリーキング」とか「中岡俊哉」なんていう昭和なキーワードに反応する年代の方には、自分が小学生だった頃をだぶらせながら読んだりもできる。
やだやだ、歳とりたくないっ。

◆関連記事◆
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チヨ子/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:チヨ子
・著者:宮部みゆき
・定価:476円
・出版社:光文社文庫
・発行日:2011/7/20

◆おすすめ度◆
・ホラー&ファンタジー短編小説度:★★★
・久しぶりにうすら恐い宮部みゆき度:★★★
・「聖痕」は現代の神創成録度:★★★★

◆感想◆
五つの短編をおさめたホラー&ファンタジー小説集。
ファンタジックでハートフルな小説が多い著者の近作の中で、うすら恐くてシリアスタッチな宮部みゆきも堪能できる異色作的な短編集。

着ぐるみを着ると、周りの人が??に見えてしまい…という「チヨ子」と、娘の探偵ごっこに付き合わされたはずの父は…という「いしまくら」は、どっちかというとファンタジックでほんわかムードな小説。

亡くなった小学校時代の同級生が…という「雪娘」と、商店街のオモチャ屋に幽霊がでるという噂が…という「オモチャ」は、淋しく悲しくゾクゾクなホラー小説。

最後の「聖痕」は現代の神創成録な物語で、病んでるネット社会を背景にしたダークな「神話」といった趣き。
現代の日本では「神」はこうやって生まれるんだねえ。
コワッ。

チヨ子 (光文社文庫)

宮部 みゆき 光文社 2011-07-12
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宮部みゆきが所属する大沢オフィスの公式ホームページには、著者が着ぐるみ姿で「チヨ子」を朗読している写真が!
「カワイイ」というよりちょっとホラー!?

◆関連記事◆
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ゴーストハント5 鮮血の迷宮/小野不由美

◆読んだ本◆
・書名:ゴーストハント5 鮮血の迷宮
・著者:小野不由美
・定価:1,350円
・出版社:メディアファクトリー
・発行日:2011/7/15

◆おすすめ度◆
・ゴシックホラー小説度:★★★
・本編も恐いが小ネタも恐い度:★★★★
・新たな登場人物で役者そろい踏み?度:★★★

◆感想◆
増築を繰り返し、まるで迷路のようになった洋館。そこで人が消えるという事件がおきる。様々な霊能者が招集され調査される中、あらなな事件が…

ゴーストハントシリーズの第4巻は、半ば廃墟と化したとてつもなく大きな洋館が舞台。なにしろ長年にわたって無茶苦茶な増築をしたため、迷路のような構造になってしまっているという。(「シャイニング」ぽい)
消えた人を捜すためにいろんな霊能者が様々なことをやってるうち… という展開は、ラストに近づくほどおどろおどろしくなるんだけれど、それにも増して恐いのは作中で引き合いに出される小ネタ。

ウィンチェスター銃によって殺された人々の霊からのがれるため、屋敷の部屋を朝から晩まで増築し続けたというウィンチェスター家のサラ婦人。
歳若い娘を「鉄の処女」で殺しその血を浴びたりして興奮したという「血の伯爵夫人」の異名を持つハンガリー王国の貴族。

実に恐ろしいのは何かに取り憑かれた人間なり。


本編では、いつも優しい笑顔なにのナルをあごで使う森まどかという新たな登場人物が加わり、さらにリンの本名は「林興徐」で霊を使役する技を持っていたり(「十二国記」ぽい)と、シリーズの大団円にむけて役者そろい踏み?

ゴーストハント5 鮮血の迷宮 (幽BOOKS)

小野不由美 メディアファクトリー 2011-07-13
売り上げランキング : 104
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子供のころ、家の近くに「幽霊屋敷」なるもながあって、よく友達と近くに行っては中を覗いて逃げたりしていた。 ちょっと大きくなってから「幽霊屋敷」を見ると、それはもう本当にタダの空家で、ちっとも恐くもなければ覗きたくもないうらぶれた民家。

大きくなるって言うのは感情が萎んでくるということなんだなあ。
喜怒哀楽センサーを敏感にしとかないと、幽霊が怖くなくなってしまうぞ。

◆関連記事◆
ウィンチェスター・ミステリー・ハウス/ウィキペディア
「血の伯爵夫人」/ウィキペディア
風狂者の建物~狂気と執念がもたらした創造物~/不気味で神秘的な話
「ゴーストハント (5) 鮮血の迷宮」/藍麦のああなんだかなぁ
ゴーストハント5 鮮血の迷宮/小野不由美/腐女子の読書記録。
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ゴーストハント2 人形の檻/小野不由美/サイト内
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児童・少女向けファンタジー読み比べ/サイト内

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はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか
・著者:篠田節子
・定価:1,476円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2011/7/10

◆おすすめ度◆
・ちょっとヘンテコなSF短編小説度:★★★★
・シュールでブラックな近未来度:★★★★
・お笑い/ホラー/ドタバタ度:★★★★

◆感想◆
高性能の猿型ロボットにつきまとわれる女性の恐怖とドタバタをコミカルに描いた表題作をはじめ、ちょっとヘンテコなSF短編小説集。
篠田節子、たまにヘンテコなSFっぽい小説を上梓するが(「転生」とか「斎藤家の核弾頭」とか)、本書もシュールでブラックなんだけどちょっと笑ってしまうようなヘンテコSF。
表題作の他には
レアメタルが体内に濃縮されたウナギの目が、赤く光って気持ち悪い「深海のEEL」。
マンションを建設しようとしたら人骨がわんさか出てきて困ったこまったな「豚と人骨」。
63年がかりでトンネルを掘削する男の悲喜こもごもな「エデン」。

どれも独特のテイストがあっていい感じ。
先の読めないスピディーな展開も巧み。
科学文明の批判とも読めるけど、そんな深刻に考えるより「うひゃひゃ」と笑って埋めもどしたい短編集だ。

はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか

篠田 節子 文藝春秋 2011-07
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「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の、「深海のEEL」は「深海のYrr」のパロディというのはすぐ分るけど、「豚と人骨」と「エデン」の原題が何なのか、寡聞にしてわからず。
ササッと分るくらいにいっぱい本を読んでると、かっこいいよなぁ。
ただ自慢げに言える、ってだけだけど。

◆関連記事◆
転生/篠田節子/サイト内
理科の匂いのする作品集~『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』/WEB本の雑誌

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サヴァイヴ/近藤史恵

◆読んだ本◆
・書名:サヴァイヴ
・著者:近藤史恵
・定価:1,400円
・出版社:新潮社
・発行日:2011/6/30

◆おすすめ度◆
・自転車ロードレースなサスペンス小説度:★★★
・スポーツものはスカッと爽やかとは限らない度:★★★★
・癖のある石尾豪が魅力的度:★★★

◆感想◆
サクリファイス」「エデン」に続くシリーズ最新作。

といっても短編集です。
ですが、団体競技であるロードレースにおいて、「アシスト」とはどういう役目でどのような達成感ややりがいや屈折した思いがあるのか、というシリーズを貫くテーマは本書でも色濃く見られる。

ついてに、ツポーツ小説というと正義感や友情などを描いていて読後もスカッと爽やか!なものだという期待をいなし、嫉妬やダメダメ人間な展開も印象的。

そうだよねえ。
スポーツ選手全員がルールを遵守して、清く正しいプレーをするとは限らない。
汚い駆け引きや反則ギリギリ(あるいは反則)な技?を使って、対抗する選手を蹴落とそうとしたりするのは当たり前。
人間の闘争本能は、ほっとけばドンドンイケナイ方向にエスカレートするんだろうな。
へたすればそれが自分自身へも向いてきてしまうんだろうなあ。
なんて感想を抱かせる短編集。

「プロトンの中の孤独」「レミング」「ゴールよりももっと遠く」に登場する石尾豪も魅力的。
屈折しているけど、屈折しているからこそ虹色に光る、みたいな。
(決まったぜ! 決まってない?)

サヴァイヴ

近藤 史恵 新潮社 2011-06
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高校野球の開会式での選手宣誓。
「宣誓、我々選手一同は、スポーツマンシップに則り、正々堂々、戦うことを誓います」
なんていうのが一頃は定番だった。
穿った見方をすれば、「こんな宣誓をしなければ正々堂々と戦えないのか?」ということだよなあ。

◆関連記事◆
サヴァイヴ 近藤史恵 新潮社/ミユウのいろいろ日記
どん底の苦しみの中、「生き抜く」ということ 栗村 修/新潮社 波 2011年7月号より
サクリファイス/近藤史恵/サイト内
エデン/近藤史恵/サイト内

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我が家の問題/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書名:我が家の問題
・著者:奥田英朗
・定価:1,400円
・出版社:集英社
・発行日:2011/7/10

◆おすすめ度◆
・小市民家族短編小説度:★★
・我が家の危機的問題勃発度:★★
・小さな問題、大きな幸せ度:★★★

◆感想◆
ごく一般的な家族に起きる小さいけれども大きな問題をテーマにした、家族小説集。

面倒見のいい妻がうっとうしく思える夫だったり、両親が離婚の危機にあるのを知ってしまった娘だったり、UFOと交信できるようになった夫を心配する妻だったりが主人公の短編集。
結婚したてから15年目くらいまでの男女が読者ターゲットか。

他人から見れば、「なんだ、それくらい」と思われることでも、家族にしてみれば大問題。
ビックリしたりおののいたり心配したりと大騒ぎ。
そんな様子をユーモアとペーソスを交えて描写。

家日和」の著者らしく、なにげないところに幸せが転がってるんだと思わせる、ほんわかした物語。

平和だなあ。

我が家の問題

奥田 英朗 集英社 2011-07-05
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地方によって料理の仕方や材料が微妙に変化。
「我が家の問題」の中の「里帰り」では、妻の実家に里帰りした夫を客にして、すき焼きにタマネギを入れるか入れないかのダラダラとしたすき焼き談議が。

このまったりした虚無感。
奥様の喫茶店お勘定「ここは私が」「いえいえ今回は私が」みたいなエンドレス会話な風景が、とてもよく描かれてます。

ちなみに我が家ではすき焼きにタマネギはいれまん。

◆関連記事◆
我が家の問題/集英社 WEB文芸(インタヴュー記事あり)
「我が家の問題」書評/WEB本の雑誌
奥田英朗 我が家の問題/本とテレビと映画のブログ
家日和/奥田英朗/サイト内

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