だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

死ねばいいのに/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:死ねばいいのに
・著者:京極夏彦
・定価:1,700円
・出版社:講談社
・発行日:2010/5/15

◆おすすめ度◆
・暴かれる人間の本性度:★★★★★
・健也は善人なのか?度:★★★★
・亜佐美は幸せなのか?度:★★★★

◆感想◆
世間知らずで口のきき方も知らない青年・渡来健也。殺された知人・鹿島亜佐美のことを知りたくなって、彼女の関係者に会いに行くが・・・

亜佐美の会社の上司、マンションの隣人、母親等々に会いに行き、亜佐美がどんな女性だったのか訊こうとする健也だが、そこには自分の不平不満や鬱憤を吐露する人ばかりがいる。

合計5人の関係者に健也は会うのだが、いずれもはじめは健也の非常識で世間知らずで粗野な口のききかたに嫌悪感・優越感・苛立ちめいた感情を持つが、しだいに話すうちに健也の飾らない思考に打ちのめされていく。

ああ、なんか京極夏彦は純文学の世界に踏み込んでいるなあ。

虚飾を排すると浮き上がる人間のエゴと醜いプライド。
小賢しく小狡く、自分の都合のいいように物事をねじ曲げてしまう人々。

世間知らずで口のきき方も知らない青年・渡来健也を、枠に嵌った常識やありきたりのモラルに縛られない存在とすることで、亜佐美の関係者(上司とか隣人とか母親とか)のエゴを浮き彫りにして行く。

ドストエフスキーにインスパイアされているようなテーマで、小暮写眞館の逆をいくような登場人物で、映画・羅生門のように面白い。

健也の台詞にカタルシスを覚えるが、うかうかしていると「死ねばいいのに」と言う立場から「死ねばいいのに」と言われる立場になっちゃうから、善く生きないとあかんなあ。

死ねばいいのに
死ねばいいのに
おすすめ平均
starsちょっとガッカリちゃん
starsタイトルにだまされるな

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宮部みゆきの「小暮写眞館」と京極夏彦の「死ねばいいのに」。
同じ出版社で同じ日に発行されてるし、方や人間の良いとこ取りのような登場人物たち、方や人間の汚らしいとこばかりの登場人物たち。

宮部みゆきと京極夏彦の連係プレイ?
大沢オフィスだし。

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小暮写眞館/宮部みゆき/サイト内

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小暮写眞館/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:小暮写眞館
・著者:宮部みゆき
・定価:1,900円
・出版社:講談社
・発行日:2010/5/15

◆おすすめ度◆
・著者得意のほっこり人情物語度:★★★★★
・不思議な心霊写真が発端度:★★★★
・人が人を想う気持ち度:★★★★★

◆感想◆
下町の写眞館をそのままの状態で購入した花菱一家。レトロな雰囲気をいたくお気に入りの父親であったが、息子の英一は両親の変人ぶりを再確認するのであった・・・

シャッター通り商店街の店舗付き住宅。その店舗部分が「小暮写眞館」。
そこに越してきた花菱一家の長男英一が主人公だ。
ひょんなことから「心霊写真」にまつわる謎を調べることになって、それを英一の高校生の友人や、写真館を仲介した動産屋やなんかを伝に解き明かすと、心にズンとくる結末があって、という宮部みゆきお得意の物語。

同じような物語を読むと、普通は「またかよ」とややげんなりするんだが、宮部みゆきの場合は安心して読める感じ。期待を裏切らないみたいな。

そこにはやっぱり抜群な人物描写が影響している。
純真無垢な少年を描かせたらピカイチだし。
本書にも英一の弟(光、小学生)が登場するんだが、これが「天才バカボン」のハジメちゃんみたいに賢くてかわいらしい。

「小暮写眞館」と「心霊写真」をかけたり、今は亡き「小暮写眞館」の主人と幼くして夭折した花菱家の長女をつなげてみたりと、展開も巧み。
心霊写真の謎は、ミステリー的な解決ではなく「心」で解決。
なんでそんな不思議な写真ができあがったのか、登場人物の内面を描写することで読者を納得させて、物語を解決させてしまうという。

世の中には不思議なこともあるんだよ。
(京極夏彦の逆バージョンだな)


1005171313.jpg
小湊鉄道 飯給駅/姉崎機関区

ほっこりした展開ばかりではなく、最後の方ではスリリングなシーンもあったりして気が抜けない。
そんな緊迫した場面ものどかな写真で弛緩させる落ちを用意して、もううまいったらないんである。


小暮写眞館 (100周年書き下ろし)
小暮写眞館 (100周年書き下ろし)宮部 みゆき

おすすめ平均
starsもやもやする・・・・。
stars久々に泣けた作品です
stars本当に真っ当な小説
starsさすがの文章力だが饒舌すぎるところも
starsこれは青春小説?盛り込みすぎです

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◆関連記事◆
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小暮写眞館 宮部みゆき 講談社/ミユウのいろいろ日記

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殺戮ゲームの館/土橋真二郎

◆読んだ本◆
・書名:殺戮ゲームの館
・著者:土橋真二郎
・定価:上550円 下550円
・出版社:メディアワークス文庫
・発行日:2010/3/25

◆おすすめ度◆
・密室で行われる殺人ゲーム度:★★★★
・疑心渦巻くハラハラドキドキのサスペンス度:★★★★
・何をどうしたら助かるのかのサバイバルゲーム度:★★★★

◆感想◆
オカルトサークルに所属する11人のメンバーは、集団自殺の現場となった廃墟を興味本位で探そうとするが・・・

「そして誰もいなくなった」風な密室殺人劇。
廃墟に閉じ込められた11人が、得体の知れないゲームに参加させられ、ひとり、またひとりと殺されて行く。
いったい誰が犯人なんだ? またその目的は?
誰が犯人なのか分からない疑心暗鬼の中で、仲間を疑う気持ちや恋人を守ろうとする想いなどが渦巻く人間劇。

設定は類型的で新鮮さはないけれど、犯人探しや生き残り方法を、ゲームとしてに特化させたところが面白く読める理由か。
ロジカルに犯人を推理する過程や、得体の知れない主催者側が用意した仕掛けが面白いぞ。
フロイトを引き合いに出して心理描写をしたり、ゲーム理論や「カルネアデスの板」などの道徳心理学なんかもちょろっと挟み込んで物語に奥行きを持たせているのもいい感じ。

「殺戮」と冠しているけれどむごたらしいシーンは無いし、決着のつけかたも合格点?

殺戮ゲームの館〈上〉 (メディアワークス文庫)
殺戮ゲームの館〈上〉 (メディアワークス文庫)
おすすめ平均
starsタイトルにつられて・・・☆
stars面白かったんですが
starsデスゲーム
stars脅威の心理戦

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殺戮ゲームの館〈下〉 (メディアワークス文庫)
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主人公が恋人の女性の非論理的なところを嘆く独白に、思わず笑ってしまう。

『髪を切ったことに気づかなければ不機嫌になり、言動は非論理的、星占いの結果を遵守し、体重を気にしながら甘いものを食べるという背反行為、くだらない記念日を作りカレンダーを混乱させ、メールの返事が遅いと怒り、ディズニーランドが好きで、ギャンブルに不理解、感情的で最終的には泣けばいいと思っている・・・』

その通り!
でもそのまま言うと、10倍の言葉でなじられた上に皿が飛んでくるぞ!!

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