だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

単純な脳、複雑な「私」/池谷裕二

◆読んだ本◆
・書名:単純な脳、複雑な「私」
・著者:池谷裕二
・定価:1.700円
・出版社:朝日出版社
・発行日:2009/5/15

◆おすすめ度◆
・ミステリーよりミステリアスな脳度:★★★★★
・SFよりもワンダーな脳度:★★★★★
・脳って身体的で素直で自己中心的度:★★★★★

◆感想◆
これは面白い!
薬学博士にして脳研究者の著者が、高校生を対象に語った脳の話しなんだけど、とてつもなくスリリングでワンダーでミステリアス。

巷では脳科学大流行りだけど、こうやってきちんと体系づけて、さらに高校生にも分かる平易な内容で脳の機能を説明されると、ホンマでっか!?な話しも納得しちゃうってもんだ。

たとえば恋愛感情がある理由は「私はこの人が一番好き!」と自分を納得させるためだとか、幽体離脱を生じさせる脳部位があるとか、実際に動く前に動いたと感じるとか・・・
なんでそうなるのか内容を読むと、「ははーん、なるほど」って思っちゃう説得力。

その根底には、身体という感覚器官からの情報にゆらぎというノイズを加えることで、生き残るのに適した反射的行動をとるよう進化してきた経緯があるということ?
うーむ。
生物生存機械論みたいな感じかな。

時間も空間も、自分の都合に合わせるように感じる脳。
脳のキャパシティを超えたものは、とりあえず棚上げしたり神格性を持たせたりしてうっちゃっとく都合の良さ。

脳ってけっこう自己中だ。




脳の「ホンマでっか!?」な機能が分かっても、普段の思考内容一向に変わらない自分の脳。
うーむ。
もうちょっと、アカデミックというか高尚なことを考えられんのか、俺の脳は。

◆関連記事◆
池谷裕二のホームページ
ピンク色の斑点が消える不思議な錯視/朝日出版社特設サイト
色の先取り(未来を見る脳)/朝日出版社特設サイト
単純な脳、複雑な「私」 [著]池谷裕二/asahi.com(朝日新聞社)
「脳をハックする」ための最高の入門書――『単純な脳、複雑な「私」』/シゴタノ!
NOのNOは脳 - 書評 - 単純な脳、複雑な「私」/404 Blog Not Found
これ必読でしょう 『単純な脳、複雑な「私」』/Biiingo!!

単純な脳、複雑な「私」
単純な脳、複雑な「私」
おすすめ平均
starsまともな研究者育成のために...
stars科学する先輩、後輩の楽しい交流
stars新入社員に配ろうと思います。
stars「脳本」では出色の出来では
stars無意識を見える化していくと

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リミット/五十嵐貴久

◆読んだ本◆
・書名:リミット
・著者:五十嵐貴久
・定価:1.600円
・出版社:祥伝社
・発行日:2010/3/20

◆おすすめ度◆
・時限式サスペンス小説度:★★
・ラジオの深夜放送の力度:★★
・これからどうなるハラハラドキドキ度:★★★★

◆感想◆
シニカルでブラックな人気お笑い芸人の奥田雅志。彼がパーソナリティのラジオ深夜放送に自殺予告のメールが届く。だのいたずらなのか、本当の自殺予告なのか。放送局ディレクターと奥田の熱い葛藤が始まる・・・

器用さではぴか一の作家五十嵐貴久。どんなテーマでも面白い小説にしてしまう手腕は素晴らしい。
読みはじめると最後まで止められない巧さだ。

本書は、奥田雅志のラジオ番組が終わったら自殺するというメールが事件の発端。
メールはいたずらなのか?
もし本当の自殺予告メールだったら?
これから死のうとしている人を放置していいのか?
番組のディレクターや局の幹部、パーソナリティの奥田雅志達のドラマチックな人間劇が展開させる。
やや強引な展開やステロタイプな登場人物の描写に難はあるが、「一体これからどうなるっ」な興味でドンドコ読み進み、翌日は寝不足な一日なのであった。

リミット
リミット
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おすすめ平均 star
star私はあり!
star同じシーンの繰り返し
starサクサク読めました

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本の内容とは全然関係ない火事騒ぎをひとつ。

先日昼間に部屋でぼんやりしていると、やけに外が騒がしい。
救急車とか消防車のサイレンが、引っ切りなしなんである。
何事かと思いマンションのベランダから外を見ると、消防車や救急車が数十台。
パトカーもいれば工事用車両まで出動してる!
下の方を見ると、消防士が俺を見上げている。
「???」
おれに用事か?とか不思議に思いながら上の方を見ると、高層階に梯子車の先端が近づき、その先のマンションの壁には、なんとレスキュー隊員が壁を横に移動している!

おおっ!
命綱も着けずにマンションの高層階をベランダからベランダへ移動する消防隊員!
見ているだけでスリスとサスペンスだ。

結局、どこにも火災は発生しておらず、誤報とのこと。
命綱も着けずにベランダからベランダへ移動する消防隊員は、いったい何をしていたんだ?

という一瞬「タワーリング・インフェルノ」なお話でした。


◆関連記事◆
「リミット」 五十嵐 貴久 著/本の虫
「リミット」 五十嵐貴久/クルトンパパのいろいろ日記
「リミット」五十嵐貴久/図書館で本を借りよう!~小説・物語~
『リミット』 五十嵐貴久/わたしの読書録

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冥談/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書名:冥談
・著者:京極夏彦
・定価:1.380円
・出版社:メディアファクトリー
・発行日:2010/3/5

◆おすすめ度◆
・怖い恐い話し度:★★
・形而上的幽霊談度:★★
・身体的恐怖談度:★★

◆感想◆
八つの怪談話し短編集。
メディアファクトリーからは「幽談」という短編集が出版されていて、それとよく似た内容だ。
幽談」はけっこう面白かった記憶があるんだが、本書はいまいち面白くないぞ。
なんでだろう?

あまりにも「怖いぞ怖いぞ」というのが全面に出過ぎでシラケたから?
前振りがくどくて長過ぎて、全部伏線みたいだから?
不条理なままでいい話しを、なんとなく理屈付けしたがってるから?

本の装丁と同じように、ちょっと凝りすぎなのではないかと。
「恐怖」を演出しようとしすぎではないかと。

アルバイトが沢山動員されてる「お化け屋敷」みたい?


「?」多すぎ?

1003161447.jpg
本より怖い「冥談」のPRビデオ

「本」に対する著者のこだわりは、本書でも遺憾なく発揮されている。
なんたって文字がぜーんぶ紫色なんである。

色付き文字で思い出すのは筒井康隆の「エディプスの恋人」。
黒澤明の「天国と地獄」という映画で使われたパートカラーみたいな演出で、はじめてこれを読んだ時は、けっこうショッキングだったなあ。
「活字というのは物語の内容を伝えるだけじゃないんだ!」膝ポン!みたいな。

◆関連記事◆
冥談 / 京極夏彦/いつも読書人
読書日記12「冥談」/お電話番の日々雑感
『冥談』/京極夏彦/蒼のほとりで書に溺れ。
京極夏彦/「冥談」/メディアファクトリー刊/ミステリ読書録
幽談/京極夏彦/サイト内

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アホの壁/筒井康隆

◆読んだ本◆
・書名:アホの壁
・著者:筒井康隆
・定価:680円
・出版社:新潮新書
・発行日:2010/2/20

◆おすすめ度◆
・アホの文明評論度:★★★★
・アホの人間論度:★★★★
・アホの精神分析論度:★★★★★

◆感想◆
「人間は考えるアホである。」のキャッチコピーが素晴らしい、筒井康隆のアホ論。
人間や人類のアホさを、主に精神分析的に解いた人間論。こんな書名でこんな内容の評論を書けるのは筒井康隆しかいないっ!
ステキだ。
笑えるし、感心するし、納得するし。

内容は目次を見るとおおよそわかるしくみ。
序章 なぜこんなアホな本を書いたか
第1章 人はなぜアホなことを言うのか
第2章 人はなぜアホなことをするのか
第3章 人はなぜアホな喧嘩をするのか
第4章 人はなぜアホな計画を立てるか
第5章 人はなぜアホな戦争をするのか
終章 アホの存在理由について

アホとは書いているが、「馬鹿げた」「大人げない」「狂気の」と言い換えてもいいんじゃないかという真っ当な内容。 それでも著者のこと、「強迫観念症」「焦点的自殺」「失錯行為」「同種既存」といった精神分析的な用語を用いて(これがなかなか刺激的)、口の悪い年増女や無益な喧嘩諍いをおこす男やアホな戦争をする人間どもをバッサバッサと切り捨てるっ!

おもしろいなあ。痛快だし。

読んでると「いるいる、こうゆう変なヤツ!」「アホだよねぇ、もうちょっと頭使えっていうの!」とか思っちゃうんだけど、自分のアホなことには目が向かないのが人間の習性?
人のアホは見えるけど、自分のアホは見えないのね。
ま、だからのんびり幸せに暮らせるんだろけど。

エリス ギリシア神話
トリックスターなエリス/ウィキペディア

それでも本書の最後は「アホ万歳」の一言。
だって著者は筒井康隆だもん。

◆関連記事◆
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アホの壁 (新潮新書)
アホの壁 (新潮新書)
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スターバト・マーテル/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:スターバト・マーテル
・著者:篠田節子
・定価:1,600円
・出版社:光文社
・発行日:2010/2/25

◆おすすめ度◆
・辛口恋愛小説度:★★
・タナトスな愛度:★★
・美人で家事も仕事もできる新妻、当面はいいなりな夫度:★★

◆感想◆
乳癌の手術を受けた彩子は、生に対してどこか醒めた感覚を抱いていた。そんな折り、30年ぶりに偶然会った中学時代の同級生光洋に、自分と似た醒めた雰囲気を感じて・・・

表題作「スターバト・マーテル」と「エメラルド アイランド」の二編をおさめた恋愛小説。
恋愛小説といても篠田節子だから、ちょっと味付けが辛口でオトナ風。

「スターバト・マーテル」は、乳癌の手術を経験した主人公の、生きることに執着しない、醒めた感覚がテーマ。
久しぶりに会った同級生の光洋にも、おなじ匂いをかいだ主人公が、しだいに彼に惹かれていき・・・といった展開。
途中国際謀略小説風なシーンもあたりして、ドンドコ変な方向に進むのかと思ったが、初心貫徹な結末に。
ちょっと物足りないような。

もう一つの「エメラルド アイランド」は、今風な若者カップルの新婚旅行が舞台。
南の美しい島で過ごす予定の二人とその母親や友人に、とんでもない事件が。
きれいでそこそこ家事もできて仕事もこなせる若奥さんと、わがまま?な妻を許しちゃう夫。新妻の厳格なママや得体の知れないサラリーマンなどの脇役をコミカル&シリアス&スリリングに描写した小説。

雰囲気の違う二編だけど、お気楽な恋愛小説ではないのは確か。
著者の「純愛小説」「秋の花火」系の恋愛小説に共感できる方向けか。
自分は「仮想儀礼」みたいなヘンテコなのが読みたいけど。


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幻日/ウィキペディア

「スターバト・マーテル」にはちょっとエッチなシーンもあったりして。
でもログハウスの相部屋で、このシーンは無理があるじゃないか?
それとも相部屋だからこのシーンなのか?

スターバト・マーテル
スターバト・マーテル篠田 節子

おすすめ平均
starsシリアス劇とドタバタ劇と
stars秀逸ですが…‥優等生の恋愛?
stars大人向け作品。
starsまあまあ面白かったです!

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ボクハ・ココニ・イマス 消失刑/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:ボクハ・ココニ・イマス 消失刑
・著者:梶尾真治
・定価:1,700円
・出版社:光文社
・発行日:2010/2/25

◆おすすめ度◆
・ファンタジック恋愛小説度:★★
・絶対的な孤独とは度:★★
・ロマンチックが止まらないっ度:★★★★★

◆感想◆
傷害罪の実刑判決を受けた朝見克則は、比較的受刑期間の短い者へ試用される「消失刑」を受けることにする。それはある程度の自由が与えられる代わりに、あたかも自分の存在が消失したかのような刑であった・・・

ついこないだカジシンの新刊「メモリー・ラボへようこそ」を読んだばかりなのに、また新刊が読めるっ うれしい!

本書のキモは消失刑という刑罰の内容。
許可されているエリアなら自由に行動でき、刑期が終了するまでどのように過ごしてもかまわない。しかし、人に近づくことはもちろん、会話や電話やパソコンなどでコミュニケーションをとることが禁止され、さらに首にはめたリングにより人から見えなくという。
まるで存在しない人間になってしまったような刑なのだ。

この受刑期間中に主人公が感じる絶対的な孤独感。
そして後半に起きるファンタジックな展開。

カジシンワールド全開だ!

ハードボイルドな男性読者からは「少女趣味のB級ファンタジーじゃん?」とか言われそうだし、鋭いミステリー小説ファンからは「とってつけたような伏線と展開だね」などと冷やかされそうだが、それでもカジシンだからいいんである。
前半のとてつもない孤独に陥る主人公のいたたまれなさと、とんでもないトラブルを契機として展開される後半のドキドキ。
ロマンチックが止まらない!
笑っちゃうくらい甘あまなんである。

「クロノス・ジョウンターの伝説」が傑作と思う方は是非!

ボクハ・ココニ・イマス 消失刑
ボクハ・ココニ・イマス 消失刑

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「ロバート・シルバーバーグという作家が考えた”無視刑”をヒントにしたものです」云々というセンテンスが本文に。 おお、なんかこっちも読みたくなるぞ。

と思ったら、むかしのテレビドラマ「トワイライトゾーン」の原作のようだ。
見ると著者がインスパイアされるのも納得のドラマ。
でも「消失刑」の方が数段厳しい設定だな。


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トワイライトゾーン 14/54

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