だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

キケン/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:キケン
・著者:有川浩
・定価:1,400円
・出版社:新潮社
・発行日:2010/1/20

◆おすすめ度◆
・アニメのりの青春小説度:★★
・愉快な仲間達度:★★
・ハチャメチャ度:★★

◆感想◆
機械制御研究部(略称機研:キケン)に所属する男子大学生を主人公にした、ハチャメチャ青春小説。

爆弾作りが趣味のユナ・ボマー上野のトンデモぶりや、迫力は学内随一の大神が失恋した話しとか、マイナーなロボコンコンテストで度肝を抜く作戦でみんなを驚かせ、学園祭で後々語り継がれるような模擬店を運営したりと、「俺たち青春まっただ中だぜ!」な連作短編小説。

うーん、ちょっとおじさんにはライトンベル過ぎるか。
読者ターゲットは女子中校生のようだし、イラストもマンガだし。

それでもクイクイ読ませるのはさすが。
今乗りに乗ってる作家らしい勢いがあるなあ。
著者のファンはお見逃しなく。
そうでない方は巨大ザリガニパニックSF?の「海の底」をおすすめ。

キケン
キケン
おすすめ平均
stars一切手抜きなし!! ”本気で”遊ぶということ
stars全力で突っ走りギリギリでかわす
stars読むしかないっしょ

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上野のあだ名となってるユナ・ボマーはアメリカ史上最もインパクトのある爆弾魔。
1978年5月から1995年にかけて、全米各地の大学と航空業界関係者に爆発物を送りつけ、3人が死亡、29人以上が重軽傷を負った事件を起こしている。

なんか、本書の内容より、IQが175で16才でハーバード大学に入学するような天才的な数学者の方に興味津々。
いったいどんな思想の持ち主なんだろう。

顔写真を見ると、キケンの主役「ユナ・ボマー上野」の好青年ぶりとはだいぶ違うぞ。あたりまえだけど。

ユナボマー 爆弾魔の狂気―FBI史上最長十八年間、全米を恐怖に陥れた男ユナボマー 爆弾魔の狂気―FBI史上最長十八年間、全米を恐怖に陥れた男
田村 明子

ベストセラーズ 1996-08
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◆他サイトの感想◆
ペンギンウォーク
ぽぽの“お気楽”に本を読む
怪鳥の【ちょ~『鈍速』飛行日誌】

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巡礼/橋本治

◆読んだ本◆
・書名:巡礼
・著者:橋本治
・定価:1,400円
・出版社:新潮社
・発行日:2009/8/25

◆おすすめ度◆
・ゴミ屋敷の主の半生度:★★★★
・この世に生まれ、生きる意味度:★★★★
・橋本治、歳とったなぁ度:★★★★

◆感想◆
ゴミ屋敷の主となった男の半生と、生きることの意味を考えさせる物語。

小説家というより思想家といった方がいいんじゃないかと思う橋本治。
久しぶりに読んだ本書は、著者にしては比較的平易な文章。主人公もゴミ屋敷の主だし、なんか一般受けしそう。
しかし読み進めると、けっこうディープな内容だ。

ゴミ屋敷の主となった男の現在の物語と、戦後の日本が復興して行く中で育ったゴミ屋敷男の過去の物語が、交互に描写される。

そこから浮き上がってくるのは、意味のないことだと分かっていながら、ゴミを集めざるを得ない男の恐怖心と逃避。
時代に流され、またうまくいかない人間関係の中で、何かを得ようとして、そして何かを捨てられないがために築かれるゴミの山。

主人公と同世代の読者は、一種の恐怖を感じるかもしれない。
生きている証の象徴が「ゴミ」というのは怖い設定だ。

こうゆう捉えかたをする著者に、なんだか「老い」を感じてしまう。
若々しくオピニオンリーダー的存在だった橋本治が、人生の意味を問うような小説を書く。
橋本治、歳とったなぁ。

それに、心に残るものは生み出せても、有形のものを残すことができない小説家という職業。
そこに著者は哀愁を感じているのかもしれない。

ゴミ屋敷
麺喰道 (およそ麺日記)

ゴミを集める男も悲しいが、そのゴミを見ながら生活する主婦こそ被害者。
だってゴミだもんなあ。
無理矢理見せられたり聴かされたり読まされる芸術もゴミに近いものがあるが、本当のゴミに何かを見いだすのは困難。
でも一億万年くらい経てば価値が出る?

巡礼
巡礼
おすすめ平均
starsゴミの山は戦後の日本の姿か
stars人との係わりとは
starsゴミ屋敷の主は私だったかもしれない
stars誰か映画化してください
stars心に蓋を閉ざした男

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◆他サイトの感想◆
MSN産経ニュース
新s あらたにす(日経・朝日・読売)
asahi.com(朝日新聞社)
日々平安録

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スットコランド日記/宮田珠己

◆読んだ本◆
・書名:スットコランド日記
・著者:宮田珠己
・定価:1,600円
・出版社:本の雑誌社
・発行日:2009/8/5

◆おすすめ度◆
・脱力系日記度:★★★★
・寝る前に読む本度:★★★★★
・どことなく安心できる度:★★★

◆感想◆
旅行エッセイスト宮田珠己の脱力系日記。

寝る前に読む本の選定は難しい。
つまらないと読む気にならず、本を手にしたままつらつらと悩み事が浮かんできては考え込んでしまい、翌日寝不足になったりする。
面白すぎると寝るのを忘れて読んでしまい、翌日寝不足になってしまう。
つまらなくもなく、かといってものすごく面白い訳でもない本が寝る前本にはベストだ。

本書は語り口やテーマがユニークなエッセイスト宮田珠己の、ごく普通の日常生活を綴った日記。
これが寝る前本にはもってこいのちょい面白本!

ごく普通の日記といってもユニークな著者の筆にかかるとそこここでクスクス笑いを禁じ得ず、また大笑いしながら凧揚げする娘とか、著者の性格を鋭く指摘する楽天的な奥さんとか、グラフマニアな著者のこととかが分かっちゃう仕 組み。
分かっても特別いいことないんだけど、シリアスなんだかとぼけてるんだか、宮田珠己の暢気な演出がステキなエッセイだ。

唐突な終わり方や、著者近影の写真にもグッとくる!

スットコランド日記
スットコランド日記
おすすめ平均
stars電車のなかで読めません

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スットコランド日記の最新版は「WEB本の雑誌」で。
本書でもふれられてる「だいたい四国八十八ケ所」の連載もある。
ただで読めてお得だ!

◆他サイトの感想◆
傲岸不遜男天野才蔵の「私は本を買って読む」+「ただいま世界一周旅行中」
著者に聞く 新s あらたにす(日経・朝日・読売)
讀々享樂時空
宮田珠己ファンサイト「タマキンガーの部屋」

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小太郎の左腕/和田竜

◆読んだ本◆
・書名:小太郎の左腕
・著者:和田竜
・定価:1,500円
・出版社:小学館
・発行日:2009/11/2

◆おすすめ度◆
・戦国時代小説度:★★★★
・黒沢明風エンターテイメント度:★★
・ゴルゴ13風サスペンス度:★★

◆感想◆
戸沢家と児玉家が勢力を拡大しようとする戦国時代。猟師の子である小太郎の「神業」をめぐる合戦エンターテイメント。

黒澤明の「隠し砦の三悪人」を連想させるような戦国時代小説に、ゴルゴ13のような神業的スナイパーを登場させたような小説。
「まさか、あの山から撃ったというのかー」のコピー(うまいっ!)に思わず買ってしまったが、予想通りの内容と展開。

べつにそれは不満ではないんだが、登場人物に深みがなく展開もありきたりで、もうちょっと書き込んで欲しい感じが。
そうしないと物語が陳腐になってしまう。

例えば小太郎の射撃技術の背景には、「銃身をこう改良して、弾丸はこうしてああして、幼い頃からこんな練習をして」みたいなことを、嘘でもいいから書き込んで欲しい。
そうすれば、驚くべき小太郎の技術に信憑性が生まれて、スリルとサスペンスの戦国スナイパー誕生!みたいな。
今のままでは、ゴルゴ13に軍配があがりそう。

全体に荒削りで精緻さに欠けるが、著者の意気込みや迫力は伝わってくる。
一本気な著者の物語にも好感触。
将来面白い小説を書く作家になるかも!?


火縄銃
豊後大友宗麟鉄砲隊


凄腕の小太郎は左利き。
やっぱり左利きって天才っぽいよね。
左手は右脳につながってるからか、その相乗効果?

たまに左手で箸を持ったりしてみるけど、まるでいうことを聞いてくれない。
同じ自分の手なのに、何でこんなにぶきっちょなのか不思議だ。


小太郎の左腕
小太郎の左腕
おすすめ平均
starsこちらの方が・・・。
stars半右衛門の槍
starsやっぱり『忍びの国』かな
stars時代劇版<マカロニ・ウエスタン>か?
stars映像は良い、心理描写が物足りない。

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◆他サイトの感想◆
こんな感想はゆってはいけない(改)
BOOK:asahi.com
空色レールウェイ
いつも読書人

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私の家では何も起こらない/恩田陸

◆読んだ本◆
・書名:私の家では何も起こらない
・著者:恩田陸
・定価:1,300円
・出版社:メディアファクトリー
・発行日:2010/1/8

◆おすすめ度◆
・ホラー小説度:★★★
・そこはかとなく怖い度:★★★
・そこはかとなく暖かい度:★★

◆感想◆
丘の上に建つ一古い幽霊屋敷を主人公?にしたホラー連作短編小説。

その家で起きた陰惨な事件が、一種抒情的でそこはかとなく怖い雰囲気で描写される。が、しだいにホラー全開な展開に。
また、はじめは単に怖いだけの描写が、終わりの方はアットホームな感じに。なかなか盛り上げ上手な展開だ。

古い屋敷は何変わることなくたたずんでいるが、そこで死んだ人や事件によって、幽霊屋敷と変化して行く過程。
変わって行くのは、家ではなくそこに住む者たち。

思うにこの小説は、著者の「ちいさいおうち」にたいしてのオマージュではないかと。
恩田陸版の「ちいさいおうちホラー編」みたいな。
だから本書の冒頭で、「ちいさいおうち」にちょこっと触れているんじゃないかと。


ちいさいおうち (岩波の子どもの本)
ちいさいおうち (岩波の子どもの本)バージニア・リー・バートン

おすすめ平均
stars1943年アメリカ最優秀絵本
stars最高の1冊だと思います
stars大好きな大好きな本
starsバージニア大好き
starsお気に入り

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「ちいさいおうち」とかS・キングの影響とか、著者に同時代性を感んじる時、よりいっそう小説が身近になる。
よく読む作家がなぜか同年代の人ばかりなのは、このせいなのかもしれない。

私の家では何も起こらない (幽BOOKS)
私の家では何も起こらない (幽BOOKS)恩田 陸

おすすめ平均
stars静かな狂気
starsこわいです
starsこの独特な雰囲気はさすが!
starsおしゃれな装丁にだまされます。
starsこの本は夜読んではならない

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◆他サイトの感想◆
ひなたでゆるり

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掏摸/中村文則

◆読んだ本◆
・書名:掏摸
・著者:中村文則
・定価:1,300円
・出版社:河出書房新社
・発行日:2009/10/30

◆おすすめ度◆
・ハードボイルド風純文学度:★★★
・ミステリアスでスリリングな展開度:★★★
・理不尽で不条理な運命度:★★★★

◆感想◆
天才的掏摸(すり)師が、その技量がゆえに巻き込まれる犯罪と運命を描いたハードボイルド風純文学小説。

天才的掏摸師というのがなかなかそそる設定。
けど、内容や展開は、ミステリーやハードボイルド小説としては古めかしい感じが。
文章のタッチはハードボイルドだけど、底に流れるテーマは純文学風。
ラストもミステリー小説のような結末にはなっていないし。

むかしの仲間繋がりで、主人公は大きな犯罪に巻き込まれていくが、スリのテクニックを発揮して難局を切り抜ける・・・みたいな展開で。
もっと実際の掏摸のテクについて読みたかった気もするが、著者の狙いはその辺にはなくて、強いチックを起こす売春する主婦や、彼女に掏摸を強要される子供や、運命について喋る犯罪集団のボスなどの脇役から連想される、理不尽 で不条理な人間の運命にあるよう。

うーん。
エンターテイメント小説としてはもっとスリルとサスペンスが欲しいところだし、純文学としてはもっとドロドロネバネバした運命から脱する/運命に埋没する主人公を見てみたかった気も。
本書のあたりがちょうどいい折衷具合か。

掏摸
掏摸
おすすめ平均
starsボリューム的には中編
stars今ひとつ。
stars圧倒的なスケール感、リサーチ力の文章が動き出すようです
stars神こそがゲームを楽しむ?
stars映像を読む気分だった

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主人公のような天才的掏摸師のテクを見てみたいっ!!
っとおもったら、今はマジシャンとしてエンターテイメントショーに登場!

◆他サイトの感想◆
飴色色彩日記
MSN産経ニュース
asahi.com(朝日新聞社)
森乃屋龍之介の日常

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中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる/ワクサカソウヘイ

◆読んだ本◆
・書名:中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる
・著者:ワクサカソウヘイ
・定価:1,200円
・出版社:情報センター出版局
・発行日:2009/5/2

◆おすすめ度◆
・爆笑エッセイ度:★★★★★
・何も無いようで、大ありな青春度:★★★★
・大笑いな中学生たちと、ほろ苦笑いの著者度:★★★★

◆感想◆
コント作家のの著者による、爆笑中学生の生態エッセイ。

友人は近所に住む中学生だけ、という著者。
彼が中学生たちと遊んだ出来事を綴ったエッセイなんだが、これが笑える。

公園でかくれんぼをしている最中に、車のナンバープレートを読みたくなり、くるまに惹かれる活字中毒のジングウ。
1週間に木曜日が二回あると思っているハルコの妹は、1週間は8日あると思っている。
街で「新弟子検査を受けてみないか?」と誘われたことが3回ある肥満児のコウは、マラソン大会にむけて過酷な練習をし機敏な動作ができるように。しかし、マラソン大会で走っている最中にリバウンドを起こし、給水所でグレープフルーツを貪りはじめる。

実はどこにでもあるような中学生の笑える日常なのかもしれないが、著者のコント作家らしい描写で大笑いのエッセイに。
電車の中では読めない爆笑ものだ。


途中、自分のなにもなかった中学時代を取り戻すため、中学生と一著に遊んでいるんだと自嘲気味だったり(紹介されてる著者の中学時代のエピソードを端からみれば、けっこうユニーク)、女子の気遣いに思わず号泣してしまうシー ンも。
そんな著者のやや淋しげな風情を織り込みながらも、中学生たちの爆走は止まらないっ!

中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる
中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる
おすすめ平均
starsむず痒い楽しさ
stars素晴らしい文才。ネタも面白いが・・。

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中学生というのは色んなことに喜んだり怒ったり悲しんだりできる時期。
だから大人になって中学時代を振り返ると、3年間を長く感じるんだなあ。

◆他サイトの感想◆
【書店員のオススメ】 MSN産経ニュース

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