だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

化身/宮ノ川顕

◆読んだ本◆
・書名:化身
・著者:宮ノ川顕
・定価:1,500円
・出版社:角川書店
・発行日:2009/10/31

◆おすすめ度◆
・ホラー短編集度:★★★
・表題作「化身」が秀逸度:★★★★
・そこはかとない恐怖/忍び寄る恐れ度:★★★

◆感想◆
休暇をとって南の国で過ごそうとして男は、軽い気持ちで入った密林にあった池に落ちてしまう。周囲を滑らかな壁に囲まれた「壷」のような池は、とうてい脱出できそうになかった・・・

表題作「化身」は密林の中の池に落ちた男の物語。
これはなかなか良くできているホラーだ。
池の中央にある三畳ほどの浮き島がかろうじて男の安らぎの場所となるが、ツルツルの壁に囲まれた池からは逃げられない。
男の運命はどうなるっ! という展開だ。

小川一水の「漂った男」(これは面白かった!)を思い出す設定で、孤独な環境の中で一種哲学的な思索をしながらも、どこか楽天的な男の思考が面白い。
舞台設定の妙と、予断を許さない展開がうまい!


この「化身」以外に「雷魚」「幸せという名のインコ」の二編があるが、これもそこはかとなく恐くなる小説。
飛び抜けてスゴい訳じゃないが、新人らしからぬできばえ。


化身
化身宮ノ川 顕

おすすめ平均
stars安易
stars化身:なにかが足らないが稀有な作品
starsホラーというより純文学?
stars他人の不幸を喜ぶ人間の本質的心理をくすぐる傑作。
starsジンクスを打破した豊かな才能

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都会のギスギスした人間関係に中にいると、「化身」に登場する男のようにどっかで一人のんびりしたいと思うかもしれないが、本当に一人になっちゃうと困ってしまう。
池のかなで悪戦苦闘する男はなんとか生きようと、脱出しようとするけど、池から脱出したらしたでまたギスギスした人間関係の中に戻ることになる。

いったいどうすればいいんだ? みたいな。

「池の中で一人」という設定は、狂気に大接近だけど、「化身」の印象は以外と明るい。
著者の人となりが現れているのか。



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神々の午睡/あさのあつこ

◆読んだ本◆
・書名:神々の午睡
・著者:あさのあつこ
・定価:1,400円
・出版社:学研パブリッシング
・発行日:2009/10/13

◆おすすめ度◆
・ファンタジー短編集度:★★★
・あるいは童話度:★★★
・それともお伽噺度:★★★

◆感想◆
神と人間と箜(くう 神と人間の中間的存在)がおりなす、ギリシャ神話みたいな感じのファンタジー短編集。

あさのあつこのファンタジー小説ということで、ちょっと期待したんだけど、
読者対象が清らかな少女たちのようで、おじさんが読むにはパンチが足りない。
その辺をよく見極めてから読めってことだ。

何でもかんでも読めばいいってものじゃないんだなあ。
たいていの男性はスカートはいて喜んだりしないし、多くの女性は格闘技にのめり込んだりしない。(例外はあるけど)
ま、そうゆうことだ。

それでも寓話として読めるあたり、著者が手を抜いていないということかも。


神々の午睡
神々の午睡あさの あつこ

おすすめ平均
stars人間臭い神々の物語
starsもうひとひねり欲しい。

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「神々の午睡」に登場する神々は、非常に人間的。
嫉妬もすれば間違いも犯す。
極めて日本的な神様?
神よりも何よりも、自分の価値観を大切にしなさいという著者のメッセージ?


◆他サイトの感想など◆
あさのあつこさんインタビュー/kurasse


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無理/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書名:無理
・著者:奥田英朗
・定価:1,900円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2009/9/30

◆おすすめ度◆
・転がり落ちるような暮らし度:★★★★
・安い登場人物のチープな人生度:★★★★
・感情移入すると、なおさら悲惨度:★★★★

◆感想◆
地方都市「ゆめの」に暮らすケースワーカー、高校生、セールスマン、保安員、そして市議会議員。なんとか暮らしを善くしようとあがいているのに、何故か悪い方へ悪い方へと転がって・・・

「最悪」「邪魔」に続く、転がり落ちる暮らしシリーズ第3弾。
登場人物はどこにでもいそうだけれど、ちょっと安っぽい人々。
ちゃんとしているようで、どこか抜けている。
戸梶圭太なら、激安人間におとしめてボコボコにするような奴らばかりだ。

彼らがドンドンマイナス方向に転がって行く。
スカッとしないし、どんでん返しもないし、幸せなシーンもない。
おお、なんかとてつもなく暗いぞ。
それでも読んじゃうのは、現実にありそうなシチュエーションと、どんな風に転がり落ちていくのかへの興味。
最後は「人生にはいいことなんてないんだ」と登場人物が悟ってしまうような展開だ。

でも女子高生がポカポカ殴るのはいいぞ。
もっとやっちゃえっ!
(このシーンくらいしか、スカッとするところがないんだよね)


無理
無理奥田 英朗

おすすめ平均
stars何を言いたいやら
starsあまりに救いがない
starsこの作品に限らず「無理」。
stars笑うに笑えない現代のリアル
starsオチが弱いが、喜劇と悲劇のない交ぜが上手い

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真保裕一と東野圭吾は、なんか似ている。
同じように荻原浩と奥田英朗もたまに間違う。
深い意味はないんだけど。


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地球移動作戦/山本弘

◆読んだ本◆
・書名:地球移動作戦
・著者:山本弘
・定価:1,900円
・出版社:早川書房
・発行日:2009/9/25

◆おすすめ度◆
・ハードSFオタク系度:★★★★
・ハラハラ ドキドキ度:★★★★
・ガジェットいっぱい度:★★★★

◆感想◆
宇宙観測プロジェクトにより発見された謎の天体A2075を調査するため、タキオン推進宇宙船が派遣される。船長等の決死の調査で判明したA2075は、なんと軌道を地球に向けていた・・・

新たに発見された「見えない」放浪惑星が地球に接近する!!
このままでは大惨事を免れない!
どうやってこの危機を人類は乗り越えるのか!
というハードSF。

溢れんばかりの詳細なデータと科学的ロジック、人工意識コンパニオンという意識を持った?AI、タキオンを利用したピアノドライブという推進装置、そんなSF的な小道具満載で、さらに地殻や気候変動、人類滅亡を見据えた新興宗教、あらたなメディア作家などもからめて、地球をまるごと移動しようという作戦が計画される。

清く正しいSF少年必読の書だ。
これをよめばきっとSF好きの大人になるだろう。

それにしても、「地球移動」という目新しくもないテーマを、これだけ面白く読ませる著者の根性が素晴らしい。
やや登場人物などにオタク感が強いが、それはオタクへのエールと受け取っておけば、納得の範囲。

逆に人工意識コンパニオンの「レイザー」とお友達になりたくなるかも。


地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
おすすめ平均
stars天体を動かす力

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子供の頃、地球の南極にドデカい噴射口を建造して、そこからジェットを噴出させて地球を移動させるという映画を見た記憶が。
子供心に「おおっ!」と思った。
グーグルにお伺いすると、それは「妖星ゴラス」ではないかと。



東宝 妖星ゴラス 予告
by dr0scout1


うーん、これっぽいぞ。
予告編を見ると、展開が「地球移動作戦」にも似てる。
子供の時「妖星ゴラス」を見てワクワクして、大人になって「地球移動作戦」を読んでドキドキする。
おれの精神年齢は子供のままか?


◆他サイトの感想◆
古き良き最新 - 書評 - 地球移動作戦
読書記録, et.al


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