だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

龍神の雨/道尾秀介

◆読んだ本◆
・書名:龍神の雨
・著者:道尾秀介
・定価:1,600円
・出版社:新潮社
・発行日:2009/5/20

◆おすすめ度◆
・ミステリー&サイコサスペンス度:★★★
・家族と兄弟の絆度:★★★
・出来過ぎた展開度:★★★

◆感想◆
添木田蓮は妹の楓の帰りが遅くなると聞き、あの計画を実行する機会がやってきたと考える。「でも駄目だ、いくら憎いからといって義父を殺すなんて・・・」

今、もっとも勢いのある若手作家の一人、道尾秀介。
本書は直木賞候補にもなった「鬼の跫音」の次に出版された最新作で、2組の兄弟(兄妹)が主人公のミステリー小説だ。

添木田蓮(19歳)と高校生の妹楓の兄妹。
中学生の溝口辰也と弟圭介の兄弟。
どちらの兄弟も両親を事故などでなくし、血のつながっていない親と暮らしている。
親を失った悲しみと、血のつながっていない親との暮らしのなかで兄弟たちに猜疑心が生まれ、それは次第に肥大化して行き・・・

描写や展開もうまいし、人物描写も巧み。
著者の才知にたけた伏線と巧妙なミスリードで、ミステリー小説の面白さを満喫できる。

でもなんか違うんだよね。
破綻のない展開も見事な描写も、まるでミステリー小説の教科書みたいな。
印象が薄いっていうか。
それで全然問題ないんだけど、著者のスタンスは違うような気がする。


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手賀沼の藤姫伝説 手賀沼の藤姫伝説(つづき)雲の上の散歩道


千葉県の手賀沼に伝わる藤姫伝説というのが本書でふれられてる。
あの手賀沼にねえ、そんな神話が、と思いつつ調べてみると微妙な違いが。
著者の脚色?


龍神の雨
龍神の雨
おすすめ平均
stars雨は良かったけど、龍が・・・
stars雰囲気には満足しているが・・・
stars後味は割と悪くないです。
starsもう一声!
stars期待はずれの出来栄え。がっかりです。

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◆他サイトの感想◆
棒日記VI
MSN産経ニュース【書評】
一日一読
たちばな屋・ミステリ分科会
ミユウのいろいろ日記

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逆転のクレヴァス/茅田砂胡

◆読んだ本◆
・書名:逆転のクレヴァス
・著者:茅田砂胡
・定価:900円
・出版社:中央公論新社C★NONELS
・発行日:2009/7/25

◆おすすめ度◆
・へんてこ誘拐小説度:★★★
・さらわれた方がさらったり度:★★★
・奇人変人賢人度:★★★

◆感想◆
住宅街を散歩していたリィに声をかけた男はものすごく怪しげ。しかし敵意をまったく感じなかったリィは、その男から銃口を突きつけられて…

今回はリィが誘拐されてしまうという、クラッシュ・ブレイズシリーズの14巻。
リィとシェラが主役で、ジャスミンとケリーは登場しないためか、ややおとなしめ。

誘拐されても、誰もリィを心配しないばかりか、誘拐犯の方を心配する始末。
なかなかユニークな誘拐劇になりそうな展開だ。
確かにこの誘拐犯、ちょっと飛び抜けてオトボケてる。
でもこうゆう一般常識のない人が、とても賢かったりする。

歴史上の有名人だって、性格破綻していた人、いっぱいいるし。

といったことを思いつつも、あっというまに読み終わる面白さ。
ファンの方はお見逃しなく。


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題名の「クレヴァス」の意味がよく分からない。
なにか大事なところを読み逃しているのか?


逆転のクレヴァス (C・NovelsFantasia か 1-52 クラッシュ・ブレイズ)
逆転のクレヴァス (C・NovelsFantasia か 1-52 クラッシュ・ブレイズ)
おすすめ平均
stars読める出来だと思いますよ
stars次巻への布石?のみの存在

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◆他サイトの感想◆
読書日記
わたしは趣味を生きる。
逆転のクレヴァス 立ち読み専用[PDF]

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宵山万華鏡/森見登美彦

◆読んだ本◆
・書名:宵山万華鏡
・著者:森見登美彦
・定価:1,300円
・出版社:集英社
・発行日:2009/7/10

◆おすすめ度◆
・和風ファンタジー度:★★★
・祇園祭宵山におきる不思議度:★★★
・幻想的すぎて鼻血がでそう!度:★★★

◆感想◆
京都祇園祭の宵山に起きるファンタジックな不思議話し。

お祭りは気分が高揚するもの。ちょっとエッチな雰囲気もあったりして。
でも本書の「祭り」は至って健全。
子供の頃に祭りで味わった異世界感が、小説の中に充満している。

赤い浴衣の少女たち、頭がつるつるの大坊主、マンションのベランダから見下ろす赤ら顔の男、奥州斎川孫太郎虫という昆虫…
怪しげな登場人物や脇役を従え、森見ワールド全開!

著者の不思議な小説空間が好きな方にはたまらないワンダーランドだ。
京都な空気の和風ファンタジーは、他に類を見ないし、祭りの猥雑さ、幻想的な風景、うごめく人々が、ファンタジックだけれど妙にリアルに描かれる。

読みはじめると、宵山の異世界にはまり込みそう。

自分はちょっとしかはまれなかった異世界。
京都になじみのない分がマイナス要因?


奥州斎川孫太郎虫
奥州斎川孫太郎虫/ウィキペディア


奥州斎川孫太郎虫というのは著者の創作かと思ったら、本当にいるんだねえ。
こうゆう小道具も大切だ。


宵山万華鏡
宵山万華鏡森見登美彦

おすすめ平均
stars久しぶりの”怪奇”!!
stars夏の夜の夢語り
stars表紙がすべてを語っています
stars世界につつまれて
starsこんなもんでしょうか?

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◆他サイトの感想◆
ラピスへのひとりごと
ナカムラのおばちゃんの読んだん
紫苑草子

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植物図鑑/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:植物図鑑
・著者:有川浩
・定価:1,500円
・出版社:角川書店
・発行日:2009/6/30

◆おすすめ度◆
・草食系男子との恋愛物語度:★★★★
・草を食べるカップル度:★★★
・雑草料理レシピ度:★★★★

◆感想◆
「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」
飲み会の帰り、自宅マンションの植え込みに行き倒れている男からそう言われたさやかは、なぜか見知らぬ男を家にあげ…

お互いの素性もなにも知らぬまま、男(イツキ)とさやかの共同生活がはじまる。
そこらかお互いに恋愛感情が芽生えて、でもなかなか口に出せなくて、一つ屋根の下で暮らしていながらもちょっと手が触れるだけで顔を赤らめるような初さで…
という草食系の恋愛小説なんだけど、本当の主題は文字通りの「草食」にあるんじゃないかという物語。

イツキは野草にとても詳しい男性で、さやかの家に居候させてもらうかわりに家事全般を受け持ち、さらに野草を採取してきては料理して食べるという倹約ぶりを発揮。
二人で川や野原に出かけては様々な草を摘みとって料理して食べるシーンが、物語の多くを占めるユニークさ。
恋愛小説の名を借りた草食料理レシピ集みたいな。

巻末には物語に登場した「フキの混ぜごはん」「ノビルのパスタ」「タンポポの茎の炒め物&葉っぱの炒め物、葉っぱのおひたし、花の天ぷら」とかのレシピが掲載される入れ込みようだし。

著者は「草食系男子」という言葉を、「はやりの草食系」と、文字通り「草を食べる」にかけて恋愛小説にすれば面白いかも! ってひらめいたのだろう。

読んでるとカラシナとかイタドリとか採ってきて料理したくなるから不思議だ。
しないけどね。


スイートピー
スイートピー/深山毒草園


一時期会社で、食べられる植物を植えるのが流行っていたことがあった。
草花もあったんだが、何故か枝豆とかオクラとかも植えていて、たまにおっそわけにあずかっていた。

そのかなでプランターに植わっていたスイートピー。
花が咲いて、なんだかエンドウ豆みたいで食べられそうな感じの実がなって。

「これ、なんか食べられそうだよな」
「持って帰って食べたら。おいしいかもよ」

家に持ち帰り、鍋で茹でると鮮やかな緑色!
うまそうだぞ。
でも毒があったりするとヤバイよな。

ネットで調べると「毒がある 摂取すると頚椎麻痺などの症状が現れる」

!!!

食べなくてよかった!
ニュースで「会社員の男性が、スイートピーの実を食べて中毒になりました」とか報道されたら、「よっぽど食べるのにこまっていたのねぇ、かわいそうに」とか思われそうだもん。


植物図鑑
植物図鑑有川 浩

おすすめ平均
stars植物図鑑
stars日常のささやかな幸せ
stars雑草食男子とのレンアイ
starsオススメ♪
stars"おいしい”物語です

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◆他サイトの感想◆
Lupin's Weblog 酔えない酔っ払いの戯言
M+
booklines.net

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ダッシュ!/五十嵐貴久

◆読んだ本◆
・書名:ダッシュ!
・著者:五十嵐貴久
・定価:1,600円
・出版社:ポプラ社
・発行日:2009/7

◆おすすめ度◆
・ドラマチック青春小説度:★★★★
・キップのいいヒロイン”桃子先輩"度:★★★★
・アホでユニークで従順な4人の男子度:★★★★

◆感想◆
陸上部のイノケン、ちょいイケメンのリョーイチ、いつもあやまってばかりのわび助、鉄道オタクで巨漢のメタボン。彼ら4人の高校2年生が「ねーさん」と呼ぶのは、陸上部のスターでキップのいい桃子先輩。
ある日ねーさんが「クラブ」に行きたいといいだして・・・

ねーさんこと桃子先輩は、後輩の面倒見もいい曲がったことが嫌いなキップのいい女子。
桃子先輩を慕い憧れる、ステロタイプだけどユニークな設定の4人の男子。
5人の高校生が織りなす青春物語の題材は、恋愛、友情、病気、別離、憧れと、ありふれた青春ものなのに一気に読んでしまう面白さ。

どこをどうすれば笑えて、どうすれば泣けて、どうすれば感動するか熟知している著者の熟練した技術がうかがえる。
それでもイヤミなく素直に読めるのは、癖のないストレートな文章と表現のたまものだ。

ミステリーな仕掛けやトリッキーな展開を持ち込まないで、ストレートな青春小説で勝負するっていうことは、著者は相当自信があるのかもしれない。

そんなうがった読み方をしても面白く読めるのは、著者の勝ちってことかな。


性格診断
タイプ別性格診断


恋愛小説とか青春小説というのは、どれだけ登場人物に感情移入できるかが面白さの決め手。
登場人物と一緒に笑ったり泣けたりすれば、「そうそう!」って共感できる。

逆に言えば、自分と同じような性格の人物が登場する小説を選んで読めば、とっても共感できるっていうことだ。
でも読まないと登場人物の性格は分からないしなあ。


ダッシュ!ダッシュ!
五十嵐貴久

ポプラ社 2009-07-07
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薄暮/篠田節子

◆読んだ本◆
・書名:薄暮
・著者:篠田節子
・定価:1,800円
・出版社:日本経済新聞出版社
・発行日:2009/7/1

◆おすすめ度◆
・亡くなった地方画家の隠された姿度:★★★★
・画家と女と傑作度:★★★★
・ミステリアスでホラーチックな展開度:★★★★

◆感想◆
新潟の地方都市で絵を描き続けた画家宮島哲朗。たまたま宮島哲朗の絵を見た著名なエッセイストが雑誌に寄稿したことから、画家宮島哲朗が注目されはじめて・・・

地方都市に住み、市井の人々や風景を描き続けた不遇の画家。
彼の絵をなんとか世に認めさせたいと願う町の人々。
編集者の橘が、彼の絵を見て画集を出版させようと計画するあたりから、なにやら怪しげな状況になっていき・・・という不遇な郷土作家をテーマにした重厚な物語。
そこにミステリアスな味付けや、商売としての絵という俗っぽさも織り込んで面白く読める展開に。

仮想儀礼」の雰囲気も引きずってるけど、それもうまくアレンジしてる。
篠田節子、なかなかの手練だ。
宮島哲朗の妻等も凄みのある女性に描かれていて、読みごたえあり。
読後の印象も爽やかだ。


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おもしろ画像


「恵まれた家庭環境では傑作は描けない。孤独と向き合って荒んでいく精神と対峙するとき、画家は傑作を産み出す」みたいなくだりがある。

そうゆう芸術的傑作とか、人の思いもよらない発明とかは、脳の神経回路が普通じゃない変な回路に繋がった時に生まれるような気がする。

超感覚的な感性?
鋭敏な思惟?

自分は寝る間際にそんな感覚を覚えることがある。
「これはスゴイ! ひらめいた!!」みたいな。
でもすぐ寝ちゃうから、何をひらめいたか覚えてないんだなこれが。


薄暮
薄暮篠田 節子


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◆他サイトの感想など◆
本よみうり堂
みくうのもこもこ日記

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ドロップ/鈴木光司

◆読んだ本◆
・書名:ドロップ
・著者:鈴木光司
・定価:200円
・製造元:林製紙株式会社
・発売日:2009/6/6
・品質:114mm×2枚重ね30m

◆おすすめ度◆
・前代未聞のトイレットペーパー本度:★★★★★
・シチュエーションによっては超恐い度:★★★★
・お尻も拭ける度:★★★

◆感想◆
何が驚きかってトイレットペーパーなんである。
それにホラー小説が印刷されているんである。

けったいなものを考えたのう。

文字数は2,000字という超短編小説で、トイレで用を足す間に読めてしまう長さ。
これが延々繰り返し印刷されているんである。
中身が変なら包装紙も凝った造りで、「ドロップ発表会」の写真はちょっとおののく恐さ。


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鈴木光司「ドロップ」発表会/yuichiro design


いそいそと読みはじめると、さすがリングの著者だけあって、短いながらもインパクトのあるホラー。
夜中の淋しい公衆便所で便器に腰掛けながら読んだら、小便ちびるの間違いなし。トイレだからちびっても大丈夫だし。

おまけに用を足した後、お尻も拭ける素晴らしさ。
なんか印刷した紙でお尻を拭くのは、踏み絵みたいな精神的抵抗があるけど。


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ドロップ/鈴木光司


トイレットペーパー本なんて前代未聞と思ったが、これがそこそこ売ってるから驚く。
用を足してるとき壁ばっかり睨みつけるのはなにだから、トイレットペーパーの文字とか絵を眺めてもらおうという戦略か。




◆他サイトの感想とか◆
トイレットペーパーに記された怖~い話 鈴木光司氏の短編『ドロップ』/asahi.com
関心空間
ビズカレッジ ただ今修行中!

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