だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ブラザー・サン シスター・ムーン/恩田陸

◆読んだ本◆
・書 名:ブラザー・サン シスター・ムーン
・著 者:恩田陸
・出版社:河出書房新社
・定 価:1,400円
・発行日:2009/1/30

◆評価◆
・回顧的青春記度:★★★
・3人の出会いと別れ度:★★
・不思議なほど懐かしいあの頃度:★★

◆感想◆
高校から大学まで同じ時を過ごした男女。大人になった3人が、それぞれに学生時代の自分を振り返る青春記。

登場するのは女性1人と男性2人の3人で、合わせて3話からなる構成。
第1話は、なんだか著者本人が主人公のような語り口で、少々とまどう。
おまけに、殺人事件もミステリアスな事件も起きないし。
唯一不思議な事といえば、空から蛇が3匹落ちてきた事か。

学生時代の思い出や出来事をつらつらと書いて、それを現在の自分とちょっと対比させたりして。
むかしの思い出がパッチワークのごとく組み合わされて。
過去のフラッシュバックをそのまま小説にしたような、一種映像的な構成でもある。
著者らしい不思議な気配の青春小説だ。

何かに熱くなっていた、という同世代の方には、感情がシンクロしやすいかも。



サンドイッチ航路 Il viaggio del panino


3話に登場する箱崎一は、学校を卒業してから金融業界に進みながら、心機一転、映画監督になる。
彼が映画監督になるきっかけは、むかしのTV番組「エビ天」で観た「サンドイッチ航路」という応募作品だという件が。

YouTubeにあるんだね。便利な世の中だ。
(録画して、さらにYouTubeに投稿するという投稿者の几帳面さにも驚くが)

でもこうゆうのはあんまり観ない方がいいと決まってる。
特にきれいな「むかし」は。 言葉や文字で空想するのはいいけど、映像や、ましてや実物の「むかし」は、かなりの覚悟をもって望まないといけない。


ブラザー・サン シスター・ムーン/恩田陸の表紙
 

◆他サイトの感想◆
AKASHIC NOTE
夜の虹を絞め殺す


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エッジ/鈴木光司

◆読んだ本◆
・書 名:エッジ
・著 者:鈴木光司
・出版社:角川書店
・定 価:上1,600円 下1,600円
・発行日:2008/12/19

◆評価◆
・人類滅亡型SF?度:
・輪廻転生型ホラー?度:
・探偵型ミステリー?度:
・愛のファンタジー?度:

◆感想◆
冴子の父親は18年前に失踪し、いまだ行方不明。気持ちの多くを父への思慕と捜索に充てながらも、ライターとして頑張ろうとしている彼女に舞い込んだ仕事は、藤村一家失踪事件のルポであった・・・

ウーム、これはちょっといただけないなあ。
正直な感想を一言でいうと「なんだこれ?」

世界各地で人が失踪するという事件を発端に、物語が展開していくんだが、起承転結の「起」の部分はOK。
ちょっとホラーっぽい所も、「リング」3部作の著者らしくて、先の展開を期待させる出だし。

でも「承」になって「??」
「転」では「あらま」
「結」では「酔っぱらって書いてるのか?」

こうゆうのは編集者とかが、作家と打ち合わせなり何なりをして、内容や文章を見直してから出版するべきものなんじゃないのかしらん。
そこここに瑕疵が見受けられ、内容もブレまくり。

それよりも著者のことが心配になってくる。
著者は、「リング」「らせん」「ループ」という面白くて話題になり売れた作家、というお荷物を背負って、精神的に苦労したんじゃないか。
自分の才能とかにも疑問を感じ、幾度となく物書き家業を辞めようとし、しかし周囲の励ましとかに支えられて、ようやく本書「エッジ」を上梓。
ところが本書の出来が・・・

と、いらぬ心配までしてしまう本なのであった。


yun_1634.jpg
カリフォルニア州


そうはいっても、部分的には光る文章もあったりする「エッジ」
SFっぽい書き方するから瑕疵が目立つのであって、ファンタジーかホラーとして読めば、納得できるのかな?

そういえば井上夢人の「メドゥサ、鏡をごらん」を読んだ時も、はじめは「これはスゴイミステリーだ! 傑作になるんじゃないか!!」と思ったが、読み終わった時は本を投げつけたくなった記憶が。

あんまりジャンルを決め打ちして読むと、良い事はないのかもね。
でもSFっぽいこと書くんだもん、しょうがねいよね。



エッジ/鈴木光司他の表紙



◆他サイトの感想◆
面白く読んだ方も多いみたいで、良かった良かった。
ラッシュライフ
たまの独り言
ふるちんの「頭の中は魑魅魍魎」


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仮想儀礼/篠田節子

◆読んだ本◆
・書 名:仮想儀礼
・著 者:篠田節子
・出版社:新潮社
・定 価:上1,800円 下1,800円
・発行日:2008/12/20

◆評価◆
・新興宗教の栄枯盛衰度:★★★★
・壊れた人々度:★★★★
・新興宗教の造り方度:★★★★
・インチキ教祖の良心と信者の狂信度:★★★★★

◆感想◆
都庁に勤めていた鈴木正彦は、心血を注いで書き上げたゲームブックの出版化をたよりに退職してしまう。しかしゲームブックが出版されることはなく、食うのにも困るような生活に。鈴木はかつての仕事仲間と新興宗教を興し、金儲けを企むが・・・

これはなかなかヘヴィーな内容だ。
鈴木と矢口は、パソコンを使って切り貼りだらけの「聖泉真法会」という宗教団体を立ち上げる。
金儲けのためとしていながらも、真っ当すぎるくらいの鈴木と矢口。
メールでの人生相談にのったり、集会所を確保したりして説法を行い、とんでもない過去やとてつもなく壊れた人々に対しても真っ当な対応をするうち「聖泉真法会」の名が広まり、また偶然の行幸も重なって、どんどこ信者が増えてきて。

中盤までは、「信仰宗教の造り方」みたいな展開だ。
ちょっと危ないくらいに壊れた信者、本当の金儲け主義の新興宗教教祖との対立、企業経営者の入信と社内事情、信者間の軋轢。
実際にありそうな出来事が次々起きて、読者を飽きさせないし、壊れた人たちの思考や、インチキでありながら悪人になりきれない教祖の宗教観も興味深い。
どっかの新興宗教の実録のような雰囲気もあるし、現在する宗教団体の内部組織が伺えるようでもある。

このままインチキ宗教「聖泉真法会」は発展し続けるのか、それとも破綻するのか。
ま、それは読んでのお楽しみ。

しかし著者は、ちょっと変わった宗教がらみの物語がお好きのよう。
そういう自分も、けっこう好きなんだけど。



バベルの塔    サグラダ・ファミリア    東京都庁
バベルの塔   サグラダ・ファミリア   東京都庁



主人公の鈴木正彦が勤めていた都庁。
見方によっては宗教的なシンボルにもとれる。


仮想儀礼/篠田節子の表紙
 

◆他サイトの感想◆
季節の切り抜き帳
Bright Vision



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呪眼連鎖/桂修司

◆読んだ本◆
・書 名:呪眼連鎖
・著 者:桂修司
・出版社:宝島社
・定 価:1,400円
・発行日:2008/12/17

◆評価◆
・伝奇ホラー度:★★★
・スリルとサスペンス度:★★
・鎖塚の呪い度:★★★

◆感想◆
弁護士の伊崎晋介は、北海道の北見刑務所の保護房で2件続けて起きた自殺を調査するため現地に向かう。所長等からの聴き取り調査で特別不自然な事はなかったが、死亡した2名が収容されていた四番保護房に入ってみると・・・

明治時代に行われていた、囚人による過酷な北海道開拓道路工事。そこで起きる事件。
平成の現在、北見刑務所四番保護房を発端とする呪いとしかいえないような不可思議な事件。
この二つが交互に語られ、空恐ろしい怪奇な物語が展開する。

怪奇な事件も呪いの元凶もそんなに目新しくないし、ストーリーテリングがずば抜けているわけでもない。
ホラーにロジックを組み入れようとしたり(ホラーじゃ無くなる)、やや強引な展開が目につく。

それなのに、何故か面白く読み進めちゃうんだな。
これが本書巻末の評にも書かれている「荒削りの魅力」というやつか?
なんだか分からないけど、どんどん読んじゃう。

不思議だ。
呪いの力か?



鎖塚
鎖塚



明治時代に造られた北海道開拓道路は囚人道路とも呼ばれ、各国な労働により多くの囚人が死亡したとのこと。
その亡くなった囚人工夫の上に土をかぶせてできた土饅頭が鎖塚。

現在の生活は、過去の人々の血の上に成り立っているのだなあ。


呪眼連鎖/桂修司の表紙
 


◆他サイトの感想◆
映画細胞~CinemaCell
季節の切り抜き帳


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造花の蜜/連城三紀彦

◆読んだ本◆
・書 名:造花の蜜
・著 者:連城三紀彦
・出版社:角川春樹事務所
・定 価:1,800円
・発行日:2008/10/31

◆評価◆
・誘拐ミステリー度:★★★★
・多段落としの技度:★★★★★
・体感的、身体的、感覚的文章度:★★★★★

◆感想◆
スーパーの駐車場に停められた国産車から、香奈子は目を離せなかった。十分前、息子の圭太の手を引いて幼稚園を出た時から、その車につけられていたような気がするのだ・・・

これはなかなか凝った誘拐ミステリー。
のっけから前置き無しに誘拐劇がはじまって、読みはじめると止まらない。
一体全体どう展開するんだ? コイツは怪しいんじゃないか? こいつはどうなんだ? とか深く考える余裕もなく、グイグイ読まされる。

おまけに予想もつかないどんでん返し技の連続だ。
よく考えたなあ。
誘拐もの小説は沢山あるけど、今までにない誘拐モノを書こうとする著者の意欲に感心する。

そんな意欲的なミステリーを、さらに面白い小説として味付けしているのは、著者らしい官能的ともいえる文章。
その文章の虜となっている著者のファンも多いと思うが、ミステリーというロジカルな小説と、体感的・身体的・感覚的文章が混交して、一種異様な小説世界に。
ミステリーとしてはやや弱い部分も、登場人物達の感覚的な表現に納得させられちゃうのだ。

さすがだ。
ミステリーとしても物語としても、読書に没頭できる小説。



蘭
蘭ミュージアム・高森



「造花の蜜」には造花の蘭が描写されるんだが、蘭の特徴を見るとますます本書の題名と内容が意味深に。

・こん虫が、蘭の花に訪れたら確実に花粉を運んでもらえるように、花粉塊の柄(え)の先はネバネバしている。
・花から強い香りを出して、蜂を花の中へと誘い込む。
・オフリスという蘭は、ある種類のメス蜂にそっくりな花をつけ、オス蜂を誘う。また、色や形がメス蜂に似ているだけでなく、フェロモンを分泌している。

おおっ、恐ろしや蘭!
きれいな花なのに悪女のよう。
でも(だから?)魅力的で蠱惑的 。


造花の蜜/連城三紀彦の表紙
 

◆他サイトの感想◆
棒日記V -I will carry on-
Mのミステリな日常
悲しいですサンタマリア
ミステリ畑


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