だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

詩羽のいる街/山本弘

◆読んだ本◆
・書 名:詩羽のいる街
・著 者:山本弘
・出版社:角川書店
・定 価:1,800円
・発行日:2008/9/30

◆評価◆
・ちょっといい話し度:★★★★
・人を幸せにする女性/詩羽ネットワーク度:★★★★
・元気が出る/幸せになれる/嬉しくなる度:★★★

◆感想◆
公園でスケッチをしているたマンガ家の卵飯塚陽生は、子供たちに囲まれて楽しそうにしている女性と出会う。彼女は「ねえ、これからデートしない?」と声をかけてきて・・・

突然見知らぬ女性にデートを誘われいぶかる陽生であったが、彼女(詩羽)と街中をデートするうち、彼女の持つ人と人を繋ぎ合わせる力、人に深切にし幸せにしようとする彼女の行動、他人の秘めた能力を見つけ出し引き出す能力。
そういった人と人の繋がりを大切にしみんなを幸せにしようとする詩羽に、感化される。

ちょっとファンタジックな連作短編小説。
インターネットというちょい無機的なネットークに対するアンチテーゼとも読めるし、人間は本来善であるという性善説の敷衍あるいは青少年にたいしての啓蒙とも読めるし、ただ単に「もっと実社会でみんな仲良くすれば幸せに暮らせるよ」と言ってるようでもある。

ま、ちらちら見える人間や文化に対する批評(ちょっと「と学会」入ってる)は別にして、詩羽という女性が魅力的でいいぞ!

売れないマンガ家を元気づけたり、自殺しようとしている少女を助けたり、悪い事をする男を改心?させたり。
八面六臂の活躍だ。それでいて脇役。

彼女は悪い心を糾す神の化身か?
オタクの女神?


モノリス
モノリス


ブログ炎上、コスプレ、ティコ磁気異常1号とかも題材になってたりして、けっこうマニアックな部分もある「詩羽のいる街」。
著者の小説には「SFに対しての愛」がこもっているが、本書にはさらに偏愛、マニアな人への慈しみも感じられるぞ!
ステキだ!


詩羽のいる街/山本弘の表紙
 

◆他サイトの感想◆
山本弘のSF秘密基地
猫は勘定にいれません
鳥かごLab

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なみのひとなみのいとなみ/宮田珠己

◆読んだ本◆
・書 名:なみのひとなみのいとなみ
・著 者:宮田珠己
・出版社:朝日新聞社
・定 価:1,500円
・発行日:2008/9/30

◆評価◆
・爆笑エッセイ度:★★★★★
・元気が出る、悩んでどうする度:★★★★★
・ナイーブな人生観とペーソス度:★★★★

◆感想◆
著者の紀行エッセイ以外の、爆笑エッセイ集。

宮田珠己、面白いなあ。
なんか飄々とした文体と、予想もしていないような単語の面白インパクトは、著者の才能。
この文章センスはすばらしい!
間違っても電車の中で読んじゃ行けない。
「ガハハハ」と大笑いし、隣近所に座っている人の迷惑になるし、本人もちょっと恥ずかしくなる。

内容は、妊娠した妻の代わりにナプキンを買いに行ったりする冒険談?や、血中酸素濃度過多で叫んだ話しとか、レントゲンに写らないナイーブな病気とか、このままではオレの人生はダメだ!と一念発起し「写仏の通信講座」をする???話しとか。

ちょっと人生に悩んでいながらも、本当はむちゃくちゃ自由人にみえる著者の爆笑エッセイだ。

人生に疲れ気味だったり、将来の不安に押しつぶされそうな方、必読!
元気が出るし、悩んでる必要なんかないっ!って思わせてくれる本だ。


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工場萌え



「なみの ひとなみの いとなみ」の中に、工場萌えな内容が。
煙突や複雑な配管などの、工場の外観に魅せられる「工場萌え」
けっこうコアなファンがいて、本も出版されてるし、工場鑑賞ツアーなるものも!

世の中には変な?モノを愛でる人々がいるけど、家具とか小物雑貨は四角張っていないとダメな自分も、ちょっと変かも。
テーブルの角が丸いカーブになってたりするのは許せない!
ピシッと直角でないとダメだ。
丸っこい電話機とかくりくりした電卓とか、なんかいかにも女性好みっぽい丸まっちいデザインのモノは、ふにゃふにゃした感じで受け入れられない!

変?


なみのひとなみのいとなみ/宮田珠己の表紙
 


◆他サイトの感想◆
WEB本の雑誌
~爆心地より愛を込めて~
タマキンガーの部屋

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今日の特集/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:今日の特集
・著 者:戸梶圭太
・出版社:中央公論新社
・定 価:1,700円
・発行日:2008/9/25

◆評価◆
・激安TV取材の裏側度:★★
・激安登場人物度:★★
・激安事件の真実度:★★

◆感想◆
TVの取材クルー4人を主人公にした報道番組の裏側小説。
トカジらしくチープで激安な取材陣。一面TVノンフィクションの真実を見たような気にさせる。
また、取材される側も取材クルーを上回るようなトンデモぶり。
すばらしい。

中盤までは比較的まともな?展開だが、ラストは一気にエスカレート。
???トカジらしくない??? と思っていた読者も、納得のハチャメチャブッ飛びぶり。
夏休みの課題図書には絶対ならないだろうB級小説だ。

それにしてもこんな小説を書き続ける著者のバイタリティに拍手。
読み終わったとたんに、内容忘れてるけど。

トカジのコアなファンはお見逃しなく!
そうじゃない方は見逃してください!!


ゴミ屋敷


戸梶圭太の公式サイト「トカジャングル
著者の小説はジャンキーぽいが、このサイトも同じようなニオイがする。
画面を飾るイラストはヘンテコだし、映画や本の紹介ページもゴミ屋敷みたいな雑多で無秩序な感じ。
でもそこが作風というかキモなんだなあ。


今日の特集/戸梶圭太の表紙
 

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穂足のチカラ/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:穂足のチカラ
・著 者:梶尾真治
・出版社:新潮社
・定 価:2,000円
・発行日:2008/9/20

◆評価◆
・少年少女向けSF度:★★★★
・安定と調和度:★★★
・かわいいぞ、穂足度:★★★★★

◆感想◆
うだつの上がらない営業マン海野浩は、目覚めた布団の中でため息をつく。また憂鬱な一日が始まるのだ。家族は誰も起きてこない。ひとり朝食をとり玄関に向かおうとすると、いつもは寝ているはずの穂足が。「じゃあ穂足。ジィパパ行ってくるからね」と声をかける。「いってらっしゃい。でもジィパパ、恐いリュウががいるからね。危ないよ」・・・

うだつの上がらない父親浩。パチンコ好きの母親月代。
引きこもりの長男太郎。
痴呆症の祖父十三郎。
いつかステキな男性が現れると思ってる娘七星。
海野一家はそれぞれが問題を抱え、崩壊寸前。

そんな中で唯一の救いは、七星の息子穂足(ほたる ♂ 3歳)。
なんの邪気も損得もなく、海野家の全員に愛嬌をふりまく穂足。
みんなにかわいがられる穂足。
ところがそんな穂足には、とんでもないチカラが!!

著者らしいリリカルでファンタジックでハートフルな少年少女向けのSF小説。
少年少女向けだけど、大人が読んでも心が和むな。
こんな風になったら理想的だよなぁ。

それにしても、穂足の描写がいい!
ニコニコと笑顔をふりまいて、聞き分けが良く、素直で愛らしい穂足。
こんなかわいい子供がいたら、最高だな。
おまけに、とんでもないチカラもあって。

少年少女にオススメなのはもちろんだけど、「オトナの事情」でお疲れ気味のお父さんやお母さんもどうぞ!
ひょっとすると穂足の不思議なチカラが移り、シアワセになれるかもしれない。


ブルーベルベット


「穂足のチカラ」に登場する穂足は、赤いビロードの布があると安心する。
ライナスの毛布みたいな。
本書とは全然関係ないけど、デビット・リンチ監督の映画「ブルーベルベット」に登場するアブナいデニス・ホッパーも、確かベルベットを銜えていたような記憶が・・・
ベルベットは妙なチカラと関係あるのか?
著者が好きなだけか。

穂足のチカラ/梶尾真治の表紙
 

◆他サイトの感想◆
takoponsの意味

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カラット探偵事務所の事件簿1/乾くるみ

◆読んだ本◆
・書 名:カラット探偵事務所の事件簿1
・著 者:乾くるみ
・出版社:PHP研究所
・定 価:1,400円
・発行日:2008/9/30

◆評価◆
・謎解きミステリー小説度:★★
・コミカルミステリー小説度:★★★
・ハートウォーミングミステリー小説度:★★★

◆感想◆
「あなたの頭を悩ます謎を、カラッと解決いたします」という宣伝文句の探偵事務所。浮気調査や信用調査は苦手とする、謎解き専門の探偵事務所だ。所長の古谷と助手の井上が、今日も事務所で暇を持て余していると・・・

コミカルでハートウォーミングなミステリー短編連作集。
サム・スペードやフィリップ・マーロウが登場するミステリー好きの助手井上と、関係者全員を集めて「さて、犯人はこの中にいます」みたいなミステリーが好きな所長古谷。
デコボココンビ風の2人がはじめた探偵事務所に、ぽつりぽつりと相談が舞い込む。

 ・未開封の卵のパックから、中身の卵だげがなくなって
 ・家宝の在処をしめす三首の和歌に込められた暗号
 ・団地にばらまかれた怪文書

こんなナゾをカラッと解決した顛末記だ。

6つの短編とも、事件の謎解を解き明かしながら事件の裏にある登場人物の心を優しく解決させるという、ほんわかムードのミステリー。
なかなかうまいぞ!
ストーリーもシンプルで癖がなく、とっても読みやすい。
うららかな休日の午後にはもってこいだ。

乾くるみというと「イニシエーション・ラブ」が印象深いが、そういうどんでん返し的な読み方はしない方がいいだろう。
主人公と一緒になって、ああでもないこうでもないと、ぼんやり謎を解くのが正しい読み方だな。
あまり過大な期待をしない方がいい。

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なぞなぞをひとつ。

  まごはまごでも、生まれてないまごってなーんだ?


  答え:ごまた(←逆から読んでね)


カラット探偵事務所の事件簿1/乾くるみの表紙
 

◆他サイトの感想◆
最後の本たちの国で
ミステリあれやこれや

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