だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

妙なる技の乙女たち/小川一水

◆読んだ本◆
・書 名:妙なる技の乙女たち
・著 者:小川一水
・出版社:ポプラ社
・定 価:1,400円
・発行日:2008/3/31
     
◆評価◆
・ソフトSF(SMじゃないよ)度:★★
・頑張る女性たち/(生き甲斐?男勝り?)度:★★
・女性向けハッピーエンド小説度:★★

◆感想◆
軌道エレベータの基地となっているリンガ島、海岸線に接続されたメガフロートの雑居ビルで、京野歩は嫌々ながら携帯食器のデザインをしていた。いつかは何かを成し遂げようと思いながら…

軌道エレベータの基地となった南国の島。そこには宇宙産業の基幹となる企業を始め、ありとあらゆる企業が進出し巨大な都市となっている。
そんな最先端にして雑然とした島で、活き活きとそしてバイタリティにあふれた女性を主人公にした連作短編集。

登場するのは駆け出しのデザイナー、小舟タクシーの女艇長、様々な人種の子供たちを預かる保母…。
みんな悩みはあるものの、とっても生き生きしてる。
何か夢を持って生活するというのはいいもんだなぁ、と感じさせる小説だ。

背景はSFだけど、内容はそんな感じで全然SFじゃない。そこが不満といえば不満だが、「asta*」という雑誌への掲載という条件のためなのだろう。

現状に不満を抱いている、あるいは今の生活が面白くてしょうがないという女性読者向けか?

この女性なら嫁に迎えたいと思うヒロインがいなかったのは、作者の趣味と自分の趣味が違うってことかな。

妙なる技の乙女たち/小川一水の表紙
 

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狐火の家/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書 名:狐火の家
・著 者:貴志祐介
・出版社:角川書店
・定 価:1,500円
・発行日:2008/3/31
     
◆評価◆
・密室ミステリー小説度:★★
・ユニークな登場人物度:★★
・微妙なユーモア度:★★

◆感想◆
谷間の道を走って家にたどり着いた西野は、部屋に入ろうとした時強烈な違和感に襲われる。そして奥座敷の襖を開け放った西野が目にしたのは、娘が死んでいる姿だった…

硝子のハンマー」で登場した、美人弁護士の青砥純子と防犯ショップ店長にして元ドロボーの榎本径を主役とした密室ものミステリー。
なかなか凝った密室を考えだしているが、ピンとこない。
著者の思惑が空回り気味だ。
シリーズ前作の「硝子のハンマー」は面白かった印象があるんだが…

強気で自称美人の青砥純子も、冷静沈着な榎本径も、もうちょっとハチャメチャな性格でも良かったかも。
そこはかとないユーモラスな表現や展開が、二人の性格と相まって盛り上げる展開だったら嬉しい。

最後の一編は楽屋落ちというか投げやりというか。
でもこの「犬のみぞ知る」が一番著者の気持ちがわかって面白かった!

それはさておき、ウヘッと思ったのは「黒い牙」のワンシーン。
この短編はクモ(昆虫というか脚が8本あるやつね)が重要なポイントとなっているんだが、女弁護士も主人公の一人である夫を殺された未亡人も、クモが大の嫌いという設定。
それがあんなことをっっ!!

自慢する訳じゃないが自分はゴキブリが大嫌いで、二人の女性のクモ嫌いはとってもよく理解できるんだが、あんなことをするとはとても考えられないっっ!
ゾゾーッ!!
このシーンだけは、ホラーだ。

狐火の家/貴志祐介の表紙
 

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アイスマン。ゆれる/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:アイスマン。ゆれる
・著 者:梶尾真治
・出版社:光文社
・定 価:1,600円
・発行日:2008/3/25

◆評価◆
・少女向け恋愛ファンタジー度:★★
・相思相愛の月下氷人(キュービッドの苦悩)度:★★★
・恋人や友達や親っていいなあ!度:★★★★

◆感想◆
祖母の形見の文箱にあったまじないの古文書。高校生だった知乃は面白半分に友人二人とまじないの儀式を行う。そのまじないは、特定の男女を相思相愛にさせるというものだった…

カジシンワールド炸裂のファンタジック恋愛小説。
主な登場人物は、まじないで恋愛を成就させることができる知乃と、彼女の親友二人。知乃の呪力は自分にはかけられない、というところがミソだ。

物語の内容は30代の独身女性となった3人の、仕事や恋愛や親のことについてのあれやこれが描写されるが、焦点は3人の恋愛模様と知乃の呪力。

別にこれっていうインパクトのある物語じゃないのに(30代の女性の割に高校生みたいな感じだし)、カジシンにかかるとこれがとっても抒情的でメランコリック少女みたいな雰囲気になってしまうから不思議だ。

展開は予想通りなのに、ほろっときたり微笑んだりと、著者のファンは見逃せない一冊。
純真な女子高生と、メランコリックなオヤジにもおすすめだ!

アイスマン。ゆれる/梶尾真治の表紙
 

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For You/五十嵐貴久

◆読んだ本◆
・書 名:For You
・著 者:五十嵐貴久
・出版社:祥伝社
・定 価:1,800円
・発行日:2008/3/20
     
◆評価◆
・日記に書かれた青春/雑誌編集者の日常度:★★★
・謎の転校生/曖昧な恋愛度:★★★★
・ドラマチックどんでん返し度:★★★★

◆感想◆
幼い頃に母親を亡くした朝美は、おばの冬子に育てられる。成人してからも母親のように、また姉妹のように頼りにしてきた冬子が、突然くも膜下出血で倒れ…

映画雑誌の編集者として働く朝美は、亡くなった冬子の高校生時代の日記を見つける。
物語は、現在の朝美の編集者としての忙しい日常と、冬子の日記が交互に描かれる展開だ。
朝美の仕事や恋人との描写もなんだか普通だし、冬子の日記だって女子高生がこんな小説まがいの日記を書くかよ、とか思いながら読み進む。
ちょっと感傷的になったりしながら青春のほろ苦気分を楽しめる内容だが、これで著者の小説テクニックがなかったら、つまらない小説になちゃうんじゃないの? それにこの2部構成はどうなるんだ? とか思っていると、終盤で大どんでん返しが!
やや説得力に欠けるがドラマチックだ!

多彩な小説を書く著者だが、流行作家の作風とテクニックを身につけて、もう何でもこい!みたいな風格。

For You/五十嵐貴久の表紙
 

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猫と針/恩田陸

◆読んだ本◆
・書 名:猫と針
・著 者:恩田陸
・出版社:新潮社
・定 価:1,200円
・発行日:2008/2/20

◆評価◆
・ミステリアス戯曲度:★★★
・疑心暗鬼となる仲間たち度:★★★★
・誰が誰やら度:★★

◆感想◆
喪服を着た30歳代後半の男女5人。久しぶりの邂逅に、友人達の噂話に花が咲くが…

恩田陸の初戯曲。08年に劇団「キャラメルボックス」が上演した際の台本だ。
戯曲でありながら、恩田テイスト満開のミステリアスな展開。

喪服姿の5人は、いったい何を目的に集まったのか?
友人の死、不自然な依頼、盗まれたフィルム。
密室の中で、しだいにぎこちなくなる会話と疑心暗鬼。

登場人物の名前が「サトウ」「タナカ」「ヤマダ」といったありふれたもののため、誰が誰やらさっぱり分からないが(舞台で見れば一目瞭然だろうが)、そんなことは気にしなくてもミステリー&サスペンスな展開でググッとくる。

ラストは虚実の入り交じった不条理感ただよう結末で、演劇っぽいなぁ。

「猫と針日記」と題したエッセイもついて(はじめての戯曲に四苦八苦している様子が印象的だ)、著者のファンには見逃せない一冊だ。

猫と針/恩田陸の表紙
 

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