だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

時砂の王/小川一水

◆読んだ本◆
・書 名:時砂の王
・著 者:小川一水
・出版社:早川文庫
・定 価:600円
・発行日:2007/10/25

◆評価◆
・時間遡行戦闘SF度:★★★★
・国家と個人/人間とアンドロイド度:★★★
・ああサヤカ、君の記憶がかすんで行く!度:★★★★

◆感想◆
メッセンジャー知性体として覚醒したオーヴィル。彼の任務は、なぞの戦闘機械により26世紀に滅ぼされた地球を、時間遡行し対峙応戦し守ろうとするものだった…

太陽系外からの侵略者(増殖型戦闘機械)により、太陽系文明は壊滅的な被害を負う。これに対抗するため人類がとった手段は時間軸を遡り、侵略者が侵入間近の時を狙って殲滅しようというもの。しかし侵略者側も時間軸を遡行し、無限とも思われる戦いが始まる。

人類を守るために覚醒したオーヴィルの、サヤカとの出会いと戦う意味についての苦悩。
超越的な敵がいなければまとまらないという、人類の愚かさ。さらにその中でも繰り広げられる仲間内の謀略。
最後の砦となった邪馬台国での戦い。そしてオービルと卑弥呼の関係。

邪馬台国の時代が主な舞台となっているが、メッセンジャー達(アンドロイドね)と各時代の登場人物達の壮絶な戦いが描写される。(基本はチャンバラか?)
一方アンドロイドの人間的側面をテーマにした、非常に情緒的な描写もあったり。(往々にしてSF小説のアンドロイドは人生の意味を深く考える)
取り立てて新しいSF的要素があるわけではないし、歴史改竄のパラドックスや並行世界に関するハードSF的なロジックはなし。
しかーし、そっちに向ける著者のエネルギーは、生き生きとした登場人物や躍動感のある物語の描写に向けられ、これが大成功。

久々に面白いSFを読んだなぁ。っていうか、SF自体久々なんだけど。

時砂の王/小川一水の表紙
 

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実録・アメリカ超能力部隊/ジョン・ロンスン

◆読んだ本◆
・書 名:実録・アメリカ超能力部隊
・著 者:ジョン・ロンスン
・訳 者:村上和久
・出版社:文春文庫
・定 価:629円
・発行日:2007/5/10

◆評価◆
・超能力兵器+トンデモ戦略度:★★★★★
・突拍子もないものが世界を動かす度:★★★
・深夜の戦争ルポルタージュTV風度:★★★

◆感想◆
アメリカに実在した超能力部隊と、その関係者へのインタビューからなるノンフィクション。

のっけからアメリカ陸軍司令官の、壁を通り抜けようと真面目に奮闘する行動にビックリクリクリ!
量子論とかが思考の背景にあるならまだ分かるような気がするけど(分からないけど)、壁を通り抜けられない理由を「心を正しい状態に持っていけなかったせいだ」とするあたりに、このアルバート・スタッブルパイン三世少将の生き様を見た。
すばらしい!

続けてユリゲラーがアメリカ政府の超能力スパイであったことや、山羊を睨み殺そうとする話など、これで本当に戦争に勝てるのか?と思うような奇抜な戦略がてんこもり。(ネバネバで固めるとか、恐竜バーニーの音楽攻めとか)

しかしこれが実戦で使われたことがあるから驚く。

あらゆる突拍子もないものは「馬鹿じゃないの」とはじめは思われるが、そこに有効性があると分かれば常識となる。
戦争に限らず、業界の先端を牽引するのは若者の軽薄な行動だったり、奇抜な製品だったり突拍子もない考えだったりするんだなぁ。
ソニーだって昔「エスパー研究室」があったくらいだし。
と、変なところで感心。

実録・アメリカ超能力部隊/ジョン・ロンスンの表紙
 

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天和をつくれ/阿佐田哲也

◆読んだ本◆
・書 名:天和をつくれ
・著 者:阿佐田哲也
・出版社:小学館文庫
・定 価:552円
・発行日:2007/10/10

◆評価◆
・麻雀小説度:★★★
・アウトロー度:★★
・一風変わったアンソロジー度:★★

◆感想◆
「文庫未収録短編集」の文句に期待して購入。
小説の背景がやや時代遅れだし、なんだかSFチックな短編もあったりして、期待したほどのアウトロー度はなかったなぁ。
麻雀放浪記」の感動を期待しちゃいけないけど、自分には阿佐田哲也印はギャンブル小説の代名詞。やっぱり期待してしまう。

そうはいっても「ちびっこバイニン譜」の泣かせる落ちや、「地獄の1丁目」のバイニンには仲間なんかいないんだぜ!的な展開は、往年のギャンブル小説を思い起こさせる出来だ。

麻雀放浪記」、また読んでみるかな。

天和をつくれ/阿佐田哲也の表紙
 

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犬身/松浦理英子

◆読んだ本◆
・書 名:犬身
・著 者:松浦理英子
・出版社:朝日新聞社
・定 価:2,000円
・発行日:2007/10/30

◆評価◆
・暗めのファンタジー度:★★
・犬に生まれ変わる度:★★
・性的な関係とは?度:

◆感想◆
可愛く優しく清い犬に生まれ変わりたいと、子供の頃から思っていた房恵。自分は性同一性障害ならぬ種同一性障害なのでは。そんな彼女は、自分の愛犬のことを第一に考える人の犬になりたい、と強く思い…

出てくる地名や橋の名前、さらにはカクテルの名前まで犬がらみという、犬づくしの小説。
もっとファンタジックな小説かと思いきや、設定はファンタジーだけど内容は「性」をテーマにしたどろどろぐちゃぐちゃ小説。

著者がテーマとする人間のセクシュアリティを際立った形で浮き彫りにするには、無辜で純真に見える犬と人間のそれを比較するのは有効かもしれない。
だけどなんかもったいない。
せっかくうまい設定なんだから、もうちょっとハッピーでファンタジックな展開にすれば、と考えるのは自分だけか?

感情移入できない登場人物や、あまりにも現実味のないシーンにも辟易。長いし。

ただ犬好きの読者には、犬に生まれ変わるという設定とその描写にうっとりするかもしれない。

犬身/松浦理英子の表紙
 

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いのちのパレード/恩田陸

◆読んだ本◆
・書 名:いのちのパレード
・著 者:恩田陸
・出版社:実業之日本社
・定 価:1,500円
・発行日:2007/12/25

◆評価◆
・不思議短編小説度:★★★
・幻想と怪奇のイメージ先行度:★★
・結末があるようで無いようで度:★★★

◆感想◆
恩田ワールド全開の不思議短編集。

知らない言葉のイメージが具現化する幼い兄弟。納屋の扉の隙間を恐れ、しだいに隙間という隙間すべてが怖くなる男。ロト7に当籤した男の恐怖。

奇抜でファンタジックな内容と、そこはかとない恐怖の味付けが最高。
いろんなスチュエーションをよく考えるものよなぁ。

なかでも一番インパクトがあったのは「観光旅行」。
なんたって地べたからあんなものが生えてくれば、そりゃ驚くって。
ちょっと前に読んだ「冷凍みかん」テイストのショートショートで、こんな所が世の中にあれば、俺だって観光したくなる。

いのちのパレード/恩田陸の表紙
 

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