だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

楽園/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書 名:楽園
・著 者:宮部みゆき
・出版社:文芸春秋
・定 価:上1,619円 下1,619円
・発行日:2007/8/10

◆評価◆
・スーパーナチュラルミステリー度:★★★★
・特異な能力により壊れていく/創られる人生度:★★★★★
・事件により壊れ続ける/再生する人生度:★★★★★

◆感想◆
フリーライターの前畑滋子を訪ねて来た萩谷敏子は、事故で亡くなった息子に超能力があったのかどうか調べて欲しいと依頼する。彼女の息子は、ある殺人事件のシーンを警察が捜査する前に絵に描いていたというのだ…

宮部みゆき久々のスーパーナチュラルを扱ったミステリー。
初期の「龍は眠る」(これは傑作!)とかの超能力モノは、今までのような超能力者のスーパーぶりを描くのではなく、彼等の人としての苦悩を描いているところがとても新鮮だった記憶があるが、本書に登場する等という事故死した少年も、心根のやさしい普通の男の子として描かれる。

しかしこの不思議な力を持っている?少年が、すでに死亡しているというところがミソ。そしてもう一人の中心人物も死亡しているし。
物語の中心的登場人物がいないのに、それをどう描くのか。

一種「火車」のような構成で、少年と彼の視た事件、事件を取り巻く人物たちを、ライターの前畑滋子が調査するという展開で、しだいに事件の核心に近付いて行く。

さすがにうまい!
構成や展開は常套的なものだけと、登場人物は活き活きているし、良い人ばっかりだし、ほろっとくるシーンもあるし。
陰惨な事件をカバーするような、心あたたまる登場人物の配置。この辺が著者の持ち味だなあ。

予想したほどスーパーナチュラルな内容ではなかったところが残念ではあるが、あえて事件を背景描写することで対岸にある人の心を描写した、著者らしいミステリーだっ。

楽園/宮部みゆきの表紙
  

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サニーサイドエッグ/荻原浩

◆読んだ本◆
・書 名:サニーサイドエッグ
・著 者:荻原浩
・出版社:東京創元社
・定 価:1,800円
・発行日:2007/7/31

◆評価◆
・ユーモアハードボイルド度:★★★★
・ユニークな登場人物たち度:★★★★★
・大笑い/泣き笑い/大泣き度:★★★★
・これを読めば猫探しのプロになれる度:★★★★★

◆感想◆
しかたなくペットの捜査も行う、探偵の最上。ある日ペットを探して欲しいと訪ねて来た女性は、和服を着た美人…

これは面白い!
フィリップマーロウを気取る最上俊平。クールなようで分かりずらく面白くないと評される彼のジョークに大笑いだ。
マンションのポストに尋ね犬のチラシを入れていると、「あなた何やっているの」と住人に見とがめられた彼は「ご安心ください。トースターと間違えてパンを突っ込んでいるわけじゃない」
ウッハッハ、思わず大声で笑ってしまう。
全編この調子でユーモアたっぷりに進むんだが、そこにやんちゃな探偵アルバイトが入り込んだり、動物虐殺事件が起きたりと、だんだんハードボイルド?な展開に。

事件は二転三転するものの、「都合よすぎない?」と思わないでもないが、エンターテイメントとしては文句無し。
最上のドジで間抜けぶりに笑い、アルバイト探偵茜のおませな行動にニヤニヤ。
ハラハラドキドキのサスペンスと、ほろっとくるシーンも用意されているし、至れり尽せりの面白小説だ。

サニーサイドエッグ/荻原浩の表紙
 

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旧怪談/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書 名:旧怪談
・著 者:京極夏彦
・出版社:メディアファクトリー
・定 価:952円
・発行日:2007/7/6

◆評価◆
・江戸時代怪談小話度:★★
・むかしの都市伝説度:★★★
・中学校 休み時間の話題度:★★

◆感想◆
江戸時代に書かれた「耳袋」の中から、怪し気な話を著者がアレンジした怪談短編集。

全部で35編あり、各短編はあっというまに読み終わる長さ。
漢字にはルビがふってあるし、原文も掲載されていたりと、小中学生向きの作りだけど、大人だって興味深く読める。

怖い怪談をゾクゾクしながら読むというより、江戸時代の文化や風習を「ヘエ~」とか思いながら読む。

こないだまで(今も?)流行っていたガングロだって、100年後の人が見たら何かのおまじないか奇習と思うかも。
ガングロにまつわるオトロシイ都市伝説なんていうのもあったりして、100年後の京極夏彦みたいな人がガングロ怪談を書いて、100年後の俺みたいな人が「ヘエ~」とか思いながら読んだりするかもしれない。

なんでも記録に残しておくと、物好きな人が面白くアレンジしたり広めたりするかもしれないってことだな。

旧怪談/京極夏彦の表紙
 

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木洩れ日に泳ぐ魚/恩田陸

◆読んだ本◆
・書 名:木洩れ日に泳ぐ魚
・著 者:恩田陸
・出版社:中央公論新社
・定 価:1,400円
・発行日:2007/7/25

◆評価◆
・本当はどうなのミステリー小説度:★★★★
・やっぱりそうなの恋愛小説度:★★★★
・これからどうなるの人生小説度:★★★

◆感想◆
初夏の夜、引っ越しのためあらかたの荷物を運び出してしまったアパートの一室で、一組の男女が向かい合っている。二人は明日の朝には、めいめい別の場所へと出ていくことになっているが、その前にきちんと話をしておかなければならないことがあり…

明日には別れることが決まっている男女の、ドラマチックでシリアスでミステリアスな夜話。ある男性の死と男女の別れにまつわる、恩田陸風のミステリー。

どうゆう展開なのか掴みにくい出だし、やや驚きの中盤、曖昧模糊とした結末。
著者らしい雰囲気のミステリーだ。

粗筋だけを聞いたら「なにそれ」って感じだけど、読者の経験や感情をずるずると引き出すような描写と、日常と非日常の狭間で浮いているような雰囲気で、恩田ミステリーに引き込まれてしまう。

著者の小説は、ぽわーんとしたあやふやで捕らえ所のないイメージと、ゾクッとするような描写が交錯していて、不思議感100%。
波長がぴたり合うと、とんでもなく小説に同化するが、本書は同化率50%くらいかな。

木洩れ日に泳ぐ魚/恩田陸の表紙
 

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