だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

パパとムスメの7日間/五十嵐貴久

◆読んだ本◆
・書 名:パパとムスメの7日間
・著 者:五十嵐貴久
・出版社:朝日新聞社
・定 価:1,700円
・発行日:2006/10/30

◆評価◆
・父娘のちょっと不思議な体験度:★★★
・ユーモアとペーソス度:★★★★
・一度は経験してみたい度:★★★★

◆感想◆
化粧品会社に勤める小原は新商品開発のプロジェクトリーダーとなるが、思うように事は運ばず、やや投げやり気味に。娘の小梅は、花も恥じらう女子高生。
憧れの先輩とのメールや会話に、心トキメイたり落ち込んだり。そんな2人にとんでもないことが…

今では普通の設定となった感のある心と体の入れ代わり。パパとムスメが入れ替わっちゃうことで起きるドタバタや胸キュンな事件が、オーソドックスに展開するんだが、これがけっこう面白い。

ありふれた手法でも、書き方によっては読者を惹き付けられるということだな。
著者お得意のテクニックといったところか。

ムスメの体や友人、憧れの先輩との接触に狼狽する(外見:娘/中身:父親)の姿や、会社でのオトナの事情にあきれたり困惑する(外見:父親/中身:娘)の気持ちがユーモラス。
展開もメリハリがきいている。
ちょっとホラーっぽい味付けもあったりして(このシーン、けっこうリアルに怖い)、全体的には爽やか父娘小説といった感じ。

高校生の娘を持つお父さんには、共感すること大。
ダサイ父親を持つ女子高生には、聞くのも怖いホラー的設定か?

パパとムスメの7日間/五十嵐貴久の表紙
 

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ブルー・ローズ/馳星周

◆読んだ本◆
・書 名:ブルー・ローズ
・著 者:馳星周
・出版社:中央公論新社
・定 価:上1,500円 下1,500円
・発行日:2006/9/25

◆評価◆
・犯罪小説度:★★
・堕ちて行く男度:★★★
・静から動へ/精神愛から欲望へ/相反する感情度:★★★★

◆感想◆
弁護士事務所の調査員徳永は、刑事時代の上司から娘の失踪調査を依頼される。
青いバラを作ることが夢だったという彼女の行方を調査するうち…

出だしはなんだか在り来たりの展開と雰囲気で、著者らしいパワーが無い。展開や人物描写も平板だ。
なんだか変だなあ、と思いながら後半に突入すると、徐々に動的そしてダークパワー炸裂!といった展開に。

物語が静から動へ、生から死へ、愛情から苦痛へと変化する様子は、少々書き方がガサツだが読ませる力はある。

でも考えてしまうのは、前作「走ろうぜ、マージ」から伺える著者の気持ち。
本書を書いている時期には、小説なんか書いている余裕は無かったのではないかと。

主人公の徳永が、精神的に脆いところのある女性に父性愛とも言えるような哀れみに似た感情を覚えたり、前半の展開に比べ後半が無謀なほど暴力的だったりするのは、著者の愛犬マージとの関係に由来する代償行為のようで、痛々しい。

勘ぐり過ぎかもしれないが、物語の描写や展開と主人公の厭世的な行為や内在する生(性)への欲求に、著者の自傷的な思いを感じてしまう。

ブルー・ローズ/馳星周の表紙
  

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四度目の氷河期/荻原浩

◆読んだ本◆
・書 名:四度目の氷河期
・著 者:荻原浩
・出版社:新潮社
・定 価:1,800円
・発行日:2006/9/30

◆評価◆
・ちょっと変わった少年ワタルの青春度:★★★★★
・青春ってあまずっぺー度:★★★★★
・オヤジも喜ぶ青春小説度:★★★★

◆感想◆
物心がついた頃から母子二人暮らしのワタル。幼稚園の園長から、その奇行を心配されクリニックへつれていかれるが…

みんなよりちょっと髪の色が薄くて、ちょっと成長が早くて、じっとしていられない性格のワタルは、幼い頃から周囲の友達と打ち解けられないことに悩んでいた。
みんなと違う自分は、いったい何者なのか?
そんな自らの問いかけに小学五年のワタルが出した答えは、「ぼくはクロマニヨン人の子供だ」

野生児っぽくエキセントリックな主人公ワタル。
彼の性格が最高に素晴らしいな。
みんなと違うところが恥ずかしかったり、逆に誇らしくもあったり。青年の抱える悩みが、ユーモラスにそしてセンチメンタルに語られる。

そしてなによりこの物語の良いところは、ワタルと同級生サチの交流。
彼等の出合いから、高校3年までの奇跡が爽やかに描写される。
友達から恋人へ、そして…

在り来たりの展開、と言ってしまえばその通りだけど、だからこそ水戸黄門みたいに安心して読めるっていうものあるし。

サチみたいな彼女がいたら、中学,高校生活もバラ色だなぁ、なんて想像しながら読んでいたら、自分がサチの曰く付きの父親と同じといってもおかしくない年令なのに気付き、ガクゼン。

そんな年代のおじさんも、夢中になって読める青春小説だっ。

四度目の氷河期/荻原浩の表紙
 

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狼花 新宿鮫9/大沢在昌

◆読んだ本◆
・書 名:狼花 新宿鮫9
・著 者:大沢在昌
・出版社:光文社
・定 価:1,600円
・発行日:2006/9/25

◆評価◆
・スリリングな犯罪小説度:★★★★★
・組織犯罪の仕組み度:★★★★
・かっこいいぜ!新宿鮫度:★★★★

◆感想◆
新宿中央公園で起きた外人どうしの喧嘩で、大麻を所持していたナイジェリア人が逮捕させる。捜査を担当した鮫島は…

うーん、久しぶりの鮫島は相変わらず正義感たっぷりの正直者。自分の信念を曲げずに誰とでも立ち向かう姿がかっこいいぜ!

今回のストーリーは、巨大盗品マーケットを独自に築き上げた国際犯罪者と、そのマーケットを狙うヤクザ組織、そして警察機構が三つ巴の駆け引きを繰り広げるというもの。
そこに、中国人の美人女性や警察内の対立(というか鮫島対香田の意地みたいな)があったりして、否が応でも盛り上がってしまう。

中国人女性明蘭が二人の男性に抱く気持ちと、鮫島=晶の関係を比べて読んだりするのもいいし(それにしても鮫島=晶のくだりは少なすぎ)、組織犯罪に関する仕組みを読み解くのも一考だし(京極堂入ってるんじゃない?)、それぞれの登場人物の思考をシュミレーションするもの面白い。

新宿鮫ファンは、お見逃しなく!

狼花 新宿鮫9/大沢在昌の表紙
 

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中央線で行く東京横断ホッピーマラソン/大竹聡

◆読んだ本◆
・書 名:中央線で行く東京横断ホッピーマラソン
・著 者:大竹聡
・出版社:酒とつまみ社(仮)
・定 価:1,400円
・発行日:2006/7/31

◆評価◆
・中央線各駅飲酒エッセイ度:★★
・飲んだくれ/ヘロヘロ度:★★
・腰の低い飲んべえ度:★★

◆感想◆
中央線の各駅でホッピーを飲み続け、返す刀で京王線の各駅でもホッピーを飲んでしまおうという、バカバカ飲んだくれ紀行。

なんで中央線か? 山手線じゃだめか
何故ホッピーか? 生搾りレモンサワーではないのか
毎日各駅で飲むのか? そんなことしなくても、毎日飲んでいるんじゃないか
集団で飲むのか? ひとりで飲むのか?

とか、いろいろ疑問はあるが、そんな細かなことを気にしてはホッピーは飲めない。
自分も居酒屋で飲んでいるつもりになって読むべし。
中央線および京王線沿線のホッピー好きが飲みに行きたくなるような居酒屋満載。肴に対しての居酒屋主人のこだわりや、客同士のほのぼの交流もあったりして、アットホームな感じ。
もっとハチャメチャに大暴れしても良かった気がするが、著者は飲んべえの割に腰が低い。 エライぞ!

中央線で行く東京横断ホッピーマラソン/大竹聡の表紙
 

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邪魅の雫/京極夏彦

◆読んだ本◆
・書 名:邪魅の雫
・著 者:京極夏彦
・出版社:講談社
・定 価:1,600円
・発行日:2006/9/26

◆評価◆
・殺人事件の連鎖度:★★★★★
・殺人とは? その形而上学的意味度:★★★★
・錯綜する捜査と真相度:★★★★★
・苦悩する関口(いつも)と榎木津(今回だけ?)心配する京極堂(友情か?)度:★★★★★

◆感想◆
榎木津礼二郎の見合い話しが、何故か相手から断られ続ける。理由が分からぬままに思案している時、見合い相手だった来宮家の次女が殺害されるという事件が…

連続する毒殺事件。礼次郎の見合い相手に何が? 錯綜する人間関係。いったい全体何が真相なんだ!? という待望の新作。

殺人に関する哲学的な考察とか、作家関口に対する遠慮のない論理的罵倒とか、昔話と伝説の違いとか、いつも通りの京極堂の蘊蓄がたまらなくヘヴィーで嬉しい。
作家関口も相変わらずの暗さで、幽霊っぽい味を出しているし。ちょっと違うのは探偵榎木津礼二郎の挙動。
非常識で大胆不敵で縦横無尽に支離滅裂な榎木津礼二郎が、今回はやや大人しい。いったいどうしたんだ! というところが本書のお楽しみ。ラストもちょっと泣かせるぜ。

物語は、連続する毒殺事件や複雑にからみ合いそうで合わない人間関係と、展開が進むにつれてどんどんこんがらがって、登場人物相関図にはやたらと関係を示す線が増えるばっかりに。
いいかげん面倒になって、あとはもう京極堂の憑物落とし的解決にお任せしようという気になるくらい。
それでもポイントを押さえて読むミステリーファンには、落としどころが読めるかも。

だた本シリーズの面白いところは、ミステリー小説の謎解きだけにあるわけじゃない。
人間の感情や物語の奥深さを、独特のまだらっこしくもアカデミックな語り口で描写しているところが、自分には強烈に刺激的で興味深いなあ。

各章の冒頭の語句や終わり方に統一感をもたせたりするところも、著者/京極堂の論理性と様式美を写し出しているようで、なんかステキだ。

邪魅の雫/京極夏彦の表紙
 

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