だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

もうひと押しができない! やさしすぎる人の心理術/ゆうきゅう&大和まや

◆読んだ本◆
・書 名:もうひと押しができない! やさしすぎる人の心理術
・著 者:ゆうきゅう&大和まや
・出版社:日本実業出版社
・定 価:1,200円
・発行日:2006/5/1
     
◆評価◆
・やさしい心理学入門度:★★★★
・自分を見つめなおす手法度:★★★
・人の心を見つめる方法度:★★★★

◆感想◆
まぐまぐに、膨大な発行部数を誇る「セクシー心理学」というメールマガジンがある。とてもユニークで語り口もユーモアに溢れ、いつも面白く読んでいるんだが、そのメルマガの発行者による人間関係に悩んでいる人向けの本。

仕事でうまくいかない。恋愛で困っている。生活でやる気がでない。
そんな人向けに、心理学の手法を用いて解決する方法をテーマごとに解説。

実は、ゆうきゆう氏の著書をまとめて五冊ばかり読んだのだが、本書は分かりやすい具体例とアカデミックな解説がうまく並記されており、万人向けといった感じ。
人間関係で悩んでいる人や、悩んでいる人を抱えて悩んでいる人には、解決の助けになるかも。

しかし、人の心はミステリアスのようで結構画一的。
心理学者の思いを寄せつけないようなオバハンとかいそうだけど、普通の思考はきちんと体系付けられていることに、あらためて感心。

同時に読んだ「癒しのスーパー心理術:EB」。  EB:自分の中の「理想の存在」EBとの会話で、周囲に流されず、強く、
    魅力的になるという 心理学のテクニック。(著者の開発した方法?)

このEBという手法、けっこう面白く使える。
何かを考えたり決めたりする時、今まで自問自答していたのを、自分の中のEBと会話するように。
本当の使い方とはちょっと違うような気もするが、ディープに思考するタイプの人には、そのマニアックさがうけるかも。
しかしこれって、「自分は王様だ」という唯我独尊的思考を補強してしまう恐れはないのか?

セクシー心理学 http://sinri.net/

もうひと押しができない! やさしすぎる人の心理術/ゆうきゅう&大和まやの表紙
 

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鴨川ホルモー/万城目学

◆読んだ本◆
・書 名:鴨川ホルモー
・著 者:万城目学
・出版社:産業編集センター
・定 価:1,200円
・発行日:2006/4/20
     
◆評価◆
・青春小説度:★★★★
・オニを使った戦争とは?度:★★★
・一風変わった魑魅魍魎小説度:★★

◆感想◆
ホルモー。それは4つのチームがオニを使って戦うゲーム。
普通には考えられない舞台設定の青春小説。

「鬼」という言葉から、京極夏彦やあまたのホラー小説を思い浮かべそうだが、これが大学生を主人公にした愛と笑いと友情の青春小説だから変わっている。

帯には「鬼や式神を使って、大学生が戦争ごっこ?」とあるけど、この「鬼や式神」を「ロボット」にすれば、NHKのロボコンに賭ける青春みたいな小説になるだろう。
鬼をもっとミステリアスに扱い、「戦争ごっこ」の本当の姿を人間の裏側の心理に結びつけるような展開にすれば、マジ怖ホラーにもなっただろう。

どこにでもありそうな青春小説を、「鬼」という実在しないモノの登場で妙に魅力的な小説にしている。著者のひらめきの勝利だ。

鴨川ホルモー/万城目学の表紙
 

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きみがいた時間 ぼくのいく時間/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:きみがいた時間 ぼくのいく時間
・著 者:梶尾真治
・出版社:朝日ソノラマ
・定 価:1,200円
・発行日:2006/6/30
     
◆評価◆
・タイムトラベルSF度:★★★★
・クロノス・ジョウンターならぬクロノス・スパイラル登場度:★★★★★
・愛と感動度:★★★★

◆感想◆
カジシンワールド炸裂の、タイムトラベルものSF短編集。

書き下ろしの表題作以外は過去に発表されたもの。タイムトラベル&純愛小説のアンソロジーといった体裁で、ファンにとっては「きみがいた時間 ぼくのいく時間」だけのために買うようになってしまう。
だけど、この「きみがいた時間 ぼくのいく時間」が素晴らしい。

大手企業に勤める秋沢里志は、ちょっとしたきっかけで出会った梨田紘未に惹かれていく。何度かデートを重ねたのち、里志は紘未にプロポーズをするが…

この後の展開がクロノス・ジョウンターしていて、素晴らしい!
小説の舞台も「クロノス・ジョウンターの伝説」と同じ設定で、これはもう感動するしかない。
純粋でひたむきな愛を感じたい方、「クロノス・ジョウンターの伝説」に感動した方には、是非ともおすすめ。

あまあまでロマンチック過ぎるけれど、これがタマラン!

きみがいた時間 ぼくのいく時間/梶尾真治の表紙
 

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時の“風”に吹かれて/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:時の“風”に吹かれて
・著 者:梶尾真治
・出版社:光文社
・定 価:1,600円
・発行日:2006/6/25
     
◆評価◆
・時間SF度:★★★★
・お笑い/とんでもSF度:★★★
・愛・懐古・献身度:★★

◆感想◆
著者らしいロマンチックで詩的な内容の短編集。
中にはウケ狙いのものもあるけど、センチメンタルな短編もあったりして、バラエティーに富んでいる。

表題作の「時の“風”に吹かれて」は、傑作「クロノス・ジョウンターの伝説」を彷佛とさせる短編。自分の琴線にビンビン響いてくる。
結末は期待したほど(期待し過ぎだ)ではなかったが、久々に著者らしいSFを楽しめたなぁ。

「それは無いだろう」といいたくなる爆笑おとぼけSFも、子猫が美少女に見えるというオタクおやじ系SFも、どの短編にもショートショート風のオチまでついているし。嬉しい。
「柴山博士臨界超過!」に一瞬だけ登場する、今を時めく女優にして見事な肢体を持つセックスアピールの権化、その名も「鳩桃そそり」。
そりゃ柴山博士も臨界を超えるっちゅーこっちゃ。

時の“風”に吹かれて/梶尾真治の表紙
 

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偉いぞ! 立ち食いそば/東海林さだお

◆読んだ本◆
・書 名:偉いぞ! 立ち食いそば
・著 者:東海林さだお
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,095円
・発行日:2006/6/15
     
◆評価◆
・B級グルメ評度:★★★
・日常の探検度:★★★
・偉大なマンネリ度:★★

◆感想◆
駅弁を食べるだけの旅、立ち食いそば全メニュー制覇、言葉の意味と、著者らしい食や日常のなんでもないものに潜むナゾを解きあかすエッセイ集。

丸かじりシリーズもそうだけど、本を読んでいるとなんか食べたくなってしょうがない。
本書の巻頭には全24種の駅弁が、カラー写真で掲載されていて、これがうまそう! 文と写真のダブル攻撃。 お腹ぐぅ~。

立ち食いそばの全メニューを食べようとしたり、一時ニセ温泉で話題になったホテルに行ってみたり、「ヤッホー」という言葉の意味を考えたりと、日常生活探検家には大いに刺激を受ける一冊だ。

偉いぞ! 立ち食いそば/東海林さだおの表紙
 

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第九の日/瀬名秀明

◆読んだ本◆
・書 名:第九の日
・著 者:瀬名秀明
・出版社:光文社
・定 価:1,700円
・発行日:2006/6/25
     
◆評価◆
・人工知能SF度:★★★
・人間の本性/ロボットの身体性度:★★★
・物語の力度:★★

◆感想◆
デカルトの密室」に前後して発表された短編集。

ロボットのケンイチを主人公に、尾形祐輔、一ノ瀬玲奈などの登場人物が配置されていることから、「デカルトの密室」を軸とした連作小説と見ることもできる。

AIと身体性、人間の本性、AIと神/宗教/痛み、といったテーマを中心に思弁的な記述がなされる一方、マッドサイエンティストたちの奇抜な実験や殺伐としたシーンが描写される。

テーマはとても刺激的で内容も深い。「デカルトの密室」に感銘を受けた人には、読みごたえ十分。
しかし、物語の舞台設定はやや強引。ちょっとというか相当現実離れしているし、B級な設定&展開だなぁ。B級が悪いわけではなく、思弁的なテーマとB級の舞台設定が、ちぐはぐな感じ。

ちらちらと垣間見える著者自身の作中世界も、自分はあんまりつきあいたくない。
著者も二足のわらじを履いたり小説作法でいろいろ悩んだりしているんだろうが、そうゆう問題は、主人公のケンイチに全部あずけるか、小説以外の日常で解決したほうがいいのでは。

第九の日/瀬名秀明の表紙
 

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もっとも虚しい仕事/戸梶圭太

◆読んだ本◆
・書 名:もっとも虚しい仕事
・著 者:戸梶圭太
・出版社:カッパ・ノベルス
・定 価:800円
・発行日:2006/6/25
     
◆評価◆
・B級ギャング小説度:★★
・変態キャラクター度:★★
・破れかぶれのどん詰まり度:★★★

◆感想◆
金に困った売れない役者の黒木は、大先輩の萩本から現金を強奪しようと画策するが…

クールトラッシュ」「ビーストシェイク」に続く、クールな一匹狼の鉤崎が主人公のギャング小説。
現金強奪という出だしの展開はあっさり流れて、話は思いもよらない方向にズンズンズレて行く。

役者同士の嫉妬、不倫、ヤクザの見栄といった安い人間の感情をさらりと書きながら、テンパッてる拳銃ぶっぱし男や変態爆弾男など、癖のある登場人物がユニークなのは、前作と同様だ。
ど派手&変態チックな最期はとっても強引で、シニカルに笑える。

他のトカジの小説では、どいつもこいつも安い変態野郎なのに、このシリーズの主役「鉤崎」だけは冷静沈着で感情を表に出さないクールなギャングに設定されている。
著者自身をクールな鉤崎に反映させているのか?
(やらなくてもいい仕事でも、やらなければ破滅する から?)

もっとも虚しい仕事/戸梶圭太の表紙
 

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