だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

壊れかた指南/筒井康隆

◆読んだ本◆
・書 名:壊れかた指南
・著 者:筒井康隆
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,571円
・発行日:2006/4/30

◆評価◆
・夢・老・終末を感じさせる短編集度:★★★
・スーパーウルトラくだらない度/大笑い:★★★★
・思いもつかない展開度:★★★

◆感想◆
筒井康隆、7年ぶりの短編集。
短編も短編、全部で30篇。あちこちの文芸誌に掲載されていたものを集約したバラエティに富んだ短編集。

 作家としての強迫観念
 社会的な著者の立場と自身の年令
 著者だから許される型破りの展開

いくつか特徴的なシーンが見られるが、「銀齢の果て」に比べるとシニカル。
著者の日常からヒントを得た題材が多いように思うし、そのためか登場人物に対して突き放した/疎外された印象を受ける。

そんな印象の中、素晴らしくくだらない短編があったりして、思わず大声で笑ってしまう。
普通、文章になったオヤジジョークで笑ったりしないんだが、それが笑ってしまうのは著者の文章テクニックなのか、短編のグレード落差のためなのか。

それにしても「小説に結末がなければいけないという法律はないのだ」と堂々と言ってのけるあたり、一種爽快。

壊れかた指南/筒井康隆の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

無痛/久坂部羊

◆読んだ本◆
・書 名:無痛
・著 者:久坂部羊
・出版社:幻冬舎
・定 価:1,800円
・発行日:2006/4/25

◆評価◆
・ミステリー/ホラー/サスペンス度:★★
・耽美的?グロテスク?度:★★★
・心神喪失者の犯行と責任の所在/医療のあり方度:★★

◆感想◆
灘区で起きた教師一家殺害事件。残忍な殺害方法と子供まで殺す手口から恨みによる犯行と思われたが…

教師一家殺害事件を軸とし心神喪失者の犯行と責任能力をテーマとしたストーリーに、患者を観察するだけでその病状が分かってしまうという医師が登場する小説。
ミステリーのようでもありホラーのようでもあり、どっちつかず。
展開もギクシャクしていて、一貫性がない。

著者の医学的知識をもとにした手術シーンや、医療の専門用語を尽くした描写などマニアックでいいし、患者を見ただけでその疾患が分かってしまうという医師の能力も、リアルに説得力あるのに、もったいない。
テーマを絞ってじっくり書けば、読みごたえのある小説になったのでは?

しかし、それはおいといても、後半の手術シーンは特筆もの。
スーパーリアルでおぞましい。
登場人物も類型的ではあるがみんな変態ぎみで、これだけ揃うと壮観ではある。
耽美的というよりグロテスクあるいは倒錯といった感じで、そっち方面に興味のある方にはおすすめか?

無痛/久坂部羊の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

トーキョー・バビロン/馳星周

◆読んだ本◆
・書 名:トーキョー・バビロン
・著 者:馳星周
・出版社:双葉社
・定 価:1,700円
・発行日:2006/4/20

◆評価◆
・裏金奪取合戦度:★★★
・策士策に溺れる/事件の裏に女の影度:★★★
・社会の裏側/金に群がるハイエナ度:★★★★

◆感想◆
暴力団のフロント企業に在籍する稗田と宮前。二人がカモにしようとしているのは、消費者金融ハピネスの総務課長だった…

消費者金融の裏側、フロント企業の実情、東西の広域暴力団。金の匂いに敏感なハイエナどもの姿。都会の裏側という著者得意の舞台で、裏金に群がる有象無象の姿が描かれる。

展開はゆっくりだが、金融業者と警察やヤクザとの繋がりなどさもありそうだし、策士策に溺れるといった展開や、ものごとの破綻の影には女が必ず関係するという戦国時代からの必定といってもいい落とし穴もじっくり書き込まれているためか飽きはしない。

消費者金融の総務課長という世間の裏側を知り尽くしたような男が、他のヤクザやヤクザまがいの登場人物に比べ、なさけない普通のオヤジに設定されているのも、興味深い。
傍役ながら重要な役割のクラブホステス紀香も、微妙な設定。

かつての著者なら、登場人物達は暗いパワーを暴力的に発散するヒトに変身するんだが、本書では変身しない。
楽園の眠り」でも感じたが、作風変わったよね。

変身したのは著者の方ってことか?

トーキョー・バビロン/馳星周の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

レディ・ガンナーと二人の皇子/茅田砂胡

◆読んだ本◆
・書 名:レディ・ガンナーと二人の皇子
・著 者:茅田砂胡
・出版社:角川スニーカー文庫
・定 価:上495円 中495円 下514円
・発行日:上2004/3/1 中2005/2/1 下2006/4/1

◆評価◆
・ファンタジック少女小説度:★★
・大事件→大騒動と大冒険→めでたしめでたし度:★★★
・勧善懲悪度:★★
・分かりやすい社会の縮図度:★★

◆感想◆
<役立たず>のヴィンセントが何者かに拉致される。追い掛けたダムー等がたどり着いたのは、コルテス家の隠れ屋敷だった…

エルディア王国の男尊女卑的封建国家と公爵家の覇権争い、それに巻き込まれる異種人類のダムー達、さらに元気でお転婆のキヤサリンが事件に加わり大騒動に! といった内容。
少女小説なんてめったに読まないが、デルフィニア戦記ファンとしては、本書も読まねばなるまい。

内容は素晴らしく分かりやすい。異種人類の決闘シーンあり、正義感の強いお嬢様キヤサリンのお怒りあり、思いもつかないどんでん返しありの盛り沢山。
ファンの方はお見逃しなく!

それにしても主人公が●▲◆だなんて!
あんなことやこんなことは、どうしていたんだろう?
なんてことは考えちゃいけない。それはお約束ということで。

レディ・ガンナーと二人の皇子/茅田砂胡の表紙
   

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝/茅田砂胡

◆読んだ本◆
・書 名:大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝
・著 者:茅田砂胡
・出版社:中央公論新社
・定 価:900円
・発行日:2006/3/25

◆評価◆
・ファンタジック少女小説度:★★★
・二人の少年の成長物語り度:★★
・ハラハラな戦闘シーン/仲間を思う真摯な心度:★★

◆感想◆
ラモナ騎士団の騎士見習いであるナシアスは、ティレドン騎士団との対抗試合で並みいる強豪を次々とやぶり優勝する。そんなナシアスの前に一人の少年が現れ、試合を申し込むが…

ラモナ騎士団のナシアスと、ティレドン騎士団のバルロを主人公にした物語り。
田舎の出ながら騎士道に邁進する、真面目一本槍のナシアス。
一方、公爵家の御曹子ながら勝ち気で血気盛んなバルロ。
対抗試合を期に二人の友情や深まったり、背負った家柄からくる悩みと考え方の違いにとまどったり、隣国と合戦したりする姿が描かれる。

著者の小説作法のうまさでクイクイ読めるが、「デルフィニア戦記」を期待しちゃいけない。
外伝だからね。

しかし「デルフィニア戦記」は面白かったなぁ。
現在刊行中の「クラッシュ.ブレイズ」シリーズはそれなりに面白いんだが、「デルフィニア戦記」をずーっと引きずっているような雰囲気で。
著者にとっても「デルフィニア戦記」は入魂の作だったんだろう。

大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝/茅田砂胡の表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

地に埋もれて/あさのあつこ

◆読んだ本◆
・書 名:地に埋もれて
・著 者:あさのあつこ
・出版社:講談社
・定 価:1,400円
・発行日:2006/3/20

◆評価◆
・ファンタジックホラー度:★★★
・生者と死者/彼岸と此岸度:★★
・自分の欲しいものは?/どうすれば満たされるのか?度:★★

◆感想◆
目が覚めると、土の中にいた。埋もれているのだと、すぐに悟った…

不倫相手と心中しようとした優枝は、自分だけ埋められた土中で目覚める。なかなかショッキングな冒頭のこの物語は、「透明な旅路と」の続編といった趣き。

自分が死んでいるのか生きているのか、いったい何を求めて生きているのか、登場人物のさまよい悩む姿が、うすら淋しい風景や人間関係とともに描かれる。
ファンタジーあるいはホラー仕立ての展開ながら、生・死の意味を問いかけるような登場人物の台詞が、毎日ぼんやり/忙しく暮らす自分のハートをビビッと震わす。

いったい自分が生きている理由ってなんなのか?
家族のため? 仕事のため? 自分で決めた目標のため?
どれも当っているようだけど、100%正解という気もしない。

いったい俺は何がしたいんだ!!

とりあえずは、昼飯が食べたい。

地に埋もれて/あさのあつこの表紙
 

テーマ:感想,おすすめミステリー小説,本 - ジャンル:本・雑誌,本,感想,ミステリー

FC2Ad