だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

平成マシンガンズ/三並夏

◆読んだ本◆
・書 名:平成マシンガンズ
・著 者:三並夏
・出版社:河出書房新社
・定 価:1,000円
・発行日:2005/11/30

◆評価◆
・中1女子の私小説度:★★★
・鋭く純で敏感な感性度:★★
・若い=悩むということ度:★★

◆感想◆
中学1年の朋美。自分をさらけ出さない朋美は、友人とのささいな行き違いでクラス全員から迫害され、家では父親の恋人との間に軋轢を抱える。居場所が無くなった朋美は…

別居している母親、同居しているがあまりにも寡黙な父親、馴染めない父親の恋人、学校での級友との関係。
一種独特の文章が、朋美の焦燥感をあぶり出すよう。

若いということはいろいろ悩んだり考え込んだり傷付いたりするものだけど、そのとらえ方と表現が、つまらない日記みたいになっていないところがスゴイ。
とても中学三年生が書いたものと思えないよなあ。
自分なんて作文も苦手だったし、原稿用紙1枚書くのに四苦八苦していたような記憶が。

文芸賞受賞選評では、「死神のエピソードが秀逸」とか「流麗なる文章」とかの褒め言葉があるが、それらの評はさておき、これは現代版私小説にほかならない。
自分をちぎり捨てるような苦しみを表わす私小説が、今や形を変えて少女により描かれる。

人間はどんどん早熟になってるんだなあ。

平成マシンガンズ/三並夏の表紙
 

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北緯四十三度の神話/浅倉卓弥

◆読んだ本◆
・書 名:北緯四十三度の神話
・著 者:浅倉卓弥
・出版社:文芸春秋
・定 価:1,238円
・発行日:2005/12/10

◆評価◆
・男性をめぐる姉妹の感情度:★★★
・心の中に潜む愛と憎悪/嫉妬と慈しみ度:★★
・今生きている理由/自分は何をしたいのか?度:

◆感想◆
子供の頃は中の良かった姉妹。しかし両親の突然の死と、妹の恋人の死により、姉妹の間には大きな壁ができるように。二人とも仲良くしたいという気持ちがありながら、互いに打ち明けられない思いを心に抱えて…

浅倉卓弥といえば、「このミステリがすごい大賞受賞者」という刷り込みがあり、ミステリー作家に分類しているけど、これはそろそろ「泣ける小説作家」あるいは「感動できる小説作家」に変更せねばなるまい。
物語の主人公は、大学で生物工学を研究している姉菜穂子と、ラジオ局に勤めDJをしている妹和貴子。菜穂子の同級生である樫村宏樹と、妹の和貴子が急接近したことから、姉妹の間に複雑な感情が。
さらに両親の死や樫村死が、二人の姉妹に通っていた心を遠いものにしてしまう。

一見三角関係がテーマのようだが、実は姉妹の関係にポイントが置かれている。
真面目で自分の気持ちを押さえ込んでしまう姉と、勝ち気な妹。
二人の心の葛藤が描かれるけど、現実を超えるほどではない。
フィクションにしては、インパクトや重みが足りない気が。
現実には、もっと泣きたくなるような、死にたくなるような思いを抱えながら生活している人が、いっぱいいるだろう と突っ込みたくなる。

でも女性の読者には受け入れられるのか。
それともこんな姉妹の関係は、考えられないと思われるのか。

そんなこんなで、前作「雪の夜話」とは真逆の感想に。
やっぱり登場人物に感情移入できないとつらい。

北緯四十三度の神話/浅倉卓弥の表紙
 

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港町食堂/奥田英朗

◆読んだ本◆
・書 名:港町食堂
・著 者:奥田英朗
・出版社:新潮社
・定 価:1,300円
・発行日:2005/11/20

◆評価◆
・港町めぐり記度:★★
・ひねくれ著者の食べ歩き記度:★★★
・ちょっとした冒険度:★★

◆感想◆
高知、五島列島、牡鹿半島などを船で訪ね、港町のうまいもんを食べ歩こうというエッセイ。

エッセイを読むと著者の考え方や性格が分かると良くいうけれど、やっぱりこの人、喜怒哀楽というか躁と鬱というか、本音と建て前というか、けっこうめんどくさそうな性格。
旅先で妙にはしゃいだかと思うと、すねたりして。

「港町の探索」がテーマの紀行文らしいが、「食とスナックの女性」とした方がピッタリ。
著者に食や景勝に関する「欲」が無いせいか、御当地の食べ物や観光地の描写もあっさりめ。
ま、これは自分にも同様の「欲」が無いためかもしれぬが。
そのかわりといってはなんだが、スナックのお姉さんとか食堂の主人とかのちょい役で登場する人物が魅力的。

やっぱり旅は、見知らぬ人とのふれあいが刺激的なのかもね。

港町食堂/奥田英朗の表紙
 

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シャングリ・ラ/池上永一

◆読んだ本◆
・書 名:シャングリ・ラ
・著 者:池上永一
・出版社:角川書店
・定 価:1,900円
・発行日:2005/9/22

◆評価◆
・マンガチックSF度:
・選民階級とゲリラの戦い度:
・突飛で意表をつく設定度:

◆感想◆
地球温暖化の対策として各国は緑化政策を押し進めていた。東京はそのほとんどを植林し、住民たちは巨大建造都市「アトラス」に移住していた。しかしアトラスに移住できるのは選ばれた人達だけで、残された人々は難民となり…

池永永一。かつて「レキオス」を途中で投げ出したのを忘れていた。
この人の小説は、天敵高村薫を上回る相性の悪さ。

物語の舞台は、無気味なジャングルと化した東京。そこに聳えるアトラス。
住民は二極分化され、アトラスに住む選ばれた人達と、ジャングルに溢れる難民および反政府ゲリラの対立という構図に。

ゲリラの少女戦士にて総統の國子。
彼女の育ての親であるニューハーフの美人モモコ。
自分にウソをつく人を、不思議な力で殺してしまう美邦。
とてもユニークなキャラクターの登場人物が多くいるのだが、これがどうにも受け入れられない。

総統の少女國子が学生服を着ているのををはじめ、國子の育ての親がニューハーフである必然性、美邦の設定(なんで着物? なんで牛車? 部下が追従する動機は?)、軍人草薙の行動原理。
どれもこれもが良く分からない。
ビュンビュンと飛び去るような展開も、破綻ギリギリに見える。

たぶん、登場人物の魅力で読ませる小説のため、彼等の設定に疑問を感じる自分は、本書を読む資格がないんだな。

平均的に評価が高い小説を面白いと感じられないと、なんか時代の潮流に乗り遅れているような危惧も覚える。
でも、もういいんだ。
どうせ若くないし。

シャングリ・ラ/池上永一の表紙
 

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