だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

雀蜂/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書名:雀蜂
・著者:貴志祐介
・定価:520円
・出版社:角川ホラー文庫
・発行日:2013/10/25

◆おすすめ度◆
・サバイバル冒険小説度:★★★★
・雪山山荘ホラー度:★★★★
・「雀蜂」を自分の一番嫌いな生き物に代えて読むとなお怖い度:★★★★

◆感想◆
雪に閉ざされた別荘で目覚めた小説家の安斎。ふと目覚めるとスズメバチが部屋にいることを発見する。ハチ毒アレルギーのある安斎は、ぎょっとするが…

雪に閉ざされた山荘という狭い舞台で、アナフィラキシーショックに怯えながらスズメバチと戦うというユニークなサバイバル小説。
山奥や荒海だけがサバイバル小説の舞台じゃない! 自分の別荘だってサバイバル小説の舞台になる! という面白さ。
様々な工夫やアイデアを駆使してスズメバチと戦う姿は、まましくサバイバルで冒険小説風。

「スズメバチはあんまり怖くない」という方は、自分の一番嫌いな生き物に代えて読むとよろしいかと。
(自分は、嫌いなゴキブリに代えて物語を想像したら、悪夢をみました。)

さらにミステリー小説の味付けもあって、結末も予想外です。

子供の頃にスズメバチに指を刺されたことがあって、それはもう指が3倍の太さになるくらいはれちゃって大変だった記憶が。
それでも、今考えるとハチ毒アレルギーの症状はなかったから、もう一度スズメバチに刺されてもアナフィラキシーショックは起こさないだろうと思う。
ちょっと安心。

◆関連記事◆
貴志祐介さん『雀蜂』 人間VSスズメバチ 壮絶な頭脳戦/MSN産経ニュース
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鍵のかかった部屋/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書名:鍵のかかった部屋
・著者:貴志祐介
・定価:1,600円
・出版社:角川書店
・発行日:2011/7/30

◆おすすめ度◆
・密室殺人短編ミステリー小説度:★★
・防犯コンサルタントと女弁護士のコンビ復活度:★★
・納得の展開と解決度:

◆感想◆
「佇む男」「鍵のかかった部屋」「歪んだ箱」「密室劇場」の4編を集録した、「硝子のハンマー」、「狐火の家」に次ぐ密室殺人ミステリー小説。

主人公は美人弁護士の青砥純子と、防犯ショップ店長にして元ドロボーの榎本径という、前作と同じ体裁。
密室で殺人事件が起きて、事件の状況説明があって、青砥純子と榎本径が解決していくというスタイルも前作を踏襲。
ただ部屋の見取り図があったりして、かなり「読者への挑戦状」的だ。
さあ、トリックを見抜いてみろ!みたいな。

でも、読んだ感想は前作と同じかな。

強気で自称美人の青砥純子のジョークは空回りっぽいし、冷静沈着な榎本径にももう少し強い個性が欲しい感じ。
トリックも、死体の×××を利用して密室を作り出したり、部屋の穴から×××で×××したり、×××を×××して×××したりと、密室マニア向け。

そもそもドラマや物語性よりも、密室に代表されるようなトリックを重視する本格推理小説がよく分からない自分には、ちょっと不向きな本格推理小説。

じゃあ、なんで買って読むんだろう?(自問)
著者の新刊は無条件で購入だからな。(自答)

鍵のかかった部屋

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「鍵のかかった部屋」ではサムターン回しという開錠テクニックがポイントになるんだけど、最近はバンピングとか溶解破錠という、素人でも簡単に開錠できちゃう方法があるから恐ろしい。

こんなことでは鍵のかかった「密室」が、作れなくなるんじゃないか?
鍵を開けるテクだから、締めるのとは無関係なのか?

◆関連記事◆
貴志祐介『鍵のかかった部屋』特設サイト/角川書店(著者へのインタビュー記事あり)
「鍵のかかった部屋」貴志祐介/雨降りだからミステリでも読もう・・・
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ダークゾーン/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書名:ダークゾーン
・著者:貴志祐介
・定価:1,800円
・出版社:祥伝社
・発行日:2011/2/20

◆おすすめ度◆
・バトルゲーム小説度:★★★★
・殺戮に次ぐ殺戮度:★★★
・ミステリー小説度:★★★

◆感想◆
暗い部屋の中で覚醒した塚田は、奨励会の棋士であることと同時に、赤の王将であると自覚する。その時から地獄のようなバトルがはじまった…

悪の教典」でサイコな教師のぶっ飛び殺戮劇を描いた著者だが、今度の小説はモンスターになった人間たちが殺戮のゲームを行うというバトルゲームな内容。

軍艦島らしき所を舞台に、それはもう恐ろしい姿に変身した人間たちが、人間将棋を100倍残虐にパワーアップしたような死闘を繰り広げる。
この悪夢のようなゲームと交互に描かれるのが、主人公塚田の、奨励会の棋士としてのリアル世界の日常。
登場人物や出来事が、微妙にバトルゲームの異世界とシンクロしていくという構成。

けっこう思い切ったエンターテイメント。
著者には「クリムゾンの迷宮」という本書に似たバトルゲームな小説があったけど、その延長線上にあるよう。
ただ、リアルな世界のミステリーな仕掛けはどうかな、と。
そんなもん描かないで、バトルゲーム一本槍で不条理感いっぱいの方がスッキリしてたかも。

しかし、よくこれだけ異世界のルールやモンスターの殺傷能力なんかを考えたものよ。
ゲームクリエイターともなれば、四六時中ああでもないこうでもないと考えているだろうげど、けっこう面倒くさそう。
いっそのこと本書のモンスターや異世界の設定そのままゲームに移植したらどうだろう? なんて思ってしまうほど作り込んでいるのは確かだ。

ダークゾーン

貴志祐介 祥伝社 2011-02-11
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本書のバトルゲームは「将棋」がモチーフになっているけど、著者の趣味が囲碁や将棋のようで、納得。
次は囲碁を題材にした小説か!?(なんか地味だ)

◆他サイトの感想など◆
朴念仁と居候
Marice in Woderland
シンさんの偽哲学の小部屋

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悪の教典/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書名:悪の教典
・著者:貴志祐介
・定価:上1,714円 下1,714円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2010/7/30

◆おすすめ度◆
・暗黒学園小説度:★★★★
・サイコパスなホラー小説度:★★★★
・どんどんエスカレートする展開度:★★★★
・PTAが有害図書にすること間違いなし度:★★★★★

◆感想◆
高校教師の蓮美は生徒からの信頼と人気があつく、また教師の中でも抜きん出た能力を持っていたことから、様々なトラブルの処理に追われていた…

生徒からの絶大な人気と信頼を得ている蓮美は、生徒のみならず教師たちをも掌握下に置こうとする。
いったい彼はどんな人間なのか?
何を目的に生徒や教師を操ろうとしているのか?
読み進むと現れてくる蓮美の実像に、背筋がゾワゾワと寒くなる…という展開。

これはかなりぶっ飛んでる。
高見広春のバトル・ロワイアル風な学園暗黒小説+サイコパスなホラー小説だ。
前半はまあいいとしても、後半は「夏休みの課題図書」には絶対ならないようなおぞましい展開に。

スプラッターなシーンもさることながら、様々な手法で目的を達成させる蓮美の異常ぶりや、なんとか魔の手から逃れよう/対抗しようとする生徒たちの奮闘ぶりも読みどころか。
けっこうどぎついシーンが連発するけど、受ける印象は案外カラッとしている。

バトル・ロワイアルが面白かった方は是非!


悪の教典 上
悪の教典 上貴志 祐介

おすすめ平均
stars「愛犬家連続殺人」を彷彿
stars極上の読書体験、頂きました。
stars貴志先生待ってました!!!
stars蓮見聖司の魅力
stars待ちにまった新刊!・・・は、

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悪の教典 下
悪の教典 下貴志 祐介

おすすめ平均
stars前代未聞、最凶最悪のサイコパス誕生
stars恐怖の距離感を楽しむ
stars面白かった
stars期待しすぎたかな…
stars今までの作風と悪い意味で違いました

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さすがに高校が舞台ということもあって、登場人物がハンパない人数。
いつも主な登場人物をA4の紙に書き出しながら本を読んでいるんだが、あっという間に書ききれなくなってしまった。
「もういいや、メンドクサイし」と思いつつ、上巻を読み終わると、「2年4組の出席簿がダウンロードできます」な注意書きが。
最近はなんでもネットで入手できるんだ。便利便利。

結局ダウンロードしなかったけど、数人の名前さえ押さえておけば、物語を楽しむには問題なし。
逆に言えば、多くの登場人物は「その他大勢」。
その他大勢まできっちり描写してたら、倍くらいの長さになっちゃうもんな。

◆他サイトの感想など◆
風の吹くまま 気の向くままに
文藝春秋 | 貴志祐介 『悪の教典』特設サイト

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狐火の家/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書 名:狐火の家
・著 者:貴志祐介
・出版社:角川書店
・定 価:1,500円
・発行日:2008/3/31
     
◆評価◆
・密室ミステリー小説度:★★
・ユニークな登場人物度:★★
・微妙なユーモア度:★★

◆感想◆
谷間の道を走って家にたどり着いた西野は、部屋に入ろうとした時強烈な違和感に襲われる。そして奥座敷の襖を開け放った西野が目にしたのは、娘が死んでいる姿だった…

硝子のハンマー」で登場した、美人弁護士の青砥純子と防犯ショップ店長にして元ドロボーの榎本径を主役とした密室ものミステリー。
なかなか凝った密室を考えだしているが、ピンとこない。
著者の思惑が空回り気味だ。
シリーズ前作の「硝子のハンマー」は面白かった印象があるんだが…

強気で自称美人の青砥純子も、冷静沈着な榎本径も、もうちょっとハチャメチャな性格でも良かったかも。
そこはかとないユーモラスな表現や展開が、二人の性格と相まって盛り上げる展開だったら嬉しい。

最後の一編は楽屋落ちというか投げやりというか。
でもこの「犬のみぞ知る」が一番著者の気持ちがわかって面白かった!

それはさておき、ウヘッと思ったのは「黒い牙」のワンシーン。
この短編はクモ(昆虫というか脚が8本あるやつね)が重要なポイントとなっているんだが、女弁護士も主人公の一人である夫を殺された未亡人も、クモが大の嫌いという設定。
それがあんなことをっっ!!

自慢する訳じゃないが自分はゴキブリが大嫌いで、二人の女性のクモ嫌いはとってもよく理解できるんだが、あんなことをするとはとても考えられないっっ!
ゾゾーッ!!
このシーンだけは、ホラーだ。

狐火の家/貴志祐介の表紙
 

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新世界より/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書 名:新世界より
・著 者:貴志祐介
・出版社:講談社
・定 価:上1,900円 下1,900円
・発行日:2008/1/23

◆評価◆
・ダークファンタジー(B級エンターテイメント)度:★★
・血塗られた未来史(異種格闘技+魔女狩り風)度:★★
・怒濤のストーリー(勢いはある)度:★★★★★

◆感想◆
1000年後の日本。子供達は呪力を強化し自分のものとすることが教育の一環となっていた。早季と仲間達は、ゲームや野外活動を体験しながら呪力の訓練をしていたが…

1000年後の日本は、呪力といわれる超能力をもつサイキックが、後退した文明の中で平和に暮らそうとしている。しかしその平和の陰には、恐ろしいからくりがあった。
早季達は学校での出来事や好奇心から、知ってはいけない呪力社会の裏側を知る。そしてさらに!

大変力の入った怒濤のエンターテイメント、と言いたいところだが、いまいち展開がギクシャクし物語の整合性もとれてなく、新人の小説みたいな感じだ。
物語世界を構築するために、様々な小道具を配置したり、登場人物や文化的な側面に工夫をこらしているが、あちこちにほころびが。

物語自体は愛と勇気の冒険小説風で、一気に読ませる力は十分なんだけど、「この設定って矛盾してない?」「それはいくらなんでもダメだろう」と突っ込みを入れたくなる所が多くて、その度に物語の勢いが削がれてしまう。
気にしなければいいんだけど、ちょっと見過ごせないよなぁ。

著者の頭の中ではきちんと整合性のとれた物語となっていても、読者がそれに納得するかどうかは読者の感性。
ファンタジーって、むづかしいね。

でも「そんな細かいところは気にしないぜ、ドバーッと行こうぜドバーッと」という豪放磊落なタイプの読者には超おすすめだ。

新世界より/貴志祐介の表紙
  

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硝子のハンマー/貴志祐介

◆読んだ本◆
・書名:硝子のハンマー
・著者:貴志祐介
・出版社:角川書店
・定価:1,600円
・発行日:2004/4/20

◆評価◆
・密室トリックミステリー小説度:★★★
・小気味よいテンポと展開度:★★★★
・詳細な描写度:★★★★

◆ひとこと◆
六本木センタービルの最上階にある、ベイリーフ社の社長室。監視カメラ等の厳重なセキュリティシステムで防護されている部屋の中で、社長が撲殺される。
犯人はどうやってセキュリティを破り、社長を殺害したのか…

前半は、ベイリーフ社が雇った若手美人弁護士青砥純子と、防犯コンサルタント榎本径の調査がメイン。
防犯コンサルタント榎本の詳細で綿密な捜査が、なかなか良い味をだしている。
テンポも小気味よくロジカルな展開は、著者の本書にかける意気込みを感じる。
弁護士の青砥純子の方は、ちょっと中途半端な設定。賢いのか正義心が強いのかとてつもない美人なのか、いまいちつかめない。
榎本と青砥の性格を両極端にするか、コメディタッチにする手もあったか。

後半は、通常のミステリーとは違った展開で、いかに犯行が行われたかを、犯人がわから描き出す展開に。
前半ではあまり配慮されなかった犯行動機がしだいに明らかになり、犯行に至るまでの経緯が興味深くえがかれるが、その分「驚愕の落ち」は、ない。
ここらがちょっと不満。
犯行の動機も、途中ですり変ってしまったし(殺害する動機が弱いよね)。

しかしさすがは「黒い家」の著者だけはあって、読みはじめるとやめられない。
密室のトリックも相当考えたように読める。
いくらミステリー小説が好きでも、たいてい鼻クソホジホジしながら、「こいつ、ちょっと怪しくないか」とか思いながら読んでる(自分だけか?)くらい。
タイムテーブル作って時間の経緯を考えたり、いろんな伏線をメモッて矛盾点を検証したりはしないもんである。
そんな読者を相手にするんだから、著者も大変というか、トリックの考え甲斐がないというか。


硝子のハンマー
硝子のハンマー貴志 祐介

おすすめ平均
stars古典的だが革新的な、貴志ミステリの金字塔
stars話が長かったわりには…
stars貴志さんは、ミステリーよりホラーが天職
stars好きでも嫌いでもない。
stars犯人の悲しい人生が記憶に残りました。

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