だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

二千七百の夏と冬/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:二千七百の夏と冬
・著者:荻原浩
・定価:上1,300円 下1,300円
・出版社:双葉社
・発行日:2014/6/22

◆おすすめ度◆
・二千七百の時を超えても変わらぬ人間の営み度:★★★★
・猛々しく雄々しい/甘く切ない度:★★★★★
・まるで見てきたかのような描写度:★★★★★

◆感想◆
ダム建設工事の途中に発見された人骨は、縄文人男性と弥生人女性のものと推定された。大きな損傷もなく発見された二体は、何故か互いの手をしっかりと握りしめるように絡み合っていた…

縄文時代の終わりの頃を舞台に、一人の青年を主人公にして描かれる、愛と勇気と成長の物語。
これがとてつもなく切ないラストの物語になっている。

当時の様々な風習や文化。まるで当時の暮らしぶりを見てきたかのようなリアルな描写がすばらしい。
著者の持ち味であるコミカルな描写は、物語に温かい雰囲気をかもし出しているし、手斧や弓を使った狩りのシーンは冒険小説さながらの手に汗握る迫力。

しかしなんといってもこの物語の魅力は、互いの手をしっかりと握りしめるように絡み合っていた縄文人男性と弥生人女性のドラマ。

発見された人骨の描写から、二人の若い男女が迎えた最期は想像できるものの、そこにたどり着くまでの物語が猛々しく雄々しく、そしてとても甘く切ない。
若い二人の最期が、こんな不条理で儚いものだなんて…

それとない文明批評もくわえながら、人間なんて縄文時代から何も進歩していないんじゃないか、と思わせる一気読みの物語だ。

顔より大きくなる葉を、糞をした後の尻拭きに使っていたことから名付けられた「クソフキ」。短く縮めて「フキ」とも言う。

本当?!
フキを食べるたびに思い出しそうな語源だ。

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家族写真/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:家族写真
・著者:荻原浩
・定価:1,400円
・出版社:講談社
・発行日:2013/5/29

◆おすすめ度◆
・ほんわか家族小説度:★★★
・笑いとペーソス度:★★★
・「結婚しようよ」は定年間近のお父さんには号泣もの度:★★★★

◆感想◆
いつの間にか年を取ったお父さんたちの、笑いと悲哀に包まれた家族短編小説。

こうゆう小説を書かせたら、荻原浩は絶品です。
特に「結婚しようよ」は秀逸。
何のために一生懸命働いて、何のために子供を育ててきたのか。
自分の半生を顧みると、なんだか原稿用紙1枚にもならないような平凡なもの。
そんなお父さんの悲喜こもごもが、ほんわかしたタッチで描写される。

「人生の意味」とか「生きるとはどうゆうことなのか」なんていう難しいことは哲学者にお任せして、日々平凡に暮らすのがいいんじゃないか。
無駄にあがいても苦しいばっかりだし。

なんてことを思わせる本書は、アラフィフティからアラシックスティのお父さんにおすすめ。
肥満気味のお父さんや、マイホームの購入を考えているお父さん、無職のお父さんなどにも対応してます。

サザエさんに登場する磯野波平は54歳なんだと!
うーむ、昔は平均的な54歳はあんな感じだったのか?
子供から見る54歳はあんな感じという設定なのか?

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花のさくら通り/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:花のさくら通り
・著者:荻原浩
・定価:1,600円
・出版社:集英社
・発行日:2012/6/30

◆おすすめ度◆
・ハートフルユーモア小説度:★★★
・いつの間にかみんなで街おこし度:★★★★
・斬新でも意外でも謎めいてもいないのにこの面白さ度:★★★★★

◆感想◆
かつては門前町としてにぎわっていた商店街。しかしいつの間にかシャッター通り商店街となりつつあるさくら通り商店街に、都落ちした弱小広告代理店が越してくるが…

どこの郊外にもありそうなシャッター通り商店街のさくら通り。
そこに小さな広告代理店が引越してきたことがきっかけになって、いつの間にか街おこしが始まってしまうという展開。

自分のことしか考えない商店主たち。
商店会の会長であることにこだわる長老たち。
同じ商店会のなかでの、新旧の確執。

もうどこにでも転がっていそうなありふれた設定で、先も丸っと読めてしまうし驚きも謎もない。
でもでもこれが面白い!

放火事件をきっかけに、なんとなくまとまり出す商店会。
魅力的でユーモラスな登場人物たち。
ほのかな恋。
いつの間にかみんながまとまって、さくら通り商店街がにぎわって行く?!

登場人物が活き活きとしていて共感できれば、斬新でも意外でも謎めいていなくてもこんなに面白く読めるんだ!という見本のような小説だ。

主人公の娘の手紙も泣かせるぜ。

「花のさくら通り」は、本文がツルツルでスべスベの紙でできてる。
たまに出会うんだけど、これがなんだか肌触りがいいんである。
思わず頬ずりしたくなる感触。
本書に登場する初音ちゃんのホッペのようだ。

◆関連記事◆
花のさくら通り 最終回 荻原浩/三つ子の活字中毒百までか?

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幸せになる百通りの方法/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:幸せになる百通りの方法
・著者:荻原浩
・定価:1,500円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2012/2/10

◆おすすめ度◆
・ほんわかほっこり短編小説度:★★★
・ユーモアとペーソス度:★★★
・人に話したくなる豆知識度:★★

◆感想◆
著者らしいほんわかほっこりした短編小説集。

テーマは原子力発電所の事故だったりオレオレ詐欺だったりお見合いパーティだったりリストラだったりと様々だけど、登場する人物がそこはかとなくもの悲しげでありながらちょっと笑えて微笑ましくなるという、ユーモアとペーソスを絶妙にブレンドした物語。

「ガツン」とくるインパクトや新鮮さはないけれど、人生ってこんな風になんでもないようでいてどこかドラマチックになっているんだんあ、と実感させられる。

大阪の振り込め詐欺の被害率は、東京の十分の一以下だとか、ペンギンは仲間を海に蹴落として安全を確認してからダイブするとか、九十九茄子(つくもなす)は食べ物じゃなくて茶道具であるとか、どうでもいいけど人に話してみたくなる「へぇ」な豆知識もあったりして、とっても平和な小説だ。

こうゆうどうでもいい、一種怠惰で平凡な状態が、幸せな状態なんだなぁ。

幸せになる百通りの方法

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「へぇ」な豆知識をひとつ。

マヨネーズは腐らない

へぇ へぇ へぇ へぇ へぇ!(トリビア

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幸せになる百通りの方法PRIVATE EYES

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誰にも書ける一冊の本/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:誰にも書ける一冊の本
・著者:荻原浩
・定価:1,200円
・出版社:光文社
・発行日:2011/6/25

◆おすすめ度◆
・父の死とその生涯度:★★
・メランコリック度:★★
・自分の生涯はショートショートくらい?度:★★★

◆感想◆
母から、父が書き残した原稿を渡された主人公は、病院で生体情報モニタにつながっている父の脇で原稿を読みはじめるが・・・

仲が良いわけでもなく、かといって不仲でもなかった父子。
死の間際に、父親の人生に触れた主人公が感じたことは? なメランコリックな小説。

書き残した父の原稿と、息子である主人公目線の描写が交互に描かれ、それぞれの体験と思いが綴られる。
「父と息子」が「作家と編集者」に置き換えられるちょっとメタな雰囲気もありながら、北海道での開拓や戦争を追体験して行くうちに、知らなかった父親の一面が浮き上がる。

著者の本はメランコリックでレトロな雰囲気の物語が多いんだけど、本書もそんな感じ。

「自分の人生を本にしたらショートショート1編くらいにしかならないだろう」なんて思っている人に、「どっこいけっこうな厚みの本になるんだよ」と言っているようでもある。

誰にも書ける一冊の本 (テーマ競作小説「死様」)

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本書は光文社が企画した、「死」をテーマにした競作シリーズの中の一作。
他にはダンスホール/佐藤正午、/白石一文、/土居伸光、海路/藤岡陽子、身も心も/盛田隆二がある。

全部読むと気持ちが暗くなりそう?

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砂の王国/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:砂の王国
・著者:荻原浩
・定価:上1,700円 下1,700円
・出版社:講談社
・発行日:2010/11/15

◆おすすめ度◆
・転落した人生の一発逆転劇度:★★★★
・まったりした展開からハードな結末へ度:★★★★
・生き残るのは癖のある登場人物度:★★★★

◆感想◆ 大手証券会社のやり手サラリーマンから一転、自販機の釣り銭を漁るホームレスに転落した山崎。なんとかこの生活から抜け出そうと、一発逆転の大勝負にでるが…

ややのんびりした感もあるホームレスの辛く淋しく自省的な描写ではじまる展開。なんだか篠田節子の「仮想儀礼」をゆるくした感じで、著者らしいほんわかした話しになるのかと思ったら、読み進めるうちドンドンシリアスでハードな展開に。

たとえ自分で作った組織も、そこにいる人々の思惑で自分の与り知らぬモノになってしまうんだなあ。
組織の長は大変なのね。
といった感想をいだきながらも、強力な個性を発揮するホームレスのナカムラと辻占い師龍斎の設定に拍手。

不思議なほど人を惹き付ける笑顔で、コンビニのあまった弁当を店員から易々と手に入れるホームレスのナカムラ。
おまけにハンサムな大男で真珠まで埋め込んでいるという得体の知れなさ等が、ビックリな展開を予感させる。
また、巧みな話術や人の表情を読み取り、超能力かと思えるような占いをする龍斎が、実はコールドリーディングの使い手だったり。

このナカムラと龍斎が本当の主役。
ちょっと出来過ぎな感じはあるけど、物語を面白く劇的に展開させる原動力になっている。

はてさて、ナカムラと龍斎の2人を誘って人生の一発逆転劇を謀る山崎には、いったいどんな結末が用意されているのか?!

砂の王国(上)

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砂の王国(下)

荻原 浩 講談社 2010-11-16
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自作したベッド用読書スタンド500円(税別)で「砂の王国」を読む。
うーん、快適!


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ひまわり事件/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:ひまわり事件
・著者:荻原浩
・定価:1,800円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2009/11/15

◆おすすめ度◆
・ジジババと幼稚園児の交流度:★★★★
・ジジババと幼稚園児の戦い度:★★★
・ジジババと幼稚園児の冒険度:★★★

◆感想◆
隣接する老人ホームと幼稚園。今まで交流か無かった老人たちと幼稚園児が、「お年寄りに明るさと活力を、子供たちにいたわりの心と人生の知恵を」というコンセプトのもと、交流を図ることになるが・・・

ちょっと笑えて泣けて元気になる、著者お得意のほんわか小説。
出来の悪い園児3人組+1のお茶目さがかわいいし、ちょい悪じじいの無鉄砲さもステキだ。
やや長過ぎる感はあるが、はじめはギクシャクしていたジジババと園児たちの関係が、細かな出来事(ひまわりの種を植えたり、一緒に麻雀やチンチロリンをやったり、入院した婆さんを見舞ったり・・・)を積み上げながら深まっていく過程が楽しい。

終盤にはとんでもない"事件"も用意されて、スカッと爽やかで一途なジジババの姿も。

ミステリアスな仕掛けがある訳でもないし、とんでもなく驚いたり感動したりする訳でもないが、軽く読むにはうってつけの中間小説。


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アイアンマンブログ


登場する直情タイプの老人を評して「強さは脆さと同義だ。ビルの鉄骨に純鉄などを使おうものなら、たちまち瓦解してしまう」というくだりがある。
老人の一徹な性格と行動を「純鉄」に例えているんだが、これは「鋼」の間違いだ。
文脈からいえば「純鉄」の方が語感もぴったりだし、読み間違うことは無いんだけれど、なぜか気になる我が人生経験、みたいな。

「鋼」はパキンと脆いが、「純鉄」はけっこう柔らかいんである。
柔らかいといっても、お餅みたいに柔らかいわけじゃないけど。
著者も分かってかいているのかもね。


ひまわり事件
ひまわり事件荻原 浩

おすすめ平均
starsほのぼのと。でも、社会を鋭く見つめて。
stars考えさせられる部分も・・・
stars老人ホームと幼稚園の交流は吉か?凶か?
starsたっぷり笑えて、じんわりと胸に染みる<荻原ワールド>全開の力作

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◆他サイトの感想◆
10月の蝉

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