だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

フォルトゥナの瞳/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:フォルトゥナの瞳
・著者:百田尚樹
・定価:1,600円
・出版社:新潮社
・発行日:2014/9/25

◆おすすめ度◆
・不思議な能力を持った男の半生度:★★★★
・究極の選択度:★★★
・どうなる!どうなる?度:★★★★
・こうなる?そうなるの↓度:★★

◆感想◆
電車に乗っていた慎一郎は、ふと目にしたサラリーマンの手が透けているように見えた。目の錯覚かと思ったが…

不幸な生い立ちで友人もおらず、趣味もなければ彼女もいない。そんないつもうつむいて歩いているような主人公の慎一郎だったが、あるとき自分に不思議な能力が備わっていることに気づいてから、人生が大きく変化する。
その能力をどう使うべきなのか、あるいは使わないほうがよいのか。
あまりに人に与える影響力が大きく、次第にその力を持て余し、さらにそれに振り回されるようになるが…

読みやすさは抜群の本書。
読み始めは「どうなる!どうなる?」という先を知りたい気持ちでぐんぐん読み進むが、次第に「こうなる?そうなっちゃうの」というミステリーファンならずとも結末が予想される展開に。

ウブな恋愛模様はそれなりにドキドキするけれど、思いもよらないびっくりなラストでドキッとしたかったと思うのは贅沢?

「カルネアデスの舟板」とか「トロッコ問題」とか「冷たい方程式」とか、究極の選択を迫られるケースが物語のテーマになるこもしばしば。
結局は自分に身近な人を助けるということになるんだろうなあ。
でもそうしないところにドラマが生まれるんだろうなあ。

夢を売る男/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:夢を売る男
・著者:百田尚樹
・定価:1,400円
・出版社:太田出版
・発行日:2013/2/26

◆おすすめ度◆
・作家志望者おちょくり度:★★★★
・出版業界裏話/自虐ネタ度:★★★
・ちょっといい話度:★★★

◆感想◆
出版社に勤める敏腕編集者・牛河原勘治は、自意識過剰で自己顕示欲が強い作家志望者を相手に、言葉巧みに「出版」という夢を叶えさせる編集者。果たしてその実態は…

多彩な著者がテーマにしたのは、本の出版を夢見る作家志望者と、それを自費出版モドキの手法で実現させる編集者の、いわば出版業界裏話し。

自分が書いた文章を本にして出版したいと考えている人間なんて「自意識過剰で自己顕示欲が強い」、さらに「小説を書くやつなんて頭がおかしいんだ」とまでけなしながらも、そんな作家志望者を言葉巧みにおだて上げ、金を巻き上げるというお話し。
著者自身のこともちょろっと触れたりするお遊びな自虐ネタも盛り込んで、ダメダメ作家志望者を滅多切り。

東野圭吾の「○笑小説」をブラックにした感じでしょうか。

それでも牛河原勘治の台詞を読んでいるうち、あこぎな商売をしているにもかかわらず、「夢を売るというのはあながち嘘じゃないのかも」と思わせるところがさすがです。

最後には心がジーンとくる場面も用意されてて、ちょっといい話しになってます。

「だな通信ミステリー文庫」なんていう弱小ブログにも、「ブログを書籍化しませんか?」なんていうメールがちらほら舞い込み、言葉巧みに誘ってくる。

ははーん、さては牛河原勘治が送り主だな。

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海賊とよばれた男/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:海賊とよばれた男
・著者:百田尚樹
・定価:上1,600円 下1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2012/7/11

◆おすすめ度◆
・石油に命をかけた男たちの物語度:★★★★
・石油エネルギーから見た戦前,戦後の動乱期度:★★★★
・力強く初心貫徹な男の生き様度:★★★★
・出光興産の社員教育用にもうってつけ度:★★★

◆感想◆
明治の終わりから昭和にかけて、消費者と日本国のために石油の輸入・販売に力を注いだ出光興産の創業者・出光佐三。彼をモデルにした波乱と驚愕のノンフィクション・ノベル。

それにしてもやることなすことが命懸けな主人公・国岡鐵造。
単身満州に乗り込み、国岡商店という無名の個人企業の油を売り込んだり、禁輸措置中のイランから原油を買い込むという暴挙/英雄的行為をしたり、石油メジャーと互角の戦いをしたり、起死回生の策として巨大タンカーを建造したりと、それはもう大胆にして緻密、目先しかみていないようで遠い先まで見越した戦略的商活動が、 ハラハラドキドキもの。

そんな岡鐵造の回りには、彼の考えや人となりに心酔した社員や支援者があつまる。
私財をなげうってポンと大金を渡すパトロンがいたり、多くの人や会社が国岡商店を潰そうと画策する中、逆に国岡鐵造に共感して救いの手を差し伸べるGHQや石油メジャーや銀行の幹部がいたり,苦役もいとわぬ社員がいたり。

戦前から戦後の動乱期を、ブルトーザーのように走り抜けた国岡鐵造の生涯が、力強く描かれている。
いささか格好良過ぎで、脇役も国岡鐵造に心酔し過ぎなきらいはあるが、これがノンフィクション・ノベルだというからビックリ。
明治の男はやることが破天荒で頑固だなあ。

出光興産の社員教育用に使うと、社員の意気も上がるんじゃないかと。

CIAに手を回し、クーデターまで起こそうかという石油メジャー。
すごいですね。
やることが国岡鐵造の比じゃありません。

◆関連記事◆
出光佐三/ウィキペディア
『海賊とよばれた男』百田尚樹著《READING LIFE》/天狼院書店

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プリズム/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:プリズム
・著者:百田尚樹
・定価:1,500円
・出版社:幻冬社
・発行日:2011/10/5

◆おすすめ度◆
・異色の恋愛小説度:★★★
・ひとつのモチーフでここまで引っ張るか!?度:★★★★
・結婚するなら村田卓也、火遊びなら宮本純也度:★★★

◆感想◆
家庭教師として成城の豪邸に派遣された聡子は、屋敷の中で奇妙な雰囲気の青年に出会うが…

屋敷の中やきれいな庭で出会うたびに印象が異なる奇妙な青年。彼と聡子の関係をテーマにした、異色の恋愛小説。

出版される小説がバラエティに富んでる百田尚樹、多才です。おまけに器用です。
ミステリー小説ではよく使われるモチーフだけれど、それだけで最後まで読ませる豪腕さも。

でもやっぱりさすがに後半は疲れてきて、失速気味な感じ。
素直な読者には読みごたえのある展開なのかもしれないけれど、マニアックな本に慣れている読者には物足りないか。

もっとヘンテコな人格設定にして、もっと過激な関係が描かれて、もっとビックリな展開にして欲しいというのは欲張りすぎ?

プリズム

百田 尚樹 幻冬舎 2011-10-06
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本書は著者初の恋愛小説らしいが、恋愛がらみの小説では「モンスター」の方が断然パワフル。
「プリズム」の聡子は自分の抑えられない気持ちに翻弄されるが、「モンスター」の和子の情念,執念はハンパありませんっ。

モンスター

百田 尚樹 幻冬舎 2010-03-25
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◆関連記事◆
モンスター/百田尚樹/サイト内

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幸福な生活/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:幸福な生活
・著者:百田尚樹
・定価:1,500円
・出版社:祥伝社
・発行日:2011/6/10

◆おすすめ度◆
・ホラータッチなショートショート度:★★★★
・ブラックでジョークな最後の一撃度:★★★★
・最後の一行的中度:★★★★

◆感想◆
刊行される本がバラエティに富んで、ことごとく意表をつく百田尚樹のショートショート。
全18編がすべて最後の一行で読者をノックアウトしようという意欲作。

最後の一行で物語がひっくり返るようなミステリー、なんていうのは良くあるけれど、それをショートショート18編すべてでやっちゃおうというのだからふるってる。
おまけに、めくったページに最後の一行を配置するという凝りよう。

最後の一行がどの程度の衝撃かは、読んでのお楽しみ。
落ちが分っちゃうのもあるけれど、ブラックでホラーな衝撃が味わえる。

途中からは最後の一行を推理してから読んだりするように。
著者とのとんち比べみたいな楽しみ方もできたりしたけど、「ごめんあそばせ」にはまいった。

幸福な生活

百田尚樹 祥伝社 2011-05-27
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ショートショート18編だけあって、いろんな名雨の登場人物が。
自分と同じ名前の登場人物がいたりして、その人がいい人だったりするとなんだか嬉しい。
逆に悪い奴だと残念な。

電子書籍には登場人物の名前を変更できる機能をつけて、かっこいい主人公には自分の名前、悪役でこてんぱんにされる脇役には嫌な上司の名前、なんて風にすれば、絶対感情移入しやすくなるよなあ。

◆他サイトの感想など◆
新連載!連作短編小説『幸福な生活』スタート記念インタビュー/e-hon

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錨を上げよ/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:錨を上げよ
・著者:百田尚樹
・定価:上1,900円 下1,900円
・出版社:講談社
・発行日:2010/11/30

◆おすすめ度◆
・メチャクチャ男の半生度:★★★★
・悪ガキ少年の成長しない物語度:★★★
・若い頃に読んだら間違いなく壁にぶつけた度:★★★★★

◆感想◆
昭和30年、大阪に生まれた男の半生を描いた物語。

半生といっても生まれてから30歳ちょっとまでなんだが、これが何だかトデンデモな男なんである。
落ちこぼれの悪ガキで喧嘩ばかりの子供時代からスタートして、放浪したり学生となったり色んな仕事に従事したり女とくっ付いたり離れたりの、行き当たりばったりな青春?物語。

なんといっても主人公の破天荒で猪突猛進、大雑把で無鉄砲な性格が凄い。
こんな奴実在しないだろうし、やることもメチャクチャなら言うこともメチャクチャ。まるで筋が通っていない矛盾だらけな男なんである。

若い頃に読んでいたら、その支離滅裂な自己矛盾で自己中な主人公の性格設定に怒りを覚え、間違いなく本を壁にぶつけてるんじゃないかと。

ところがいつまでたっても成長しないメチャクチャな主人公をなんだか許せちゃうのは、おれが歳とったせいか?

長編だけど一気に読ませるパワーはある。
けど、読み終わってもカタルシスを感じたりどんでん返しな落ちにびっくりしたり感動的なフィナーレがあったりする訳じゃないからご注意を。

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ステレオが我が家にやってきた日…/好きな音楽でも聞きながら

はじめは著者の自伝的小説なのかと思ったが、まさかねえ。

でも同世代の人には「手回しローラで脱水する洗濯機」とか「ゲバ文字で書かれた安保反対の立て看板」とか「山口小夜子に似た美人」とかの語句に「あったあった、そうそう!」といった共感も。

逆に言えば、著者と同世代ではない読者には、まったく共感が得られない?

錨を上げよ(上) (100周年書き下ろし)

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影法師/百田尚樹

◆読んだ本◆
・書名:影法師
・著者:百田尚樹
・定価:1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2010/5/20

◆おすすめ度◆
・青春と友情の時代小説度:★★★★
・刎頸の契り度:★★★★★
・百田尚樹は無条件購入度:★★★★★

◆感想◆
文武両道で奢るところのない磯貝彦四郎。彼を人生の目標としてきた戸田勘一。幼い頃からともに学び育った二人だが、それぞれの人生は大きく変わって行く・・・

あんまり時代小説は得意なジャンルではないんだが、そんなことはおかまいなしに面白すぎる「影法師」。
百田尚樹、絶好調だ。

剣道の上覧試合の緊迫したスリリングなシーン。
武士という身分の中のいわれなき差別。
地方都市を豊かな国にしたいと願う夢。
顔を見るのも恥ずかしく感じるような淡い恋。

江戸時代の地方都市を舞台にした青春ドラマで、それだけでも面白く読めるんだが、この小説のキモは「刎頸の契り」
彦四郎と勘一が、互いの友情の証しとして交わす「刎頸の契り」。
それが物語のすべての背景となり、ラストの感動的な展開につながる。
もう男泣きするっきゃない設定だ。

やや駆け足の物語になってるのが惜しい。
この倍の長さにして細部を書き込んだら、もっと面白くなったろう。

影法師
影法師百田 尚樹

おすすめ平均
stars藤沢周平「風の果て」
stars泣けた~
stars本当にこの作家は・・・。
starsこういう男は今日本にいるのだろうか?

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「刎頸の交わり」「刎頸の友」とは、「その友のためなら、たとえ首を切られても悔いないくらいの親しい交際」のこと。
武士である彦四郎と勘一は、僅かに抜いた刀の刃を互いに合わせて、契りを交わす。
こういう友情ものって、ちょっと間違うとひどく陳腐になってしまう。
陳腐ならまだしも、エロチックになるとややこしい。

◆関連記事◆
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