だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

天空の犬/樋口明雄

◆読んだ本◆
・書名:天空の犬
・著者:樋口明雄
・定価:1,800円
・出版社:徳間書店
・発行日:2012/8/31

◆おすすめ度◆
・山岳(救助隊)小説度:★★★★★
・ハラハラドキドキの冒険小説度:★★★★
・山好きで犬好きの方に超おすすめ度:★★★★★

◆感想◆
南アルプスの山岳救助隊に、相棒の救助犬メイと一緒に赴任した星野夏実。様々な過去を抱える救助隊員たちと、過酷な訓練や遭難者の救助にあたるが…

南アルプスの北岳を舞台に、若き女性救助隊員のや救助隊のメンバー、さらに山岳救助犬の活躍と心のつながりを描いた山岳小説。

山岳救助隊、救助犬、遭難事故、といったキーワードを見るだけで、なんとなく内容はわかっちゃうんだけれど、それでも読み始めると止められない面白さ。
日々の訓練や救助隊のルーチンの描写、北岳の様子やそこで過ごす人々の日常が、なんのてらいもなく活き活きとしている。
それがとっても爽やかだ。

遭難者の救助シーンやラストに用意された事件も、山岳小説らしくスリルとサスペンスと遭難者救助にあたる厚い思いが伝わってくる。

そして何よりグッとくるのは、主人公の星野夏実と相棒の救助犬メイとの信頼関係。
犬好きにはたまらないぞ。
もう泣いちゃうもんね。

家族や愛犬とともに南アルプスの麓に住むという、著者ならではの山岳小説。
「約束の地」も超面白いから、そっちもどうぞ。

階段を上るだけで息切れがする自分は、とてもじゃないけど救助隊になんかなれないが、本書を読むと北岳を登ったような気分になれるから不思議だ。
北岳付近の地図や写真を見たりすると、臨場感倍増。
鉄道の時刻表を見ながら旅行した気分になったりするのと同じ?

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約束の地/樋口明雄/サイト内

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標高二八〇〇米/樋口明雄

◆読んだ本◆
・書名:標高二八〇〇米
・著者:樋口明雄
・定価:1,600円
・出版社:徳間書店
・発行日:2011/11/30

◆おすすめ度◆
・ホラー短編小説度:★★★
・ミステリアスでサスペンスでSF度:★★★
・個人の終末/世界の終末度:★★

◆感想◆
身近な人達の死、この世界の終焉をテーマにした終末ものホラー短編小説。

題名から山岳冒険小説みたいな感じかと思っていたら、どうも様子が違う。
身近な人達の死をテーマにした暗めのミステリアスなホラー小説が半分。
もう半分は、原子力発電所の事故を足がかりに発展させた、終末ものなSF小説。

全体に漂う悲観的な世界観、人生観が、諸行無常の響きありまくりで悲しすぎ。
『希望』があるような落ちにはなっているけど、読んでいるとだんだん悲しく辛くなってくる。

「どうせ俺なんて、ダメな人間だ」「人間なんて愚かな生き物さ」みたいなのを払拭させる小説が読みたいんである。
(著者名と題名だけで「山岳冒険小説」だと早合点じた自分が悪いんだけど)
どうせ人間も人類も破滅的にバカなのは判っているから、もうちょっと明るくパーッといきたいよね。

標高二八〇〇米

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物語の主人公の多くは、作家であったり南アルプスに住んでいたり、登山や釣りが趣味だったりと、著者自身を連想させる人物像。
やっぱり山岳小説を書いたりする人は、実際に山麓に家族や愛犬と一緒に住んだりしているんだなあ。
趣味が登山や釣りというのは分るけど、「焚火」というのもスゴイ。

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約束の地/樋口明雄

◆読んだ本◆
・書 名:約束の地
・著 者:樋口明雄
・出版社:光文社
・定 価:2,300円
・発行日:2008/11/25

◆評価◆
・山岳冒険動物小説度:★★★★★
・巨大クマ「稲妻」とカガミジシ「三本足」との死闘度:★★★★★
・自然と生きる猟師度:★★★★★
・環境問題とか殺人事件とかベアドックとか度:★★★★

◆感想◆
キャリア官僚として各地に出向してきた七倉が、新しく赴任を命じられたのは八ヶ岳市の野生鳥獣保全管理センターだった。個性的な管理センターの面々にとまどう七倉だったが、さらに伝説的な巨大クマ「稲妻」が人を襲うという事件が・・・

これは面白い!
今年一番面白い本だ! って、ついこないだも「オリンピックの身代金」の感想でも書いたような記憶が・・・
年末だから、各出版社が「これだ」という小説を発行してるんだろうな。

物語は、害獣被害から人々を守り、かつ野生動物との共生を図ろうとする環境省の出先機関「野生鳥獣保全管理センター」に、新たに赴任してきた七倉がメイン。
キャリア官僚が、昔ながらの慣習を固持する猟師たちや、住民を脅かす獣たちと悪戦苦闘するうち・・・という展開だ。

さらに、昔気質なクマ猟師たちとの軋轢。
環境問題で対立する市長と住民、研究者。
野生獣を守ろうとする動物愛護団体。
七倉の娘、羽純のいじめと大人社会。
などなどが絡み合って、奥行きのある物語になっている。

が、キモとなる登場人物(登場動物?)は、「稲妻」とよばれる巨大クマと「三本足」とよばれるイノシシ。

食料の少ない山から、里に下りてきた巨大獣。
なんたってちょっとやそっとじゃあ死なないんだからスゴイ。
「三本足」とよばれるイノシシは、カガミジシとも呼ばれ、松ヤニと泥を躰じゅうに塗りたくってテカテカになってる。そのため弾丸すらはじいてしまうというのだ。
おまけに巨大獣は、生き抜くための知恵と知性まで感じさせるというから、もう半分神格化された存在という設定だ。

またそれを追う猟師も深い。
特に戸部徹太郎という寡黙な老猟師。
かつて襲われたこともある「稲妻」をしとめる事が、自分の人生のような猟師。
巨大獣とシンクロする戸部徹太郎の生き様が見事だ。

この「稲妻」「三本足」と猟師たちとの死闘が圧巻。

山岳冒険小説や動物モノの小説が好きな方には絶対オススメだ。
(西村寿行「風は悽愴」に感動した方は特に!)



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NPOピッキオ/野生鳥獣保全管理センターのモデル:見ると小説の理解がより深まる



赴任当初は浮いていたキャリアの七倉も、時間とともに山間の管理センターが似合う男に変貌する。
特に犬が苦手だった七倉が、クマ対策犬のダンと心を通い合わせるようになって行くところがステキだ。
自然が豊かな山村で犬とともに暮らす生活。
いいなあ、やってみたいなあ、と想像するくらいでいいんだろうな。
実際にやったらとんでもなく大変だろう。


約束の地/樋口明雄の表紙
 

◆他サイトの感想◆
森乃屋龍之介の日常



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