だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

アラミタマ奇譚/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:アラミタマ奇譚
・著者:梶尾真治
・定価:1,600円
・出版社:祥伝社
・発行日:2012/7/30

◆おすすめ度◆
・ファンタジックSF小説度:★★★
・阿蘇山にはそんな不思議な歴史があったのか度:★★
・小学校の図書室にはもれなく置いてほしい度:★★★★

◆感想◆
恋人の千穂と一緒に、彼女の実家のある阿蘇行きの飛行機に乗った知彦だったが、突然の衝撃に気を失ってしまう。そして知彦が意識を取り戻したのは病院。ニュースで飛行機が墜落したこと、さらに知彦以外の全員が行方不明となっていることを知るが…

カジシンらしい愛と勇気の物語。
テーマとなる謎・不思議が阿蘇山由来、というのが日本昔話風でもある。

前半は、恋人を捜す知彦と不思議な使命をもった人たちとの出会いに、阿蘇山の不思議を絡めて展開。
後半は、あらぶるモノとの戦いを全面にだしたアクションファンタジー。
どちらかというと少年向けの展開で、小学校の図書室にはもれなく置いてほしいと思わせる内容だ。

ちょっと「サラマンダー殲滅 」を思い出させる設定もあったりして、カジシンファンは思わず「うんうん」とうなずきそう。
阿蘇山というパワースポットに詳しい方なら、より本書を楽しめるかも。

ウィキペディアの「阿蘇山の伝説」から抜粋。

大昔の阿蘇は外輪山に切れ目が無く、その中には水がたまって広大なカルデラ湖になっていた。健磐龍命はこの水を無くして田畑を造ろうと考えた。
外輪山の一部を蹴破るが、そのはずみで健磐龍は尻餅をついてしまって「立てぬ!」と叫んだ。以後その場所は「立野(たての)」と呼ばれるようになった。

オヤジギャク愛好家、激しく納得の地名だ。

◆関連記事◆
阿蘇山/ウィクペディア
みんなが知っている阿蘇は不思議がいっぱいの山です超阿蘇!

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ダブルトーン/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:ダブルトーン
・著者:梶尾真治
・定価:1,500円
・出版社:平凡社
・発行日:2012/5/23

◆おすすめ度◆
・ロマンチックサスペンスミステリーホラーSF度:★★★
・交錯する二人の女性の意識度:★★★
・最後はどうなる?… ひえぇ~度:★★★

◆感想◆
目を覚ましたときに、今日は自分が田村裕美だということがわかる。そして、まるで夢の記憶のように、自分が誰か他の人として生活している記憶が薄れて行く…

カジシン得意のタイムトラベルもののロマンチックでサスペンスなSF小説。
主役となる田村裕美と中野由巳の間で、意識がジワジワと交錯していく。
脇役の同僚や家族なんかもうまく巻き込んで、ロマンチックでサスペンスな物語に。
ちょっとときめいたり、不安でドキドキしたりする描写は、著者の独擅場。読んでるこっちもドキドキだ。

ラストは幸せな展開になるのか、悲しい結末が待っているのか、いったいどうなるんだ? 残りわずかでどんな落ちが?
と思いながら読み進むと、「ひえぇ~」な結末に。

穏やかなラストを予想していたから、ちょっとビックリ。
田村裕美も中野由巳も、幸せな生活を送って欲しくなる結末だ。

起きてすぐ、見た夢の記憶を書き留めようとするシーンがでてくるが、自分も実はやってみたことがある。
これがけっこう難しい。
文字に書いてるうちに、しょわしょわしょわ~っと消えてしまうんである。
それでいて楽しい夢だったとか、怖い夢だったとかの感情は覚えていて、とっても楽しい夢だった時は「何だ読もう! 二度寝して続きを見てやるっ」となるんだけどそんなにうまくいかないのが夢のじれったいところだ。

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クロノスの少女たち/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:クロノスの少女たち
・著者:梶尾真治
・定価:940円
・出版社:朝日ノベルズ
・発行日:2011/8/30

◆おすすめ度◆
・少女向けSF短編小説度:★★★
・愛と友情と冒険度:★★★
・なりたい自分になるために勉強しなきゃ度:★★

◆感想◆
「時間」を扱った、カジシンお得意のSF短編小説2編。
清く正しい少年少女向けの、愛と友情と冒険のSFだ。

中学生を読者ターゲットにしているだけあって、単純明快なドキドキハラハラワクワクホロリな展開。
「彩芽を救え!」は、「クロノスジョウンターの伝説」そのまんまな展開なんだけど、オジサンが読んでもそれなりにドキドキ。
「ああ、友達っていいなあ。家族は大切にしなきゃなあ」なんて中学生みたいな感想を抱いてしまう。

勉強する意味が分からなくなる年頃の読者に向けて、なりたい自分になるためには様々な知識を得ることが大切なんだ、みたいな教訓的な文がチラホラあるけれど、これはちょっと余計かも。
知識不足の実体験がない勉強嫌いな中学生は、そんな忠告程度で勉強するようにはならないし、知識不足の実体験ありまくりの大人だって、いまさら基礎的な勉強なんかしようとは思わないんである(自分のことね)。

本屋の単行本や文庫本のコーナーには置いていないだろうジュブナイル小説本。
ジカジシンファンはお見逃しなく。
ハッピーエンドで読後も爽やかでっせ。

クロノスの少女たち (朝日ノベルズ)

梶尾 真治 朝日新聞出版 2011-08-19
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本書を面白く感じた中学生には、ぜひとも「クロノス・ジョウンターの伝説」を読んで感動してもらいたいと、オジサンは思わずにいられない。

◆関連記事◆
「クロノスの少女たち」梶尾真治/時間旅行~タイムトラベル
クロノスの少女たち[本]/成井豊の公式ブログ
クロノスの少女たち(朝日ノベルス)/読書感想未満、駄文以上。
カジシンエッセイ/高橋酒造サイト上にある本人のブログ

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壱里島奇譚/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:壱里島奇譚
・著者:梶尾真治
・定価:1,600円
・出版社:祥伝社
・発行日:2010/9/10

◆おすすめ度◆
・ファンタジックSF小説度:★★★
・離島での不思議な物語度:★★★
・「おれの人生を返してくれ~」な男性へ度:★★★★

◆感想◆
銀色の縫い目の無いアクリルたわしのような「おもしろたわし」。しかしのその成分さえ分からない不思議な物体。
入手先の壱里島へ行き調査するよう命じられた翔一だが、訪れた先で不思議な出来事に遭遇したり、善良な島民たちと触れ合ったり、素晴らしい大自然や美味しい海産物を食べたりして行くうち、島から離れがたくなってしまう。

さらに、「おもしろたわし」はきっかけでしか無く、そこに秘められたメッセージと翔一の果たす役割が明らかになり・・・っていう感じの、架空の離島を舞台にした不思議なお話し。

会社ではさんざんこき使われ、恋人にはふられ、人生の目標が何だか分からなくなった「おれの人生を返してくれぇ~」な男性なら、「こんな風光明媚な離島で暮らせたらいいよなぁ」と思わずにはいられない。

村起こしな生き甲斐に目覚めて行く主人公や、カジシンらしいロマンチックな展開も用意されて、汗ばむ夏の夜も気分は爽快だっ。

壱里島奇譚

梶尾 真治 祥伝社 2010-08-31
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本を読んでる時は、美しい自然や美味しそうな食べ物に惹かれ「住んでもいいかも」と思った壱里島。
人情味に溢れる島民や美しい女性もいて、これで近くにコンビニと本屋があれば言うことなしだね。

◆他サイトの感想など◆
【書評】『壱里島奇譚』梶尾真治著 - MSN産経ニュース

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ボクハ・ココニ・イマス 消失刑/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:ボクハ・ココニ・イマス 消失刑
・著者:梶尾真治
・定価:1,700円
・出版社:光文社
・発行日:2010/2/25

◆おすすめ度◆
・ファンタジック恋愛小説度:★★
・絶対的な孤独とは度:★★
・ロマンチックが止まらないっ度:★★★★★

◆感想◆
傷害罪の実刑判決を受けた朝見克則は、比較的受刑期間の短い者へ試用される「消失刑」を受けることにする。それはある程度の自由が与えられる代わりに、あたかも自分の存在が消失したかのような刑であった・・・

ついこないだカジシンの新刊「メモリー・ラボへようこそ」を読んだばかりなのに、また新刊が読めるっ うれしい!

本書のキモは消失刑という刑罰の内容。
許可されているエリアなら自由に行動でき、刑期が終了するまでどのように過ごしてもかまわない。しかし、人に近づくことはもちろん、会話や電話やパソコンなどでコミュニケーションをとることが禁止され、さらに首にはめたリングにより人から見えなくという。
まるで存在しない人間になってしまったような刑なのだ。

この受刑期間中に主人公が感じる絶対的な孤独感。
そして後半に起きるファンタジックな展開。

カジシンワールド全開だ!

ハードボイルドな男性読者からは「少女趣味のB級ファンタジーじゃん?」とか言われそうだし、鋭いミステリー小説ファンからは「とってつけたような伏線と展開だね」などと冷やかされそうだが、それでもカジシンだからいいんである。
前半のとてつもない孤独に陥る主人公のいたたまれなさと、とんでもないトラブルを契機として展開される後半のドキドキ。
ロマンチックが止まらない!
笑っちゃうくらい甘あまなんである。

「クロノス・ジョウンターの伝説」が傑作と思う方は是非!

ボクハ・ココニ・イマス 消失刑
ボクハ・ココニ・イマス 消失刑

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「ロバート・シルバーバーグという作家が考えた”無視刑”をヒントにしたものです」云々というセンテンスが本文に。 おお、なんかこっちも読みたくなるぞ。

と思ったら、むかしのテレビドラマ「トワイライトゾーン」の原作のようだ。
見ると著者がインスパイアされるのも納得のドラマ。
でも「消失刑」の方が数段厳しい設定だな。


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トワイライトゾーン 14/54

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メモリー・ラボへようこそ/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書名:メモリー・ラボへようこそ
・著者:梶尾真治
・定価:1,300円
・出版社:平凡社
・発行日:2010/1/25

◆おすすめ度◆
・ロマンチックSF小説度:★★
・ビターファンタジー(なんのこっちゃ)度:★★
・定年後のサラリーマンと、仕事に打ち込んでる女性へ度:★★

◆感想◆
人の「おもいで」を取り出したり、他の人に植え付けたりできるメモリー・ラボ。その「おもいで」にまつわるロマンチックSFの中編2本。

カジシンらしいテーマと展開の物語。
表題作の「メモリー・ラボへようこそ」は、仕事一本槍の男性が定年退職したのち、仕事以外に何もない人生を振り返って・・・という展開。
ちょっとひねりを効かせた内容で、定年退職直後のおじさんには導入部の展開はやや辛いかも。
落ちもダブルパンチでかわいそうみたいな。

二編目の「おもいでが溶ける前に」は、展開にちょっと無理があるなあ。
でも親子をテーマにした物語に、バリバリ仕事女子はホロッと来るかも。

メモリー・ラボへようこそ
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おすすめ平均
starsどこかで見たような

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本書では頭にセンサーを取り付けて記憶を読み取ったり、植え付けたりする装置が出てくるけど(詳細な描写はほとんどないけど)、ま、いずれメモリースティックみたいなのを鼻に突っ込むと(耳でもいいんだけど)、記憶を取っといたり読み込んだりできるようになるんだろうな。

グーグルがないとなんにも分からないようになってきちゃって、パソコンがないとクルクルパー状態なおれ。
早く「メモリースティックカシャ!」になってほしいところだ。

◆メモリー・ラボなお話し◆
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あねのねちゃん/梶尾真治

◆読んだ本◆
・書 名:あねのねちゃん
・著 者:梶尾真治
・出版社:新潮社
・定 価:1,500円
・発行日:2007/12/24

◆評価◆
・ダークファンタジー度:★★
・毒のある児童書度:★★★★
・離人陰陽丸度:★★

◆感想◆
幼稚園児の頃、人見知りだった中原玲香。彼女のそばにはあねのねちゃんがいた。玲香を励まし遊んでくれた、玲香だけのあねのねちゃん。いつしか居なくなったあねのねちゃんが、失恋した大人の玲香の前に現れる・・・

孤独な子供が作り上げる想像上の友達:イマジナリー・コンパニオン。
それをモチーフにしたファンタジー小説。

題材や雰囲気から、少女向けのファンタジーかな?とか思いながら読み進めると、意外に毒のあるダークな展開に。
控えめな主人公の恋愛観や親との葛藤に、ダークファンタジックバトルも盛り込まれ、けっこう刺激的な内容だ。

それでも全体的には若年層向きに書かれている。
若い女性にオススメかな。



イマジナリー コンパニオン
こんなイマジナリー コンパニオンが理想だ!



前に心理学者のゆうきゆう「癒しのスーパー心理術:EB」とう、悩んでる人向けの心理学書を読んだ。
この中に 【自分の中の「理想の存在」EBとの会話で、周囲に流されず、強く、魅力的になるという 心理学のテクニック】 が紹介されていて、興味深かった記憶が。

「あねのねちゃん」を読んでいて思ったんだが、このEBというのは理想的なイマジナリー・コンパニオンをアクティブに作り出すっていうことだな。

前向きで理想的な人格のイマジナリー・コンパニオンを作りあげれば、理論武装とは別のタイプの心理的武装が可能という事だ。

それが良い方に機能するか悪い方に機能するかは「あねのねちゃん」と同じように、イマジナリー・コンパニオンを作った自分次第ということになるのか?



あねのねちゃん/梶尾真治の表紙
 

◆他サイトの感想◆
さすが人気作家のカジシン、グーグルで検索すると新刊なのに取り上げているサイトがいっぱいあるっ、と思ったら、本書は去年出版されてたんだ。
今年の12月と勘違いした。
12月24日発行って、随分とサバをよんだ日にちだと思ったんだよなあ。

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