だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

明日の子供たち/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:明日の子供たち
・著者:有川浩
・定価:1,600円
・出版社:幻冬舎
・発行日:2014/8/10

◆おすすめ度◆
・児童養護施設を舞台にしたドラマチック小説度:★★★★
・「かわいそう」なんて言われたくない!度:★★★★
・笹谷実咲さんに拍手度:★★★★★

◆感想◆
児童養護施設に転職した三田村慎平は、着任初日から先輩職員からキツい指導を受けてしまう。やや憮然としながらも理想にもえて子供たちに接しようとするが…

児童養護施設で暮らす少年少女や、彼らの世話や指導をする職員たちの想いや葛藤、現実の厳しさや強く優しく生きていこうとする姿を描いたドラマチックな小説。

登場人物たちのキャラクターや児童養護施設の風景など、とっても生き生きとしていてリアル。著者のファンなら納得の描写。
色んなトラブルが起きて、それを物語として感動的に構成する展開も見事。
読者サービスや読みやすさはもちろん、物語に込められた想いを読者に過不足なく届けられる有川浩って、天性の作家のような気がする。

そんな作家にアクションを起こした(と想像させる)笹谷実咲さんに拍手。
そうゆう風に思わせるように書いているだけなんだろうか?

自分が精神的に自立を強いられたのは、就職してからだったような気がする。
児童養護施設で暮らす子供たちに比べ、なんと遅いことやら。
未だに自立していないような気もするが、気がするだけだと思うようにしている。

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旅猫リポート/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:旅猫リポート
・著者:有川浩
・定価:1,400円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2012/11/15

◆おすすめ度◆
・男と野良猫のロードノベル度:★★★★
・本当はナナが主人公度:★★★★
・猫嫌いは号泣、猫好きは慟哭間違いなし度:★★★★★

◆感想◆
猫好きの主人公が、ひょんなことから付き合うことになった野良猫ナナと旅する、泣かせる連作短編集。

手塚治虫とか羽生善治とか松本人志とか、その世界で天才といわれている人がいるけれど、有川浩も言葉を操る魔術師的な天才に思えてきた。
「こうゆう物語を書こう」と思ったら、最適な構成と平易な文章と読者の心をつかむ描写を自動的に紡ぎ出すマシーン。
それが有川浩。
当然堅忍不抜とか不撓不屈とか横綱昇進四文字熟語な努力があっての有川浩だろうけど、それを感じさせない文章スタイル。
不自然さや齟齬のない展開で、物語がすすっと身体に入り込んじゃう。


主人公と野良猫ナナの出会いをプロローグに、やむにやまれぬ理由から、ナナの引き取り手を捜すことにした主人公。
引き取りに好感触な友人たちを、ナナと一緒に訪ね歩くというロードノベルな形式の小説だ。

人間関係の、そして人猫関係の機微が著者らしい筆致で描写されるんだけど、特徴的なのは猫のナナの視点で描かれるシーン。
これがステキだ。
ナナの野良猫とは思えない人情家ぶりに、愛猫家なら間違いなくのめり込んでしまうだろう。

ラストは、猫嫌いは号泣、猫好きは慟哭すること間違いなし。
それでも読んだ後爽やかな印象を残すのは、天才的プロ作家・有川浩ならでは。

◆関連記事◆
有川 浩『旅猫リポート』/文藝春秋 特設サイト
旅猫リポート/有川浩(著)/ぐ~たらにっき
『旅猫リポート』 有川 浩 〔著〕/たいむのひとりごと

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空飛ぶ広報室/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:空飛ぶ広報室
・著者:有川浩
・定価:1,600円
・出版社:幻冬社
・発行日:2012/7/25

◆おすすめ度◆
・航空自衛隊広報室のお仕事小説度:★★★
・すばらしきかな、自衛隊度:★★
・奮闘し、頑張り、落ち込み、恋する自衛隊員度:★★★★

◆感想◆
戦闘機パイロットの空井大祐が、不慮の事故で広報室へと転勤となる。不慣れな職場で、先輩たちやマスコミの取材などでもまれながら、次第に仕事への愛着と意義を見いだしていく…

航空自衛隊の広報部を舞台にしたお仕事小説。
あまり知られない広報室の仕事をつまびらかにし、さらに著者らしいユニークで魅力的なキャラクターを生き生きと描いていく小説。

さすがに有川浩、上手です。
悔しかったり悲しかったり、忸怩たる思いだったりほのかな恋心だったりの登場人物たちの気持ちを、さらっと爽やかに描いている。

さらに一種の自衛隊プロパガンダ小説にもなっているところがユニーク。
あまり知られてない仕事の内容をモデルにするというのは、「県庁おもてなし課」と似ているが、舞台が自衛隊ということで著者も相当気持ちを入れてるよう。
自衛隊アレルギーの人が読んで、どれだけ自衛隊に親近感を持つようになるかがテーマともとれる。

テレビ番組の取材スタッフにして自衛隊大嫌いな女性から「戦闘機って人殺しのための機械でしょう?」なんていわれて、主人公が怒り心頭なシーンがある。
そう思っている読者だっていっぱいいると思うが、本書を読み終わったときどれだけ自衛隊(自衛隊員)への見方が変わるかどうがが注目点。

沢村凜の「リフレイン」を読んだ直後ということもあって、なかなか安易に頷けないというか。
いくら専守防衛といったって、敵が攻めてくれば戦闘機で迎撃することもあるだろうし、そうすれば当然戦闘機は「人殺しのための機械」に成り下がってしまう、ということを忘れてはいけないのだろう。
自衛隊員がすばらしい人だからといって、自衛隊がすばらしいということにはならないよなあ。

要は使い方の問題?
そんなことまで考える必要ない?

「空飛ぶ広報室」というそのまんまのタイトルの航空自衛隊のサイトがあって、本書のタイトルをサイト名にしちゃったことが軽いノリで書かれたりしてて。
いろいろ苦労しているのねって感じです。

◆関連記事◆
有川浩 『空飛ぶ広報室』/AKASHIC NOTE
【空飛ぶ広報室】航空自衛隊の中の人/学ぶために何を読む?
空飛ぶ広報室/[JASDF] 航空自衛隊
県庁おもてなし課/有川浩/サイト内
リフレイン/沢村凜/サイト内

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三匹のおっさん ふたたび/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:三匹のおっさん ふたたび
・著者:有川浩
・定価:1,600円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2012/3/30

◆おすすめ度◆
・3人のおっさんがカッコいい度:★★★★
・2人の高校生の恋愛がステキ度:★★★★
・家族みんながあったかい度:★★★★

◆感想◆
むかしは悪ガキ仲間。今は還暦のおっさんたち3人が、町内の悪者たちを懲らしめるという、ユーモア勧善懲悪小説のパート2。

本屋で万引きを繰り返す悪ガキや、ゴミをまき散らす少年、融通の利かない町内会長に偽三匹!
日本全国、至る所で発生しているだろうご近所トラブルを、三匹のおっさんがふたたびバッサバッサと解決するっ!

コミカルで人情味があって、主人公たちがとってもステキだ。
高校生カップルも絵に描いたような青春を謳歌。
気の置けない仲間がいて、人の役に立つことが出来て、気遣ってくれる家族がいる。おっさんのユートピアですね。

でもなんだか前作より全体的におとなしめな感じ。
前はもっと勧善懲悪していたような気がするが、読み手側の問題か?

前作を読んでいた時は、人間関係のストレスや不満を溜め込んでいて、それを「三匹のおっさん」で晴らしていたのかもね。
ということは、今はさほどストレスや不満がないってことに。

人間関係などでストレスが溜っている方のカタルシスになること間違いなしな一冊です。
実証済みです。

ヒメオドリコソウ
春の野に咲く~ヒメオドリコソウ~/琵琶湖からの便り~風と光~

六つの短編にくわえて「好きだよと言えずに初恋は、」という「植物図鑑」とのクロスオーバーな短編も集録。
ヒメオドリコソウを見分けられるようになりました。

◆関連記事◆
有川 浩『三匹のおっさん』特設サイト/文藝春秋
『三匹のおっさん ふたたび』(有川浩 著) 著者インタビュー/本の話WEB
三匹のおっさん ふたたび/有川浩(著)/ぐ~たらにっき
三匹のおっさん/有川浩/サイト内
植物図鑑/有川浩/サイト内

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ヒア・カムズ・ザ・サン/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:ヒア・カムズ・ザ・サン
・著者:有川浩
・定価:1,300円
・出版社:新潮社
・発行日:2011/11/20

◆おすすめ度◆
・家族小説度:★★★
・心のひだにしみ込む描写度:★★★★
・こんな父親がステキだ度:★★

◆感想◆
出版社で編集の仕事をしている真也は、品物に残された人間の記憶が見えるという不思議な力があった。同僚・カオルの父親がアメリカから20年ぶりに帰国することになり、カオルに同行した真也は…

「ヒア・カムズ・ザ・サン」と「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」の2本の短編からなる本書。登場人物や設定はほぼ同じなんだけど、大きく異なるのはカオルの父親の設定。

天才肌で破天荒、家族の制止をも振り切りアメリカに飛び出して行ったバージョンと、ダメダメ男で意気地なし、見栄っ張りでうだつの上がらないバージョン。
前者が「ヒア・カムズ・ザ・サン」に登場するカオルの父親で、後者が「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」に登場するカオルの父親。

そんな父親が中心になって、家族や関係者が振り回されてしまうのだけれど、そこに色々なドラマがあって、愛があって、深い絆があって、みたいな展開。

両極端な父親像だけど、「こんな性格の奴、いるよなあ」なんて思いながらも「親を諦める」なんていう含蓄ある台詞に深くうなずいたりするものの、ちょっと俯瞰して見ればやっぱりこんな面倒な父親は嫌だぞ。
天才もダメダメ男も離れて見る分にはいいけれど、自分の生活圏に入ってくると超大変!

父親が家族を思う気持ち、娘が父親に抱く感情が、心のひだにしみ込むような描写でグッとくるけど、それは著者の描写力が優れているから。
きちんと家族を養い、平凡だけど円満な暮らしをしている父親がやっぱりエラいんである。

ま、それじゃあドラマチックな小説にならないんだけれどね。

ヒア・カムズ・ザ・サン

有川 浩 新潮社 2011-11
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「本書は演劇集団キャラメルボックスとのクロスオーバー企画として生まれた変わり種の小説」とのこと。
キャラメルボックスは梶尾真治、恩田陸、東野圭吾なんかの小説も舞台化したりして、「やるぅ」な劇団なんだけど、自分は一切見たことないけど知ったかぶりしてみました。

◆関連記事◆
「ヒア・カムズ・ザ・サン」ネタバレなし感想/ペンギンウォーク
『ヒア・カムズ・ザ・サン』発売情報/有川日記
演劇集団キャラメルボックス

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県庁おもてなし課/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:県庁おもてなし課
・著者:有川浩
・定価:1,600円
・出版社:角川書店
・発行日:2011/3/31

◆おすすめ度◆
・高知県観光立県化小説度:★★★
・爽やか町おこし度:★★★★
・お役所で頑張る青年のサクセスストーリー度:★★★★

◆感想◆
高知県の観光をなんとか強化しようとする高知県庁の「おもてなし課」。地元出身の作家に観光大使を依頼したものの、あまりのお役所仕事にあきれ気味の作家から電話が・・・

自分本位なお役所仕事にどっぷりな高知県庁。その中で働くおもてなし課の青年が主人公。
観光大使を依頼した作家から、さんざん嫌みやら常識やらをいわれながら、なんとか高知県の観光を振興させようとする奮闘記。
そこに言いたい放題な観光大使の作家や、アルバイトのカワイ子ちゃんや、曰く付きの観光コーディネイターが絡まって物語は展開。

これといって目新しいものはないんだけれど、キャラクターで読ませる著者の筆力は健在。
実力のある人気作家は、日常な出来事も物語に昇華させる力があるんだね。

県庁おもてなし課

有川 浩 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-29
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本書は当然のことながらフィクションなんだけども、高知県庁には本当に「おもてなし課」があったり、実際の観光地が登場したり、小説のモデルとなった人物がいたりと、かなりノンフィクションな感じ。
いってみれば本書は「高知県観光振興小説」でもあるというメタな造りにもなっていて、読んだ人はもれなく高知県に行きたくなる仕組みなんである。

やるなあ~

◆他サイトの感想など◆
高知県庁 観光振興部 おもてなし課
『県庁おもてなし課』は高知を変えるか?:日経ビジネスオンライン
ペンギンウォーク

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ストーリー・セラー/有川浩

◆読んだ本◆
・書名:ストーリー・セラー
・著者:有川浩
・定価:1,300円
・出版社:新潮社
・発行日:2010/8/20

◆おすすめ度◆
・メタ恋愛小説度:★★★
・著者の人となりと生活が伺える度:★★★
・物語を書く側と読む側の接点度:★★★

◆感想◆
「あなたの奥さんは大変に珍しい、かつて症例がない病に罹っています。…思考に脳を使えば使うほど、奥さんの脳は劣化します。…つまり、奥さんは思考することと引き替えに寿命を失っていくのです」 何だその安いSF映画みたいな設定は…

でだしは本当に安いSFみたいな設定の恋愛小説かと。
だた読み進めて行くと、これがなかなかメタな恋愛小説。
「むむ、イニシエーション・ラブな展開なのか? side:A saide:Bの2部構成だし」という推測も外れる予想外の展開。

今までの著者の恋愛小説とは趣きが異なるが、色々と大変なことを抱えているんだな、でも一生懸命幸せな生活を送っているんだな、って著者のリアル生活を想像させる物語。

人生いろいろあるけど、へこたれずにいて欲しい。
って、全然著者の思惑とズレてたりして。

ストーリー・セラー

有川 浩 新潮社 2010-08-20
売り上げランキング : 121

おすすめ平均 starAve
star1極上の娯楽文体
star2一人のための物語でありながら、全ての読者ために書かれた物語でもある
star3一つだけ気になったこと
star4惹きこまれずにはいられない 圧倒的な才能

by ヨメレバ

WEB本の雑誌/作家の読書道に有川浩のインタビューが記載されているんだけど、微妙に本書とかぶっている発言があって面白い。
書き上げた小説を電撃へ送ったらどうかと旦那にすすめられたり。
旦那から「いつか君はプロになるよ」と言われ続けてたり。

そうやって人から褒められたり言われ続けたりすると、本当に夢が叶うものなのかもしれないぞ。
だれも褒めてくれないおれは、自分で自分をめいっぱい褒めることにしている。
いまだに夢は実現しない。

◆他サイトの感想◆
一日一冊のブックレビューBlog
言葉の鎖‐連‐

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