だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

槐(エンジュ)/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:槐(エンジュ)
・著者:月村了衛
・定価:1,600円
・出版社:光文社
・発行日:2015/3/20

◆おすすめ度◆
・悪漢小説度:★★★★
・中学生が主人公とは思えない暴力ぶり度:★★★★
・荒唐無稽を吹き飛ばす勢いで一気読み度:★★★★

◆感想◆
中学校野外活動部の7人が訪れたさびれたキャンプ場。引率の教諭2人と宿泊設備の清掃をしている時、銃声のような音が聞こえて…

中学生を主人公にした暴力シーンあり、銃撃戦ありの悪漢小説。
半グレ集団やテロリスト、チャイニーズマフィアも登場し、キャンプ場はブルース・ウィリスが出てきてもおかしくないような戦闘状態。

「荒唐無稽な」という感想が出てきそうな設定と内容なのに、それを吹き飛ばす勢いで一気読みさせる怒濤の展開。

月村了衛、驀進中です。

「槐」は白色の蝶形の花がたくさん咲く樹木。花言葉は「幸福」「上品」だそうです。
槐が味方する方は「幸福」でも、敵対する方は「不幸」のどん底のような。
「槐」の蕾を乾燥させたものは止血作用があるそうです。
槐が味方する方には「止血」でも、敵対する方は「流血」のてんこもりのような。

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土漠の花/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:土漠の花
・著者:月村了衛
・定価:1,600円
・出版社:幻冬舎
・発行日:2014/9/20

◆おすすめ度◆
・単純明快なストーリーに手に汗握る展開度:★★★★
・登場人物の想いに冒険小説の魂を見る描写度:★★★★
・今、月村了衛が熱いぜ度:★★★★★

◆感想◆
ソマリアの国境付近に墜落したヘリの捜索活動にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。そこに突然助けを求めてやってきた女性は、氏族間抗争で命を狙われている女性だった…

月村了衛、面白い!

武器はおろか食料や通信手段もないなかで、いかに敵から逃げるかという、単純明快なストリーがいいぞ。
迫る敵、土漠の暑さ、仲間内での確執。いろんな問題を抱えながら、様々な工夫とスキルを駆使して戦う様子がスリルとサスペンス。

登場人物達の人物像も熱い。
まるで昔の冒険小説を読んでいるような「魂」を感じる。

機龍警察シリーズをはじめ、時代小説をも手がける月村了衛。
もう書きたいことが山のようにあって、筆が追いつかないようだし、またどれも熱い「魂」を感じる筆致。

今、月村了衛が熱いぜ。

撤退の途中に遭遇する「ハムシン」
こんなかんじなのだろうか。こりゃタマラン!

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機龍警察 未亡旅団/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:機龍警察 未亡旅団
・著者:月村了衛
・定価:1,900円
・出版社:早川書房
・発行日:2014/1/25

◆おすすめ度◆
・近未来警察小説度:★★★★★
・スリルとアクションと謀略とテロ度:★★★★★
・過去を背負った登場人物たちの生き様度:★★★★★
・眠気を吹っ飛ばす面白さ/完結まで死ねない度:★★★★★

◆感想◆
チェチェン紛争で家族を失った女性だけで組織された「黒い未亡人」。日本に潜入した彼女たちがテロを計画しているという情報が…

チェチェン紛争の実態と、その犠牲者である「黒い未亡人」たちの生い立ち。
「龍機兵」とテロリストたちとの手に汗握るアクションシーン。
警察内に根を張る組織の確執と、しだいに明らかになる「敵」の存在。
そして、登場人物一人ひとりの過去と現在が、複雑な網の目のようにからまり物語が展開する。

読み始めたら止まりません。眠気も吹っ飛ぶ面白さ。
チェチェン紛争に巻き込まれた人々の苦しみに胸が締め付けられ、むごいテロの情景に背筋が寒くなり、最新の近接戦闘兵器・龍機兵に搭乗した気分で手足を振り回したくなり、思わず涙と鼻水もこぼれそうになるという、読者の身体にもダメージを与えかねない精緻さと迫力。

警察小説やアクション小説、SF小説としても面白さも抜群ですが、読者を魅了するのは自らの信じることを貫こうとする登場人物たちの「魂」。
そしてそのぶつかり合い。

このシリーズ、巻を追うごとにスケールアップし、人物に厚みが出てきて、面白さに拍車がかかってます。
シリーズが完結するのを見届けるまでは死ねませんっ。

2ページに渡る登場人物一覧表。
普通は読んでる途中で見返して確認したりするんですが、本書ではそんな必要がないくらい人物が生きてます。
新しい缶コーヒーが出たら姿警部に教えたくなるくらい、缶入りおしるこを馬面の曽我部警視に差し入れしてもいいかなと思うくらいに人物描写がすぐれていて印象に残ります。

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コルトM1851残月/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:コルトM1851残月
・著者:月村了衛
・定価:1,600円
・出版社:講談社
・発行日:2013/11/21

◆おすすめ度◆
・ハードボイルド時代小説度:★★★★
・コルトM1851に魅せられた男度:★★★★
・アクション、信義、そして愛度:★★★

◆感想◆
秘匿している拳銃により邪魔者を排除し、江戸の裏社会で頭角を現してきた郎次。一家の跡目をとろうとするが…

曰く付きな過去を持つ郎次が主人公の時代小説。
少しずつ明らかになる生い立ちや過去の出来事が、アウトローな郎次の人物像をくっきりと浮かび上がらせる。
現代版で描けば普通のハードボイルドなアクション小説になっただろうそれを、江戸時代を舞台にしたことで、残月が似合う奥行きのある時代小説になったような気がする。

コルトM1851のメカニカルな描写やアクションシーンも読みどころ。
コルトに魅せられた人の気持ちが伝わる妖しさをかもし出している。

はじめは嫌な奴に思えた郎次、物語が進むうちに微妙に印象が変化して。
やっぱりキモは「愛」なんだなあ。

一刀流無想剣 斬」や「黒警」より重厚で、「機龍警察」より静謐なハードボイルド。
シチュエーションは色々ですが、著者のスタンスはぶれてません。

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黒警/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:黒警
・著者:月村了衛
・定価:1,500円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2013/9/30

◆おすすめ度◆
・ダークな警察小説度:★★★
・刑事とヤクザの抱えるトラウマ度:★★★
・ざまを見ろなカタルシス度:★★★

◆感想◆
組織犯罪対策部の沢渡と滝本組幹部の波多野。とある事件をきっかけに同じトラウマを抱えるようになった2人が、中国黒社会の組織が起こした事件にかかわるが…

巨大警察組織の中で、その居所や自分の存在意義を見失いつつある沢渡。
やくざとの関係や、中国黒社会の起こした事件、さらに警察内部に潜む「悪」などを盛り込み、最後はちょっと「半沢直樹」なカタルシスの警察小説。

そんなに小難しい展開や複雑な構成ではないので、思ったよりスイスイ読める。
「読んだ後、重苦しい気分になるのもイヤだなあ」なんて心配も無用だ。

「機龍警察」シリーズを心待ちの方は、本書でちょっとストレス解消を。

「機龍警察」ファンの方は

『機龍警察 焼相』(小説新潮 2013年 08月号
『機龍警察 沙弥』(読楽 10月号)

でさらにストレス解消を。

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一刀流無想剣 斬/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:一刀流無想剣 斬
・著者:月村了衛
・定価:1,500円
・出版社:講談社
・発行日:2012/10/29

◆おすすめ度◆
・戦国時代剣豪小説度:★★★
・血しぶきをあげる一刀流無想剣度:★★★★
・姫と小姓を命がけで守る神子上典膳の真意は?度:★★★

◆感想◆
謀反により命を狙われる澪姫と小姓の小弥太。たまさか通りかかった神子上典膳は、なぜか二人を命がけで助けるが…

戦国時代を舞台に、剣豪の神子上典膳が縁もゆかりもない少女と少年を助けるという、アクションエンターテイメントの王道な展開の剣豪チャンバラ小説。
次から次へとくる追っ手を振りきり、剣の達人と切り結び、絶体絶命の危機を乗り越える痛快にしてサバイバルなストーリー。
忍者みたいにアクロバティックなテクニックを使ったり思わぬ助けが現れたりと007なみの不死身さもさることながら、主人公・神子上典膳のかもし出すブラックなオーラも読みどころ。

機龍警察シリーズのようなやや重めの活劇風時代小説を期待したが、ちょっと違って軽めの剣豪小説。
と思いきや、ラストには予想を覆す展開もあったりして、それはそれで十分エンターテイメントなチャンバラ小説です。

「切落」「払捨刀」「夢想剣」などの極意に興味津々となるのはなんでだろう。
少年がチャンバラごっこに夢中となる気持ちが良くわかる。

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小野派一刀流/Wikipedia

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機龍警察 暗黒市場/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:機龍警察 暗黒市場
・著者:月村了衛
・定価:1,900円
・出版社:早川書房
・発行日:2012/9/25

◆おすすめ度◆
・ハードボイルド警察小説度:★★★★★
・手に汗握るパワードスーツ型ロボットアクション小説度:★★★★
・浄化する過去のしがらみ度:★★★★★

◆感想◆
冒険小説ファンの魂を揺さぶる機龍警察シリーズの第3巻。
前作「機龍警察 自爆条項」では、女テロリストにしてスナイパーのイライザが主人公だったが、本書は、真っ当な警官でありたいと願いながらも複雑な過去の呪縛にとらわれ苦悩する元ロシア警官のユーリ・オズノフ警部が主人公。

事件が起き、ユーリの過去が語られ、物語の山を迎えるという構成は前作と同様だが、序盤からラストまで途切れない緊張感がハードボイルド。
ユーリ・オズノフの過去のパートだけで1本の中編警察小説になりそうな密度だ。
変革するロシアで暗躍するマフィア、腐った警察組織、その中で矜持をもって事件に立ち向かおうとする警官ユーリ・オズノフ。
そして裏切り。
その構図が現在の事件へと引き継がれる展開も見事。

特に後半の展開が素晴らしい。
ここが物語のクライマックスかと思ったら、さらに、またさらに手に汗握るシーンの連続。
ユーリの過去と現在の事件が複雑にリンクし、さらに日本の警視庁内部の構図とも相似させるシニカルさ。
すべてが渾然一体となった大盛り上がりのアクションシーンを経て、過去の呪縛から解き放たれるユーリに、前作のラストシーンのような浄化作用を感じる。

ちょっと作り過ぎの感じもあるけど、それを強引に納得させる説得力もある。

3人の機龍兵搭乗員のうち、「機龍警察 自爆条項」でライザ・ラードナーを、本書「機龍警察 暗黒市場」でユーリ・オズノフを主人公にしたからには、次作では3人目の機龍兵搭乗員・姿俊之が主人公で決まり?
コーヒー好きの理由が明かされそうで、それも楽しみ。

ユーリ・オズノフに感情移入すると、顔を歪めながら自分の掌を握ってしまう。

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『機龍警察 暗黒市場』 月村了衛 > 「このミス」完全読破 No.586/朴念仁と居候
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