だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

荒神/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:荒神
・著者:宮部みゆき
・定価:1,800円
・出版社:朝日新聞出版
・発行日:2014/8/30

◆おすすめ度◆
・元禄時代に暴れ出す化け物との戦い度:★★★★
・今までにない破天荒度:★★★★
・宮部版「エイリアン」小説度:★★★★

◆感想◆
村から必死に逃げる蓑吉は、不気味な地響きとものの壊れる重たい音を思い出していた。あれはいったい、何だったのか。夜の闇のなか、突然襲ってきたあれはいったい何物なのか…

得体の知れない未知の化け物との戦いといえば、たいていはそら恐ろしい地球外生命体が登場するバトルSFが定番だが、それを元禄時代の山村を舞台にするという設定が意表をついている。

化け物の産まれてきた因縁を物語の背景にし、それと戦ういわくありげな藩主側近、純朴な村人、正体がいまいちわからない用心棒や絵師などの登場人物の姿がファンタスティック。
しだいに明らかになる化け物の正体がぶっ飛んでいて、エイリアンを凌ぐ暴れん坊ぶりも壮観。

シガニー・ウィーバーみたいな豪腕の女性は登場しないけれど、時代背景を取り込んだ純和風な結末が用意されていて、なんだか今までの著者にない冒険活劇小説のよう。

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ペテロの葬列/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:ペテロの葬列
・著者:宮部みゆき
・定価:1,800円
・出版社:集英社
・発行日:2013/12/25

◆おすすめ度◆
・社会派ミステリー小説度:★★★★
・善と悪の境界度:★★★
・主人公の境遇に同情度:★★★★

◆感想◆
『誰か―Somebody』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ、待望の第3弾、ということで、過去の2作を思い出せないまま読み始めるが、そんなことは問題なく物語に引き込まれる。

いきなりのバスジャック事件。犯人の人物像がちょっと変わった性格で、「この人物は一体何者!?」という興味が物語の吸引力に。

次第にそれがこの小説の本流だということに気づいていくが、さりげなく描かれる傍流のストーリーこそが著者の本当に書きたかったことではないかと。
ひょっとして著者のハートにグサッとくるリアルな出来事があったのでは?と勘ぐりたくなるようなラストだし。

それにしても見るに耐えない主人公の境遇。
人や家族のことを考えて、不自由な境遇の中色々と頑張っているのにこの仕打ち。
探偵になっちゃったほうがいいかもしれません。

人を思い通りにさせるような会話テク、マスターしたいもんです。

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泣き童子 三島屋変調百物語参之続/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:泣き童子 三島屋変調百物語参之続
・著者:宮部みゆき
・定価:1,700円
・出版社:新潮文庫
・発行日:2013/6/30

◆おすすめ度◆
・江戸時代 不思議恐ろし百物語度:★★★★★
・心がほっこりしたい方へ度:★★★★
・背筋がゾゾッとしたい方へ度:★★★★

◆感想◆
不思議な話しを聴き集めている三島屋の行儀見習いのおちかが、叔父の提案で百物語を聞き集めるという、「おそろし」「あんじゅう」に続く「三島屋」シリーズの第三巻。

前作同様、登場人物の造形がいかにも宮部みゆきらしくとっても優しい。
百物語という怪談話なのに、心ががほっこり暖まる人物や内容。
水戸黄門みたいに揺るぎない展開で、「三島屋」シリーズがお好きな方は、その期待を裏切らない出来映え。さすがです。

そんな微笑ましかったり優しかったりする短編の中で、表題作の「泣き童子」はかなりビックリ背筋がゾゾッの怪談。
映画なんかでびっくりどっきりさせるシーンはよくあるけれど、小説で、ワンフレーズでここまでゾゾッとさせるのは至難の業では。
球形の季節/恩田陸」以来のビックリ背筋ゾゾッ。

ただ優しい登場人物を描くだけが宮部みゆきじゃないんです。
本当はかなり恐ろしい登場人物だって平気で描けるんです。
ギャップ萌えですね。

著者の所属する大沢オフィス 公式ホームページでも、「表題作強烈です」の文字が。
確かにかなり強烈でした。
子供に大泣きされたらビビっちゃいそうです。

◆関連記事◆
宮部みゆき『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』特設サイト/本の話WEB
『泣き童子(わらし)三島屋変調百物語参之続』(宮部みゆき 著)著者は語る/週刊文春WEB
宮部みゆき 公式ブログ/大極宮 大沢オフィス公式ホームページ
おそろし/宮部みゆき/サイト内
あんじゅう 三島屋変調百物語事続/宮部みゆき/サイト内
球形の季節/恩田陸/アマゾン

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桜ほうさら/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:桜ほうさら
・著者:宮部みゆき
・定価:1,700円
・出版社:PHP研究所
・発行日:2013/3/11

◆おすすめ度◆
・心温まる時代小説度:★★★★★
・いつまでも物語に浸っていたい度:★★★★★
・大胆な展開もあり度:★★★★

◆感想◆
上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋が、賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃する。古橋家次男の笙之介は、江戸深川の長屋に住みながら、事件の真相を明かそうとするが…

江戸の下町を舞台にした、人情と淡い恋と御家騒動をいい塩梅でミックスした心温まる時代小説。
過去の著者の時代小説同様、完成してます揺るぎません。
温かく心地よい物語の世界に、いつまでもゆるゆると浸っていたくなる小説です。

笙之介と勝ち気なお嬢さんとの淡い恋あり、下町の人情話あり、ちょっとしたミステリーあり、尾家騒動の大胆な展開あり。
そして物語を貫く「名は字は体を表す」ならぬ「文字は体を表す」みたいなテーマもあって、うきうきしたり感心したりドキドキしたり。

浮き世の「ささらほうさら」を忘れるには「桜ほうさら」を読むのが一番。(決まったっ)

挿絵もほのぼのしているし、ペジには桜の花びらがレイアウトされているし、起こし絵なんていうアイテムも物語に出てくるし、たおやかな少女なら抱きしめて寝たくなるような本です。

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宮部みゆき『桜ほうさら』/PHP研究所 著者のインタビューも読めます
宮部みゆき最新作、浪人の恋と家族の難しさを描く時代ミステリー『桜ほうさら』を刊行/MSN産経ニュース

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ソロモンの偽証 第I部 事件,第II部 決意,第III部 法廷/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:ソロモンの偽証 第I部 事件,第II部 決意,第III部 法廷
・著者:宮部みゆき
・定価:第I部 1,800円 第II部 1,800円 第III部 1,800円
・出版社:新潮社
・発行日:第I部 2012/8/25 第II部 2012/9/20 第III部 2012/10/10

◆おすすめ度◆
・中学校を舞台にした法廷ミステリー小説度:★★★★★
・いったい真相はなんなんだ?!度:★★★★
・登場人物の描写がずば抜けてる度:★★★★★
・枝葉まできっちり度:★★★★

◆感想◆
クリスマスの朝、中学校の校舎から墜落死した男子中学生が発見される。警察の操作では「自殺」ということになったが、匿名の告発状や不良グループとの喧嘩があったことから殺され手のではないかという噂が広がり…

宮部みゆきの五年ぶりの現代ミステリー小説。
中学校内での複雑な人間関係、次々と起きる墜落死にまつわる不可解な事件、いったい何が真相なのか、読み始めたら止められないミステリー小説。
寝るのを忘れる面白さだ。

何が面白いかって、読者を飽きさせない展開の妙や張り巡らせた思わせぶりな伏線もさることながら、すべての登場人物がそれはもう実在しているかのように生きているところがすばらしい。
優等生だったり不良だったり目立たなかったりする中学生をはじめ、先生や警察官やテレビ記者、はてはちょい役のおじさんから野良犬(登場しない?)まで、すべての人に人生がある。それを枝葉まできちんと描ききっている重厚感。
分厚い本が3冊になってしまうのもうなずける。

さらにこの事件がどのように決着するのかも予断を許さない。
ミステリーとしてのナゾはやや弱いものの、同級生が墜落死するという「事件」が起きて、それを自分たちで真相をつかもうと「決意」し、生徒たち自らが弁護士役,検事役,判事役,陪審員役を決めて学内で「法廷」を開き真相をつかもうとするドラマが読み応え十分だしスリリング。

最後までのんびり読むことのできないシリアスな展開。

「こんなに賢い中学生がいるのか?」という設定への疑問が、ずーっと頭の片隅にあったけれども、これはどうしても多感で自意識過剰で不安定な心をもつ14歳の中学生が主役でなければならない物語だったんだなあ。

昔はセブンティーンというのが多感な青春時代を代表する年齢だったように思うが、今はフォーティーンなんだなあ。
いろんなコトが低年齢化して、寿命はどんどん延びて。
15歳を志学、30歳を而立、40歳を不惑、50歳を知命、 60歳を耳順、70歳を従心と呼ぶけど、もっと年齢を切り上げないといけないかもしれない。
あるいは一度の人生で二回りするのかも。

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宮部みゆきさん新作「ソロモンの偽証」/ニュース 本よみうり堂 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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おまえさん/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:おまえさん
・著者:宮部みゆき
・定価:文庫 上838円 下838円
・出版社:講談社文庫
・発行日:2011/9/22

◆おすすめ度◆
・江戸時代ミステリー小説度:★★★★
・ユーニークな登場人物たちがアニメチック度:★★★★
・宮部みゆきにかかれば極悪人もいい人に度:★★★★

◆感想◆
「ぼんくら」「日暮らし」に続くシリーズ第3弾。
単行本と文庫本を同時に発行するというびっくり戦略な新刊だ。

物語は、本所深川のぼんくら同心・平四郎や超美形の弓之助、何でも記憶できちゃう三太郎などのシリーズおなじみの登場人物を引き継いで、貧相な男が辻斬りで殺された事件を発端に展開。
出だしは話があっちゃこっちゃして雑然とした感じだったけど、そこは宮部みゆき、あっちゃこっちゃの話がきちんと一つになっていくからさすが。

多くの登場人物の半生をも面白おかしく切なく優しく描ききってしまう丁寧な筆致で、さらにミステリーとしての結末もきっちり。
ちょっと「若い(青い)」感じもする内容だけれど、若い登場人物が多いからしょうがないのか。

それにしても、宮部みゆきにかかればどんな極悪非道な犯罪者もいい人に思えてくるから困っちゃう。
特に男は単純明快なバカだねえ。
もうちょっと後先を考えろって感じ。

逆に女は恐いぞ。
心の奥底にチロチロと嫉妬や妬み、悋気の暗い炎が、いつも燃えているような。
そしてそれを自覚も他覚もしているようで。

著者も女だからねえ。

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同じ中身の小説を、単行本と文庫本を同時に発行するというビックリな戦略。どうやら

予定より3年遅れの刊行で、宮部さんは「本来なら、もう文庫が出ている頃。文庫の読者をさらに3年お待たせするのは申し訳ない」と同時刊行を決めた

そうで、単行本と文庫本、それぞれどのくらい売れるのか興味のある所。

おんなじ大沢オフィースに所属する京極夏彦の「ルー=ガルー2」は、単行本、ノベルス、文庫、電子書籍の4形態で同時に発売するというからビックリくりくり。
形態によって内容とかを変えるってのもありそう?(さなそう)

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大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき公式ホームページ『大極宮』

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チヨ子/宮部みゆき

◆読んだ本◆
・書名:チヨ子
・著者:宮部みゆき
・定価:476円
・出版社:光文社文庫
・発行日:2011/7/20

◆おすすめ度◆
・ホラー&ファンタジー短編小説度:★★★
・久しぶりにうすら恐い宮部みゆき度:★★★
・「聖痕」は現代の神創成録度:★★★★

◆感想◆
五つの短編をおさめたホラー&ファンタジー小説集。
ファンタジックでハートフルな小説が多い著者の近作の中で、うすら恐くてシリアスタッチな宮部みゆきも堪能できる異色作的な短編集。

着ぐるみを着ると、周りの人が??に見えてしまい…という「チヨ子」と、娘の探偵ごっこに付き合わされたはずの父は…という「いしまくら」は、どっちかというとファンタジックでほんわかムードな小説。

亡くなった小学校時代の同級生が…という「雪娘」と、商店街のオモチャ屋に幽霊がでるという噂が…という「オモチャ」は、淋しく悲しくゾクゾクなホラー小説。

最後の「聖痕」は現代の神創成録な物語で、病んでるネット社会を背景にしたダークな「神話」といった趣き。
現代の日本では「神」はこうやって生まれるんだねえ。
コワッ。

チヨ子 (光文社文庫)

宮部 みゆき 光文社 2011-07-12
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宮部みゆきが所属する大沢オフィスの公式ホームページには、著者が着ぐるみ姿で「チヨ子」を朗読している写真が!
「カワイイ」というよりちょっとホラー!?

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