だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

鹿の王/上橋菜穂子

◆読んだ本◆
・書名:鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐
・著者:上橋菜穂子
・定価:上1,600円 下1,600円
・出版社:角川書店
・発行日:2014/9/25

◆おすすめ度◆
・一気読みの異世界ファンタジー小説度:★★★★★
・巨大帝国の思惑と弱小部族の生き残り戦略度:★★★★
・人体∽社会 とちらも生きるために必死度:★★★★
・やんちゃで元気なユナが可愛すぎる度:★★★★★

◆感想◆
帝国に囚われ岩塩鉱で強制労働を強いられる戦士団<独角>のヴァン。ある夜、岩塩鉱の労働者たちが犬の群れに襲われ、そのかみ傷が原因と思われる奇病が発生するが…

「守り人」シリーズや「獣の奏者」シリーズがめちゃ面白い上橋菜穂子の長編。
期待に違わず面白い。
巨大帝国の思惑や、帝国に吸収され虐げられている弱小部族の反乱や、特異な医療技術を武器に帝国と一定の距離をとりながらも活路を見出そうとしている民族など。
様々な人々の想いを背景に、岩塩鉱で強制労働させられていた戦士のヴァンが、いかにして生き残るかという一種のサバイバル小説でもある。

物語の発端となるのは犬のかみ傷が原因と思われる奇病。
罹患した人や、それを治そうとする医師、さらにその病を戦略的に使おうとする人たち。
そして自らの生き残りをかけた行動さえ、人々の思惑に捕われ翻弄される主人公のヴァン。
いったい彼の前にはどんな道があるのか…

物語は、なにもここまで複雑にしなくても、と感じるような多面的な展開である一方、人体はミクロコスモスというテーマを社会にも敷衍する構成とすれば納得も。
医学に関する考え方や、人が生きるという意味を自らに問う登場人物たち。子供向けのファンタジーと侮ってはいけない。

もう一つの読みどころが、ヴァンが助ける幼い「ユナ」と名付けられる少女。
やんちゃで元気なユナが、それはもう可愛すぎ。
戦士じゃなくても、この子を助けるためには何でもしようという気になっちゃうこと必至のお茶目さ。
ラストも爽やかで暖かい。

著者の「精霊の守り人」が、綾瀬はるか主演で2016年にNHK大河ファンタジーとして実写化。 個人的には、女用心棒のバルサは天海祐希が一押しだったのですが。

◆関連記事◆
『鹿の王』上橋菜穂子 著者インタビュー

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獣の奏者 外伝 刹那/上橋菜穂子

◆読んだ本◆
・書名:獣の奏者 外伝 刹那
・著者:上橋菜穂子
・定価:1,500円
・出版社:講談社
・発行日:2010/9/3

◆おすすめ度◆
・エリンとエサルのもの悲しい恋愛小説度:★★★
・正直でためらわない人生度:★★★★
・強く前向きな女性/弱く哀れな男性度:★★★★

◆感想◆
ファンタジー小説の傑作「獣の奏者」の登場人物二人を主人公にした恋愛小説。
エリンとイアルがいかにして結婚するにいたったかという短編「刹那」と、エサルの若き日の恋愛と人生を描いた短編「秘め事」。おまけに微笑ましい掌編「初めての…」の合わせて3編。

登場人物と王獣の関わりを背景として、主人公たちが愛する人とどのように過ごし、どのように人生の物語として捉え、どう生きようとしたかがテーマ。

著者はあとがきで、「自分の人生も半ばを過ぎたな、と感じる世代に向けた物語になったようです」と書いているが、言い方を変えれば「そのときそのときに悔いが残らないように生きろ。大きな決断した時は辛く苦しいかもしれないが、年齢を重ねてから振り返ったとき、それはとても輝いている」みたいなことかと。

エリンもイアルも自分に正直に、そして思うことにためらわない姿勢が眩しい。
人生も半ばを過ぎたなと感じる世代向けというより、やっぱり若い人向けの物語だろう。
おじさんがこうゆう恋愛小説を読むと、なんか綺麗すぎて照れちゃうし、自分が情けなくなる。
あるいはしょうもない男たちに弱さと哀愁を感じる。

獣の奏者 外伝 刹那

上橋 菜穂子 講談社 2010-09-04
売り上げランキング : 39

おすすめ平均 starAve
star1賛否あるでしょうね。
star2自分の人生を生きる
star3"外伝"であるべき物語

by ヨメレバ

「獣の奏者」もファンタージの傑作だけど、「十二国記」も素晴らしい。
毎年夏になると読み返す「十二国記」。今年は「月の影 影の海」と「図南の翼」を再読。
心が折れそうになるのを懸命にこらえ、何が良いことで何が悪いことなのか葛藤し、どんどん成長していく主人公たち。
おれが守ってやるぞ陽子!
家来にしてくれ珠晶!

◆他サイトの感想◆
なまけもののひとりごと


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児童・少女向けファンタジー読み比べ

「獣の奏者」を読んでからというもの、児童・少女向けファンタジーに夢中なんである。
あちこち調べて拾い読みして。
でもなかなか「おじさんが読んでも面白い!」というファンタジーに巡り会わない。
ということで、今まで拾い読みしたファンタジーの読み比べ感想。
おじさんが読んでも面白い順に紹介。



十二国記 小野不由美 ★★★★★

やっぱりなんといっても「十二国記」シリーズは最強。
少女向けという体裁だけど、著者はそんなことにおかまいなく漢字バンバン使って書いているし。
思うに、読んだファンタジーを面白いと感じるかの基本には、その物語世界を受け入れられるかどうかがある。
十二国記は著者が細かい部分まできっちり世界を構築して書いている所が素晴らしく、異世界だけどリアリティがある。
それに、国を治めるこや人間関係に悩む主人公たちが様々な困難を乗り越えて成長していく過程を描いている内容は、分かりやすく普遍的。
テーマはやや重たいが、おじさんが読んでも面白い。というか読まないと損!
新刊はもうでないのだろうか?

十二国記/ウィキペディア

月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
おすすめ平均
stars上巻は読んでいて少し辛い
stars素晴らしい!
stars命を棄てる程の絶望
starsありじごく
stars夢中になった

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獣の奏者 上橋菜穂子 ★★★★★

上橋菜穂子には「守り人」シリーズ(★★★★★ バルサが腕を叩ききるシーンは秀逸!)というファンタージもあって、これもものすごく面白いが、シリーズ全体の完成度は「獣の奏者」の方がわずかに上か?

動物や自然を愛するエリンという少女が主人公。
あるきっかけて獣の王である「王獣」という動物と心を通わせながらも、戦闘用に飼育される王獣を自然に解き放ちたいと願う彼女の心の葛藤を描いた物語。
自然の生き物を戦闘に利用しようとする人間、孤高の獣「王獣」、その狭間で道を開こうとするエリン。
十二国記にように、読者を児童や少女に限定せずに書いている所が、おじさんでも面白い所以か。
「守り人」もそうだが、物語に強い力があるなあ。

獣の奏者/ウィキペディア

獣の奏者〈1〉闘蛇編 (講談社文庫)
獣の奏者〈1〉闘蛇編 (講談社文庫)
おすすめ平均
stars目には映らないものを感じる力
stars「自然」との共生
stars読み出せば止まらなくなる
stars面白い!
stars人が成長する物語

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デルフィニア戦記 茅田砂胡 ★★★★

これは少女向けの異世界ファンタジー。
美男美女が登場して、いかにも少女小説なんだけれど、展開のうまさ、描写のみごとさは素晴らしい。
かわいらしい服がどうしたとか、とんでもなく美しい主人公とか、おしさんには馴染めないところもあるけれど、それを差し引いても一気読み間違いなしの合戦物。
王様には、美しく強い妃がよく似合う。
読後もすかっと爽やかなのがいいぞ。
悩み苦悩する十二国記の主人公もいいが、単純明快・勧善懲悪の本書も素晴らしい。

デルフィニア戦記/ウィキペディア

放浪の戦士 (C・NOVELSファンタジア―デルフィニア戦記)
放浪の戦士 (C・NOVELSファンタジア―デルフィニア戦記)
おすすめ平均
stars一冊目を読むと止まらない。
stars初めての長編ファンタジー小説にどうぞ
stars期待のもてるファンタジー

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銀の海 金の大地 氷室冴子 ★★★

古代の日本を舞台にしたラブストーリー?
不思議な霊力を持ちながらも、疎外される存在である主人公。
人々から受け入れられない主人公の苦悩と、仲間意識と、彼らの持つ霊力が、大きく世界を変えていく・・・?

未完の大作です。おまけに絶版です。
こう言われると読みたくなるのが人の常。
でも「十二国記」と比較すると、物語の厚みというか展開の奥行きというか、物語の世界や登場人物が一回り小さく見えるのは致し方ない。
読む前の期待が大きすぎたかも。
この設定と登場人物では、再刊しようという気骨のある出版社はないだろう。
(最近は古本屋巡りをしなくても、アマゾンで買えちゃうから便利だ)

銀の海 金の大地―古代転生ファンタジー (コバルト文庫)
銀の海 金の大地―古代転生ファンタジー (コバルト文庫)
おすすめ平均
stars早く続きを書いてくれ!!!
starsコバルトにしておくのは勿体ない!
stars壮大な物語の始まり

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西の善き魔女 荻原規子 ★★★

田舎で育ったフィリエルは、伯爵家で開催された舞踏会に参加する。そこで彼女が王家の血をひく姫であることがわかり・・・という「シンデレラ」風のはじまりだが、実は1巻しか読んでいない。
なんかあんまり2巻目を読みたくならないんだな。
展開がオーソドックスすぎる?
ドキドキハラハラしない?
やっぱり少女向けの読み物か。

西の善き魔女/ウィキペディア

西の善き魔女〈1〉セラフィールドの少女 (中公文庫)
西の善き魔女〈1〉セラフィールドの少女 (中公文庫)
おすすめ平均
stars読み進めるのが楽しみな作品
starsずぶとく生きる
stars★★★★
starsちょっと…
starsこれは...少女マンガだ!

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彩雲国物語 雪乃紗衣 ★★★

彩雲国を舞台とした中華風ファンタジー。
名門の家系ながら貧乏暮らしの少女が、王宮に入って王の教育係を仰せつかるという、若さと美青年たちが登場する物語。
じつは本書も1巻しか読んでいない。
「銀の海 金の大地」も「西の善き魔女」も「彩雲国物語」も、どれも同じような感じ。
王とか、虐げられた生活とか、頑張る主人公とか。
どのファンタジーもそれらを題材にしているが、読者層を意識して書いているかどうかが大きな違い。
「銀の海 金の大地」「西の善き魔女」「彩雲国物語」は、おじさんが生まれ変わったら、少女の時に読んでみたいぞ。

彩雲国物語/ウィキペディア

彩雲国物語―はじまりの風は紅く (角川ビーンズ文庫)
彩雲国物語―はじまりの風は紅く (角川ビーンズ文庫)
おすすめ平均
stars設定と文の雰囲気が合っていない……。
stars人気がある作品と…
stars今更ですが
stars「アニメ原作」としての位置づけ
starsキラリと光るものがない――

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レイチェルと滅びの呪文 クリフ・マクニッシュ 

うーん、これは本当の児童向けか。ファンタジーというより童話。
よく最後まで読んだと自分を褒めてあげたいくらい、馴染めない内容。
小学校低学年のお嬢さんに是非!

レイチェルと滅びの呪文
レイチェルと滅びの呪文堀内 亜紀

おすすめ平均
stars面白い。
starsシステムエンジニアが書いたファンタジー
starsもう一つかな・・・
starsあともう少しなんだけど・・・
starsスピード感がある展開

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というこで、おじさんが読んでも面白いファンタジーは「十二国記」「獣の奏者」(「守り人」も)「デルフィニア戦記」。
読んで損なし、読まないと損!!

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獣の奏者/上橋菜穂子

◆読んだ本◆
・書名:獣の奏者 1~4
・著者:上橋菜穂子
・定価:第1巻660円(文庫版) 第2巻730円(文庫版) 第3,4巻 各1,600円
・出版社:講談社
・発行日:第1,2巻 2006/11 第3,4巻 2009/8/10

◆おすすめ度◆
・一気読み間違いなしのスペクタクルファンタジー度:★★★★★
・ある女性と孤高の動物の物語度:★★★★★
・人と人との絆/人と生き物との絆度:★★★★★
・知識とそれを利用する権力度:★★★★★

◆感想◆
リョザ神王国の闘蛇村に住む少女エリン。多くの闘蛇が突然死んだことかの責任を問われ、彼女の母は処刑される。母を助けようとした少女エリンは、難を逃れるが・・・


毎年夏になると何故か読み返す「十二国記」シリーズ。今年は「月の影 影の海」を再読して、「こうゆうメチャ面白いファンタジーを読みたいなぁ」と思っている時に「本の雑誌」に紹介されていた「獣の奏者」。
面白そうだなと思って購入し、読みはじめたら止められない。
メチャメチャ面白いぞ!!

物語は獣たちと心を通じ合わせようとするエリンが主人公。
彼女が様々な経験をして、「闘蛇」「王獣」という戦闘用の猛獣と心を通わせようとするのが第1巻[闘蛇編]、第2巻[王獣編]。
それから10年後、「闘蛇」や「王獣」についての知識が、国の戦力として徴用されそうになり、エリンが悩み苦悩するのが第3巻[探求編]、第4巻[完結編]。

物語には、自然の中で動植物につて様々な知識を得ていくエリンの姿や、彼女の母親との切ない思い出や、王獣という孤高の猛獣の描写や、過去に起きた災いの物語や、エリンと友人,家族との絆や、国を治める王の苦悩する姿とか、ファンタジーならではの出来事が盛りだくさん。
でもその一つ一つがリアルに描かれる。
物語のダイナミックさと、それをリアルに見せる著者の描写力が素晴らしい!

でも何といっても一番なのは、エリンと王獣の関係。
ひと噛みで人間の身体をまっぷたつにする力を持ち、大きな翼で空を翔る王獣。
本来は山奥に棲息し、あたかも獣たちの王様のごとく美しくそして孤高の生き物。
人知を受け付けない王獣と、心を通わせようとするエリンがステキだ。
動物小説が好きな方には、たまらない展開かも。

後半はエリンのもつ王獣に関しての知識が、軍事に徴用されそうになり、といった展開に発展。
獣たちが戦闘に供されることに深く悩むエリン。
人は争いをやめることができない動物なのか、といった反戦的なメッセージを込めながら、怒濤のクライマックスに流れ込んでいく。


第1巻と第2巻は、2006年に刊行されて、実はそこで完結していたんだけど、大人の事情?とかで第3巻と第4巻が刊行。
ま、それだけ面白いってことだ。

児童向けのファンタジーという位置付けだけど、子供だけに読ませるのはもったいない。
あまねくろうにゃくにゃんにょに読んで欲しいし、特に娘であり、子を持つ母である女性にも読んで欲しい小説だっ。


獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)
獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)
おすすめ平均
stars掛け値なしに面白い!
stars王獣編も読んでください
starsなぜこんなにも心が打たれたのだろう
starsはまります
starsとにかく読むこと

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獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)
獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)
おすすめ平均
stars徹底した世界観、すばらしいストーリー構成
stars表現がうまい!
stars読み応えのある1冊
stars時が立つのを忘れる
starsおすすめです!

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獣の奏者 (3)探求編
獣の奏者 (3)探求編
おすすめ平均
stars真実を追い求めるエリン、そして苦悩の選択・・・
stars強引。
stars素晴らしい作品
stars圧倒的な面白さ
stars母エリン

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獣の奏者 (4)完結編
獣の奏者 (4)完結編
おすすめ平均
stars読書のたのしみ
stars和製ファンタジーの底力
starsちょっと
stars結末が左翼っぽくて残念
stars心にどっしりと響く作品です。

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獣の奏者のような寝食を忘れて読みふけってしまう小説に出会うと、読み終えるのがもったいなくなる。 でも今回は大丈夫。
著者の上橋菜穂子には、本書に勝るとも劣らない「守り人シリーズ」があるのだ。
当分楽しめるぞ。
アマゾンで大人買いしちゃったし。


◆他サイトの感想◆
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