解錠師/スティーヴ・ハミルトン
◆読んだ本◆
・書名:解錠師
・著者:スティーヴ・ハミルトン
・出版社:ハヤカワ文庫
・発行日:2012/12/15
(2011/11にハヤカワ・ポケット・ミステリより発行されたものを文庫化)
◆おすすめ度◆
・ミステリー小説度:★★★★
・ミステリーの名を借りた青春小説度:★★★★★
・金庫は女だと思え度:★★★★
◆感想◆
子供のときの不幸な事件により話すことができなくなったマイク。運命のいたずらで解錠師となった彼がたどる道は…
数々の文学賞を受賞し、「このミステリーがすごい!2013年版海外編」
と「2012年週刊文春ミステリーベスト10」
で堂々の1位に輝いた本書、読み始めると止められない面白さ。
服役中の解錠師・マイクが、刑務所の中で過去を振り返るという形式の展開。
解錠師となるまでの、そしてアメリアとの出会いのパートと、解錠師となってからのパートで構成されるんだが、これが絶妙にうまい。
二つの時間軸がしだいに融合するようで、それでいてこれからどうなる?、彼の過去に何があったのか?という興味が読者を飽きさせない。
主人公が一人前の解錠師となるまでの成長?ぶりや、メカニカルでセンシティブな金庫破りの緊迫したシーンも読みどころだが、さらに読者の心をつかむのは、マイクとアメリアの恋の始まりと行方。
これはミステリー小説の名を借りた青春小説ですね。
スポーツものの青春小説だと、自分の能力を磨いたり、仲間や対戦相手との戦いや葛藤の中で成長していく姿を描き、そこに好きな女性が絡むという展開になると思うが、本書はそのスポーツが「解錠」という技能に置き換わったよう。
金庫破りの才能や自己犠牲、青年らしい一途な姿や仲間の裏切り。
うまくいったりいかなかったり、悩んだり行動に出たり。
「解錠師」と「愛するアメリア」の二つをキーにしたマイクの青春物語。
金庫は女だそうです。
主人公のマイクは声が出せないけれど、かわりにというか幸いにもというか絵も天才的に上手で、絵を描いて自分の気持ちを表しアメリアを落としちゃうんである。
おまけに二枚目で鍵開けの才能もあるマイク、ちょっとずるい。
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