だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

ディアスポラ/グレッグ・イーガン

◆読んだ本◆
・書 名:ディアスポラ
・著 者:グレッグ・イーガン
・出版社:早川文庫
・定 価:900円
・発行日:2005/9/30

◆評価◆
・スーパーウルトラハードSF度:★★★★
・超絶的イメージ度:★★★★
・価値観・人間観・人生観・世界観の崩壊度:★★★
・次元を多くすれば、なんでも解決する度:★★★★★
・SFファンはインターネットで「コズチ理論」を検索する度:★★★★★

◆感想◆
2975年。仮想現実世界のポリスで生み出された人工生命ヤチマは、ガンマ線バーストによる被害から肉体人を救おうとする…

仮想現実世界、コズチ理論、地球外生命体と、幾つものSFネタを巧みにあやつり一つの物語にする構成は、「万物理論」では味わえなかった快感。
特に難解な数学・物理学理論で事象を表現し描写するシーンは特筆もの。なにがなんだか良く分からん屁理屈が、ハードSFファンにはたまらん!!

「十次元のファイバー束として宇宙を記述するコズチ理論」

この理解不能な文字列。素晴らしい。

新たなSF的局面を表現するには、こんなに難解な理論を駆使しないとならないのか、という感慨を覚える一方、著者の科学的知識が偏向した物語を書かせているのだろうとも思う。
(同じテーマの物語を、もっと平易に、そしてドラマチックに描き出すことだってできたはずで。主人公の志向が数学に帰着するあたりに、著者の人生感と本書を書くにあたってのスタンスを感じる)

そんなハードSFとしての技工面はずば抜けているが、物語の側面をなす「移入された人格と肉体人の対峙」、「トランスミューターという存在の意義」、「孤児ヤチマが追い求めるものとは?」などのサブテーマは、少々弱腰。
もっとより、菜っ葉な哲学/倫理は読みたくないし、本書の弱腰な体裁で十分だが、文系SFファンには物足りないかも。

物語としては科学にバイアスがかかりすぎで、一般向けにはならない。ま、そこが「万物理論」を受け入れられなかったけど本書は楽しめた理由でもある。

ハードSFとしての醍醐味は、十分味わえる小説。

ディアスポラ/グレッグ・イーガンの表紙
 

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万物理論/グレッグ・イーガン

◆読んだ本◆
・書 名:万物理論
・著 者:グレッグ・イーガン
・出版社:創元SF文庫
・定 価:1,200円
・発行日:2004/10/29

◆評価◆
・バリバリのコアなSF度:
・偏見に満ちたジェンダーからの逃避度:★★
・まぬけな非科学的似非宗教度:

◆感想◆
すべての自然法則を統一する「万物理論」。その完成をめざす物理学者3人が、それぞれの学説をたずさえ、学会に臨む。映像ジャーナリストのアンドルーは、学会の開かれるステートレスへ向かうが…

現実に研究が行われているという「万物原理」(超ひも理論を超える理論?)。
本書では、この原理自身が大きなテーマとなり、さらにジェンダーや非科学的疑似宗教などのサブテーマがちりばめられている。
本の帯には「究極のハードSF」とあるが、読んだ印象はもっとどろどろした人間臭いもの。身体性や宗教といった面からのアプローチが目につく。

しかし、どうも読んでいて馴染めないところが多かった。
「万物原理の完成」という社会現象から派生する似非科学的宗教や、主人公が巻き込まれる特異な集団とのサスペンスタッチの展開が、いまいちしっくりこない。
物語としては、この訳の分からん集団は必須なのだが、展開はSFじゃないよね?
サスペンスタッチの展開の割には、あんまりハラハラドキドキしなかったし。

また妙に「人間くさい」ところも曲者。
本書のSF的な仕掛けに人間臭さは不可欠だけど、表層的な感情(愛や憎しみなど)の描写は、「気合い!」が入っていない。
文章も妙に長いところがあり、主語と目的語を探しているうち、何を記述しているのか分からなくなる。 (自分の読解力が無いだけか)

「しあわせの理由」を読んだ時も、あんまり共感できなかったが、どうも自分とは反りが合わない作家みたいな。
グレッグ・イーガンというSF作家は、世界的に高く認められている作家。
その著書に感銘できないのは、自分のSF的素養が貧弱だからか?

万物理論/グレッグ・イーガンの表紙
 

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