◆読んだ本◆
・書名:
ひまわり事件
・著者:
荻原浩
・定価:1,800円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2009/11/15
◆おすすめ度◆
・ジジババと幼稚園児の交流度:
★★★★
・ジジババと幼稚園児の戦い度:
★★★
・ジジババと幼稚園児の冒険度:
★★★
◆感想◆
隣接する老人ホームと幼稚園。今まで交流か無かった老人たちと幼稚園児が、「お年寄りに明るさと活力を、子供たちにいたわりの心と人生の知恵を」というコンセプトのもと、交流を図ることになるが・・・
ちょっと笑えて泣けて元気になる、著者お得意のほんわか小説。
出来の悪い園児3人組+1のお茶目さがかわいいし、ちょい悪じじいの無鉄砲さもステキだ。
やや長過ぎる感はあるが、はじめはギクシャクしていたジジババと園児たちの関係が、細かな出来事(ひまわりの種を植えたり、一緒に麻雀やチンチロリンをやったり、入院した婆さんを見舞ったり・・・)を積み上げながら深まっていく過程が楽しい。
終盤にはとんでもない"事件"も用意されて、スカッと爽やかで一途なジジババの姿も。
ミステリアスな仕掛けがある訳でもないし、とんでもなく驚いたり感動したりする訳でもないが、軽く読むにはうってつけの中間小説。

アイアンマンブログ
登場する直情タイプの老人を評して「強さは脆さと同義だ。ビルの鉄骨に純鉄などを使おうものなら、たちまち瓦解してしまう」というくだりがある。
老人の一徹な性格と行動を「純鉄」に例えているんだが、これは「鋼」の間違いだ。
文脈からいえば「純鉄」の方が語感もぴったりだし、読み間違うことは無いんだけれど、なぜか気になる我が人生経験、みたいな。
「鋼」はパキンと脆いが、「純鉄」はけっこう柔らかいんである。
柔らかいといっても、お餅みたいに柔らかいわけじゃないけど。
著者も分かってかいているのかもね。
ひまわり事件
◆他サイトの感想◆
10月の蝉
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◆読んだ本◆
・書名:
未踏峰
・著者:
笹本稜平
・定価:1,700円
・出版社:祥伝社
・発行日:2009/11/5
◆おすすめ度◆
・爽やか山岳小説度:
★★★★
・ハンデを背負った若者たちの挑戦度:
★★★
・浮かび上がる雄大で荘厳な風景度:
★★★★
◆感想◆
自らの虚栄心と驕りから、社会から脱落した裕也。アスペルガー症候群という病から、人間関係に苦しむサヤカ。知的障害を抱える慎二。ハンデを背負った3人の若者が引退したトップクライマーと出会うことで、自分たちの居場所を掴みとろうとする山岳青春小説。
登場人物の設定や展開が、やや作り過ぎの感じ。
安易なドラマみたいで、ちょっとねえ、とか思いながら読み進めるが、中盤以降の登攀シーンはさすが笹本稜平。
雄大で荘厳な風景が、目の前に広がる!
一緒に登っているような臨場感もあるし。
3人の若者のチームワークもステキに青春している。
ミステリーや冒険小説な味付けなしで、ただひたすら爽やかな山岳小説。
山に登りたくなること間違いなしだ。

カンティ・ヒマール南面/Twujiche
「未踏峰」は本当にストレートな小説で、ミステリーな場面はないんである。
ひねくれた読者(俺のことだ)は、裕也たちが登攀の途中で出会う外国人クライマーに、不穏な状景を想像したりするが、そんな予想をあっさり裏切ってスカッと爽やかヒマラヤ登山なんである。
それはそれでいいけど、ちょっと物足りない気もする。
未踏峰
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◆読んだ本◆
・書名:
化身
・著者:
宮ノ川顕
・定価:1,500円
・出版社:角川書店
・発行日:2009/10/31
◆おすすめ度◆
・ホラー短編集度:
★★★
・表題作「化身」が秀逸度:
★★★★
・そこはかとない恐怖/忍び寄る恐れ度:
★★★
◆感想◆
休暇をとって南の国で過ごそうとして男は、軽い気持ちで入った密林にあった池に落ちてしまう。周囲を滑らかな壁に囲まれた「壷」のような池は、とうてい脱出できそうになかった・・・
表題作「化身」は密林の中の池に落ちた男の物語。
これはなかなか良くできているホラーだ。
池の中央にある三畳ほどの浮き島がかろうじて男の安らぎの場所となるが、ツルツルの壁に囲まれた池からは逃げられない。
男の運命はどうなるっ! という展開だ。
小川一水の「
漂った男」(これは面白かった!)を思い出す設定で、孤独な環境の中で一種哲学的な思索をしながらも、どこか楽天的な男の思考が面白い。
舞台設定の妙と、予断を許さない展開がうまい!
この「化身」以外に「雷魚」「幸せという名のインコ」の二編があるが、これもそこはかとなく恐くなる小説。
飛び抜けてスゴい訳じゃないが、新人らしからぬできばえ。
都会のギスギスした人間関係に中にいると、「化身」に登場する男のようにどっかで一人のんびりしたいと思うかもしれないが、本当に一人になっちゃうと困ってしまう。
池のかなで悪戦苦闘する男はなんとか生きようと、脱出しようとするけど、池から脱出したらしたでまたギスギスした人間関係の中に戻ることになる。
いったいどうすればいいんだ? みたいな。
「池の中で一人」という設定は、狂気に大接近だけど、「化身」の印象は以外と明るい。
著者の人となりが現れているのか。
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◆読んだ本◆
・書名:
神々の午睡
・著者:
あさのあつこ
・定価:1,400円
・出版社:学研パブリッシング
・発行日:2009/10/13
◆おすすめ度◆
・ファンタジー短編集度:
★★★
・あるいは童話度:
★★★
・それともお伽噺度:
★★★
◆感想◆
神と人間と箜(くう 神と人間の中間的存在)がおりなす、ギリシャ神話みたいな感じのファンタジー短編集。
あさのあつこのファンタジー小説ということで、ちょっと期待したんだけど、
読者対象が清らかな少女たちのようで、おじさんが読むにはパンチが足りない。
その辺をよく見極めてから読めってことだ。
何でもかんでも読めばいいってものじゃないんだなあ。
たいていの男性はスカートはいて喜んだりしないし、多くの女性は格闘技にのめり込んだりしない。(例外はあるけど)
ま、そうゆうことだ。
それでも寓話として読めるあたり、著者が手を抜いていないということかも。
「神々の午睡」に登場する神々は、非常に人間的。
嫉妬もすれば間違いも犯す。
極めて日本的な神様?
神よりも何よりも、自分の価値観を大切にしなさいという著者のメッセージ?
◆他サイトの感想など◆
あさのあつこさんインタビュー/kurasse
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◆読んだ本◆
・書名:
無理
・著者:
奥田英朗
・定価:1,900円
・出版社:文芸春秋
・発行日:2009/9/30
◆おすすめ度◆
・転がり落ちるような暮らし度:
★★★★
・安い登場人物のチープな人生度:
★★★★
・感情移入すると、なおさら悲惨度:
★★★★
◆感想◆
地方都市「ゆめの」に暮らすケースワーカー、高校生、セールスマン、保安員、そして市議会議員。なんとか暮らしを善くしようとあがいているのに、何故か悪い方へ悪い方へと転がって・・・
「最悪」「邪魔」に続く、転がり落ちる暮らしシリーズ第3弾。
登場人物はどこにでもいそうだけれど、ちょっと安っぽい人々。
ちゃんとしているようで、どこか抜けている。
戸梶圭太なら、激安人間におとしめてボコボコにするような奴らばかりだ。
彼らがドンドンマイナス方向に転がって行く。
スカッとしないし、どんでん返しもないし、幸せなシーンもない。
おお、なんかとてつもなく暗いぞ。
それでも読んじゃうのは、現実にありそうなシチュエーションと、どんな風に転がり落ちていくのかへの興味。
最後は「人生にはいいことなんてないんだ」と登場人物が悟ってしまうような展開だ。
でも女子高生がポカポカ殴るのはいいぞ。
もっとやっちゃえっ!
(このシーンくらいしか、スカッとするところがないんだよね)
真保裕一と東野圭吾は、なんか似ている。
同じように荻原浩と奥田英朗もたまに間違う。
深い意味はないんだけど。
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