だな通信 ミステリー文庫

国内の新刊ミステリー小説を中心とした独断的読書感想。 「面白い本なら何でもOK」というのが信条。 趣味の合う方には参考になるかも。合わない方は評価を反対に見てね。

これから読む予定の新刊本

これから読む予定の新刊本はこれ! 早く来い来い発売日。

2014/7/31
魔法使いと刑事たちの夏 /東川篤哉

2014/8/8
明日の子供たち /有川浩

2014/8/19
プロジェクトぴあの/山本弘
 地球移動作戦の前日談だそうです。

2014/8/20
荒神 /宮部みゆき

2014/8/21
マスカレード・イブ/東野圭吾
 新シリーズ第2弾。文庫版で登場です。

2014/9/25
鹿の王 上 生き残った者/上橋菜穂子
鹿の王 下 還って行く者/上橋菜穂子
 「守り人」シリーズや「獣の奏者」シリーズがめちゃ面白い上橋菜穂子の長編。期待できます。

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二千七百の夏と冬/荻原浩

◆読んだ本◆
・書名:二千七百の夏と冬
・著者:荻原浩
・定価:上1,300円 下1,300円
・出版社:双葉社
・発行日:2014/6/22

◆おすすめ度◆
・二千七百の時を超えても変わらぬ人間の営み度:★★★★
・猛々しく雄々しい/甘く切ない度:★★★★★
・まるで見てきたかのような描写度:★★★★★

◆感想◆
ダム建設工事の途中に発見された人骨は、縄文人男性と弥生人女性のものと推定された。大きな損傷もなく発見された二体は、何故か互いの手をしっかりと握りしめるように絡み合っていた…

縄文時代の終わりの頃を舞台に、一人の青年を主人公にして描かれる、愛と勇気と成長の物語。
これがとてつもなく切ないラストの物語になっている。

当時の様々な風習や文化。まるで当時の暮らしぶりを見てきたかのようなリアルな描写がすばらしい。
著者の持ち味であるコミカルな描写は、物語に温かい雰囲気をかもし出しているし、手斧や弓を使った狩りのシーンは冒険小説さながらの手に汗握る迫力。

しかしなんといってもこの物語の魅力は、互いの手をしっかりと握りしめるように絡み合っていた縄文人男性と弥生人女性のドラマ。

発見された人骨の描写から、二人の若い男女が迎えた最期は想像できるものの、そこにたどり着くまでの物語が猛々しく雄々しく、そしてとても甘く切ない。
若い二人の最期が、こんな不条理で儚いものだなんて…

それとない文明批評もくわえながら、人間なんて縄文時代から何も進歩していないんじゃないか、と思わせる一気読みの物語だ。

顔より大きくなる葉を、糞をした後の尻拭きに使っていたことから名付けられた「クソフキ」。短く縮めて「フキ」とも言う。

本当?!
フキを食べるたびに思い出しそうな語源だ。

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虚ろな十字架/東野圭吾

◆読んだ本◆
・書名:虚ろな十字架
・著者:東野圭吾
・定価:1,500円
・出版社:光文社
・発行日:2014/5/25

◆おすすめ度◆
・ミステリー小説度:★★★★
・飽きさせない展開と描写度:★★★★
・死刑制度の是非/償うとはどうゆうことなのか度:★★★★

◆感想◆
11年前に最愛の娘を事件で亡くした主人公の中原は、そのことが原因で妻とも別れ、ペットの葬儀会社に勤めていた。そんなある日、覚えのある捜査1課の刑事から、別れた妻が亡くなったという連絡がくるが…

子供を殺害されるという痛ましい事件。子供の親達の犯人に対しての感情や裁判における死刑の是非などを題材に、過去から現在へ、そして人から人へとつながる不幸と悔悛の連鎖が描かれる。

人殺しには死刑を求める親達の感情を全面に出しながらも含みを持たせる展開や、一見関わりのない事件や人物が次第につながっていく様子は、さすが東野圭吾、読者を飽きさせません。

死刑制度の是非は難しい問題。
犯人に死刑を求める気持ちは理解できるけど、それが生きる目標になってしまうもの悲しすぎるし、かといって怒りの感情をぶつける先を持たないでいるのも不安定だし。
無限に繰り返される仇討ちや報復し合う戦争のように空しく空虚。
起きないようにするのが一番だけど、起きてしまったものはどこかで食い止めなければならない。
それには現在の制度では虚ろなのだろう。
ただ虚ろだからこそのラストでもあるなあ。

◆関連記事◆
東野圭吾『虚ろな十字架』/horizont: 世界の色は、光で変わる。
虚ろな十字架 東野圭吾/季節はずれの読書感想文

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いい感じの石ころを拾いに/宮田珠己

◆読んだ本◆
・書名:いい感じの石ころを拾いに
・著者:宮田珠己
・定価:1,600円
・出版社:河出書房新社
・発行日:2014/5/30

◆おすすめ度◆
・石拾いエッセイ度:★★★
・読んだ後は近所に石を拾いにいきたくなる度:★★★★
・無駄なことこそが人生度:★★★

◆感想◆
石マニアにもジャンルがあって、宝石や化石、隕石や鉱物からはじまり、浮かび上がった模様がとても自然にできたとは思えない風景石や、最後には黒い丸石に行き着くという水石など、それはもう奥が深いマニアックな世界なのだそう。
そんな中で著者は、高価な訳でもなければ取り立てて珍しい訳でもなく、ただ「いい感じの石」を求めて全国の石拾いスポットに赴く。

さすが宮田珠己。
人が見向きもしないジャンルの趣味に、あえてトライしているような、一見超無駄な趣味が著者ならではで「いい感じ」。

いい感じの石の写真も多数掲載されていて面白いし、石マニアの人たちへのインタヴューもあったりして、本書を読んだ後は近所に石を拾いにいきたくなること間違いなし。
石マニアになる確率52%の石拾いエッセイ。

確かに瑪瑙の摩訶不思議な文様を眺めていると、宇宙を感じることもあるなあ。

◆関連記事◆
いい感じの石ころを拾いに 宮田珠己/Kawade Web Magazine
いい感じの石ころを拾いに/翌の読書手帖
メノウ/ウィキペディア (なんかスゲエ)
水石/ウィキペディア (むむむ)

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僕の光輝く世界/山本弘

◆読んだ本◆
・書名:僕の光輝く世界
・著者:山本弘
・定価:1,500円
・出版社:講談社
・発行日:2014/4/8

◆おすすめ度◆
・少年向けミステリー小説度:★★
・アントン症候群にも俄然興味がわく度:★★★
・ちょっとメタっぽい度:★★★

◆感想◆
いじめが原因で脳に重大な障害を負った少年・光輝。目が見えないのに、視覚があるように感じるというアントン症候群となってしまったのだ。そんな彼が見えない世界を観ることで、身の回りに起きた事件を解き明かしていく…

ちょっとオタクで明るい光輝と、美少女キャラだと思ったらひねくれ女子だった夕の二人が主役。
アントン症候群というとっても不思議な症状を呈する障害をベースに、それを逆手にとって事件を解決するというミステリー小説だ。

障害があるとはいえ、またひねくれてるとはいえ、主役たちの明るさや爽やかさが横溢している展開。
ちょっとメタっぽい現実の厳しさを織り込んだような描写や、「と学会」なネタもあったりする、ユニークな少年向けのミステリー小説になっている。

そんな小説の面白さもさることながら、俄然興味がわくのが「アントン症候群」。
失明しているのに患者がまるで見えているかのように振る舞うので、盲目になっているにの気付くのに数日かかった、なんていうにわかには信じがたいこの障害。
人間て不思議だ。

自分が未来の宇宙のヒーローだと思いこんでいるカーク・アレン(仮名)という物理学者のエピソードもびっくり。
その思い込みの世界を真実だと信じ、架空世界の地図や歴史や体験したことなどを膨大な手記として残していたという。
人間て不思議だ。

詳細は宇宙を駆ける男―精神分析医のドキュメント (絶版です)

◆関連記事◆
「僕の光輝く世界」、これを読みたかったんだ!/怪しい日記・新型
『僕の光輝く世界』/山本弘のSF秘密基地BLOG

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ゴースト≠ノイズ(リダクション) /十市社

◆読んだ本◆
・書名:ゴースト≠ノイズ(リダクション)
・著者:十市社
・定価:1,700円
・出版社:東京創元社
・発行日:2014/1/30

◆おすすめ度◆
・ミステリーのようなホラーのような青春小説のような度:★★★
・いじめテーマの学園もの度:★★
・おおっ! おお? おぅぅ度:★★

◆感想◆
ちょっとした出来事をきっかけに、クラスの中で孤立するようになった高校一年生の一居士。クラスメイトから無視され“幽霊”のような存在の彼に、一人の女子高生が近づいてくるが…

中盤までは「いじめ」がテーマの学園小説みたいで、気分が暗くなること必至。
中盤からミステリー小説っぽい展開がでてきて「おおっ!」っとなるものの、盛り上がりに欠けるまま「おお?」な展開に。

いじめや友情をテーマにした学園小説に徹した方が、読んだ後も爽やかだったような気がする小説でした。

主人公の一居士と、クラスメイトの女子高生の会話は、お互いの心のうちを探り合うようで、心理描写がうまいとも言えるけど、なんだかまどろっこしいとも言えて微妙。
もっとスカッと、バーンといきたいものです。

本書は本の雑誌で「本年度のベスト級作品と断言してもいい傑作だ」と紹介されていて、「そんじゃ」と購入。
ちょっと期待が膨らみ過ぎたか。
湊かなえのファン向きかもしれません。

◆関連記事◆
「セルフパブリッシングで注目の、あの作家に聞く」 『ゴースト≠ノイズ(リダクション) 』十市 社さん/DOTPLACE
今年読んだ100冊の中で一番面白かった本は ゴーストノイズリダクションでした。/ふりむけばコウホウ

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ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た/沢村凛

◆読んだ本◆
・書名:ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た
・著者:沢村凛
・定価:1,400円
・出版社:角川書店
・発行日:2014/1/30

◆おすすめ度◆
・少年少女向けの心暖まるファンタジー小説度:★★★
・自分探しの旅/仲間との固い結束度:★★
・予想不能の結末度:★★★

◆感想◆
悩みも不安もない穏やかな〈眠りの町〉。そこで一人の奇妙な男に出会った「ぼく」は、その男につれられるようにして旅に出るが…

なんだかフワフワとした心地よい夢の国にいるような「ぼく」が、仲間を捜しながら自分探しの旅をするというロードノベル風のファンタジックな冒険小説。

多感な小学生が読めば清く正しい大人になりそうな正統派ファンタジーでありながら、おじさんが読んでも「いったい結末はどうなるんだ?」という興味がラストまで持続するあっぱれな展開。
とっても心暖まる結末も、学校で嫌なことがあって凹んでる小学生にぴったりです。

うつらうつらとしている〈眠りの町〉、とっても魅力的です。
そこから自分探しの旅に出るより、自分がないままへらへらと過ごしたいと思うのは人生に疲れている証拠でしょうか。

同時に出版された「通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする」は、ファンタスティックなSF。こっちは小学女子向け?なストーリーでしたが、骨太なファンタジー小説を手がける著者らしく、特異な物語世界を築いてます。

◆関連記事◆
『ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た』『通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする』著者 沢村凛さん bestseller's interview 第54回/新刊JP

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機龍警察 未亡旅団/月村了衛

◆読んだ本◆
・書名:機龍警察 未亡旅団
・著者:月村了衛
・定価:1,900円
・出版社:早川書房
・発行日:2014/1/25

◆おすすめ度◆
・近未来警察小説度:★★★★★
・スリルとアクションと謀略とテロ度:★★★★★
・過去を背負った登場人物たちの生き様度:★★★★★
・眠気を吹っ飛ばす面白さ/完結まで死ねない度:★★★★★

◆感想◆
チェチェン紛争で家族を失った女性だけで組織された「黒い未亡人」。日本に潜入した彼女たちがテロを計画しているという情報が…

チェチェン紛争の実態と、その犠牲者である「黒い未亡人」たちの生い立ち。
「龍機兵」とテロリストたちとの手に汗握るアクションシーン。
警察内に根を張る組織の確執と、しだいに明らかになる「敵」の存在。
そして、登場人物一人ひとりの過去と現在が、複雑な網の目のようにからまり物語が展開する。

読み始めたら止まりません。眠気も吹っ飛ぶ面白さ。
チェチェン紛争に巻き込まれた人々の苦しみに胸が締め付けられ、むごいテロの情景に背筋が寒くなり、最新の近接戦闘兵器・龍機兵に搭乗した気分で手足を振り回したくなり、思わず涙と鼻水もこぼれそうになるという、読者の身体にもダメージを与えかねない精緻さと迫力。

警察小説やアクション小説、SF小説としても面白さも抜群ですが、読者を魅了するのは自らの信じることを貫こうとする登場人物たちの「魂」。
そしてそのぶつかり合い。

このシリーズ、巻を追うごとにスケールアップし、人物に厚みが出てきて、面白さに拍車がかかってます。
シリーズが完結するのを見届けるまでは死ねませんっ。

2ページに渡る登場人物一覧表。
普通は読んでる途中で見返して確認したりするんですが、本書ではそんな必要がないくらい人物が生きてます。
新しい缶コーヒーが出たら姿警部に教えたくなるくらい、缶入りおしるこを馬面の曽我部警視に差し入れしてもいいかなと思うくらいに人物描写がすぐれていて印象に残ります。

◆関連記事◆
『機龍警察 未亡旅団』(月村了衛)/馬場秀和ブログ
機龍警察 暗黒市場/月村了衛/サイト内
機龍警察 自爆条項/月村了衛/サイト内

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